前回は鏑木清方「新春の風情と羽子板展」を取り上げました。その時に着たものをご紹介しながら、きものと帯の組み合わせについて考えます。
1.羽子板の帯留を主役に……
きものは玉ねぎ染めの無地の紬です。
帯は緑色の綴れ織(つづれおり)*です。無地ですが、ぼかしのように色が混ざり合っています。(かすみ織というようです)
*綴れ織…横糸だけで文様を表現する伝統的な織り方。
爪掻本綴織(つめかきほんつづれおり)の場合は、手の爪をのこぎりの歯状に刻んで糸を織り込んでゆく大変な作業で、1日数センチしか織れない模様もあるそうです。
赤い椿の花が描かれた羽子板を緑色が引き立ててくれました。
帯揚げは白に朱の絞り。羽子板と共に新春らしさを演出します。帯締めの紐は目立たない色にしました。
このように帯留を主役にするように取り合わせてみたのですが、無地のきものに無地の帯はあまり見かけないコーディネートであり、私にとっても初めてのことでした。
2.きものと帯、組合せに決まりごとはある?
きものと帯の取り合わせに関して次のように言われることがあります。
①無地には柄ものを
②染めのきものには織りの帯を
③織りのきものには染めの帯を
という3つです。
具体例をあげてみます。
①無地には柄ものを合わせる
これは当たり前のことでしょう。
きものと帯両方が無地だと地味でメリハリがないので、誰でもどちらか一方は柄ものを選びますね。
aきものが無地の場合
一つ紋無地(地紋あり)のきものに唐織の帯
絽の一つ紋無地に紗の袋帯(2014年8月26日の記事)
紬の無地に織の名古屋帯(2015年3月29日の記事)
b帯が無地の場合
木綿単衣のきものに紗の無地の帯(2015年8月15日の記事)
型絵染め紬単衣のきものに麻の無地の帯(2015年7月4日の記事)
②染めのきものには織の帯を合わせる
これは見た目のバランスだけでなく、「格」の問題でもあるようです。きものは織りより染めの方が格が高いのですが、帯は反対に織りのほうが高くなります。ですから、「染め」のきものには「織り」の帯を合わせると上手くまとまる、ということです。
石摺り(いしずり)染め*の単衣のきものに博多織の帯
*石摺り…染めた布地を石の石肌にあてて叩きながら摺ったように文様を染めたもの。
絽の付け下げに紗の袋帯(2015年7月25日の記事)
小紋に明綴れ(みんつづれ)*の帯
*明綴れ…本綴れより細い縦糸を使った柔らかく軽い綴れ織り
③織のきものには染めの帯を合わせる
これは②と反対で、普段着的なきものである紬には同じくカジュアルな「染め」の帯がちょうど良い、という意味合いでしょう。
黄八丈のきものに辻ヶ花染めの帯
結城紬のきものに塩瀬羽二重の帯(2015年4月11日の記事)
色大島紬に塩瀬羽二重の帯
以上のように①~③の法則?の具体例をあげてみましたが、これらはあくまでも「参考にすれば上手くまとまる」という程度のことであり、決まりごとではありません。ですから私はあまりこだわらないようにしています。
結婚式などの式典や御茶会など、周りと合わせたり相手に失礼がないように気を使う場面をのぞけば、着物と帯の組み合わせは、色柄や雰囲気が調和しているかどうかを基準にし、あとは自由に楽しめば良いと考えています。
3.無地同士のコーディネートをしてみて気付いたこと
①小物を目立たせたい時に効果的
すべて無地のキャンバスのようになるので帯留や帯飾り、帯締めや帯揚げが際立ちます。
②長襦袢は色物や柄物が合う
薄いオレンジ系の菊唐草(きくからくさ)模様の地紋に白の雲取り模様がある長襦袢を着ました。
無地のきものをお洒落着として着用する時は、色や柄付きの長襦袢を合わせると柔らかい雰囲気になります。
③半襟、髪飾り、バッグなどが楽しめる。
いつもは凝りすぎるとくどい感じになる半襟や髪飾りも、この時は大丈夫です。
薄いグリーンの刺繍半襟です。
小さな翡翠と鼈甲のかんざしを2本合わせて挿しています。
バッグも柄ものを楽しめます。
お気に入りの帯地のミニバッグですが…斜めになってしまいました(^^;)
④羽織を楽しめる
今回は着ませんでしたが、無地のきものと羽織の相性はぴったりです。季節に合わせた羽織が楽しめそうです。
今まで同じ日に出番がなかった着物と帯…それらを出会わせてみるのは結構面白いことだとわかりました。