今日は帯を結ばずに固定してくれる「帯止め金具」をご紹介します。
私は最近その存在を知ったのですが、実は昭和時代から使われているポピュラーな小物のようです。
1.帯止め金具とは
①定番の着付け小物
株式会社あづま姿の定番商品で、色や種類も複数あります。
私はNO.65の止め金具にしました。
うすいピンク色の無地です。上部は枕受けになっています。
写真の右側の足を帯に差し込むようです。
②使い方の説明
「胴に帯を2回巻いた後、通常は、タレ側と結んだり、ねじったりして帯を胴に固定させる代わりに使用する商品です。」と書かれていました。
普通の着付けの場合の、この部分に当たります。
↓
2回巻いたたれを結ばずに斜めに折り上げて仮紐で押さえているところ
(「美しい着つけと帯結び」主婦の友デラックスシリーズ 昭和54年より)
説明書の白黒写真を見ると、帯を斜めに折り上げることはせずに、そのまま止め金具で挟むようです。
2.トルソーで試す
まずはトルソーで試してみました。
①帯を巻く
帯を胴に2回巻きました。緩まないように帯の下側を持って締めます。
手先を左に流して、中央に差し込むスペースを作っておきます。
②止め金具を差し込む
たれは引っ張ったまま止め金具を差し込みます。
このようにまっすぐ差しました。
③スナップをとめる
上側の金具の先を背中側の金具の中に…
差し入れて
スナップを留めます。
横から見たところ
④帯枕を乗せる
帯止め金具に近いタレ部分をなるべくきれいに広げます。
帯揚げを掛けた帯枕を、お太鼓部分の内側に当て
枕受けにのせます。
中はこのような状態です。
下から写しました。枕受けがしっかり支えています。
⑤お太鼓を作る
お太鼓を作る(折る)ときは、止金具の下辺りで帯を折り返します。
お太鼓の中に手先を通します。
手先の余りは……
たたむように中に収めます。
⑥出来上がり
帯締めを結んで、お太鼓が完成しました。
帯枕が高い位置に固定されるので、かっちりとした大きめのお太鼓になりました。
若い人向けのお太鼓かもしれません。
3.実際に使ってみた
自分で使うときはどうしたら良いのでしょうか?
挑戦してみました。
①後ろで差すor前で差す?
上から背中にさす
はじめは「孫の手」を使うように手を伸ばし、上から背中の帯をめがけて差し込んでみました。
体を後ろに反らせ、背骨のあたりをくぼませて隙間を作るイメージでやると、どうにか入れられました。
背中の下から手を持っていく
次に背中の下から左手をあげていき、差し込んでみました。
差込み口を探るのが少し大変でしたが、入れることができました。
袖口から腕がむき出しにならないので、こちらのほうが動作としては自然です。
前でさす
上の2通りのやり方は、着付けの姿としてはあまり美しくない気がしたので、次は前で差してから回してみました。
前帯のやや右よりの場所に差し込んで、帯止め金具をゆっくり後ろに回しました。(このとき、帯が緩まないように片手でタレを引っ張っています)
着物の脇を通るときは少し注意が必要でしたが、
すぐに背中心まで回すことができました。
もう一度帯をキュッと締めてから、スナップを留めました。
あとはいつも通りお太鼓を作りました。塩瀬羽二重の帯はなめらかなので金具も回しやすかったようです。
②他のやり方は?
帯を前で巻いて差してから、「帯ごと」後ろに回す
前結びに慣れていれば、帯を自分の前でキュッと巻いてから帯止め金具を差し込むこともできそうです。
スナップを留めたら帯ごと後ろに回して、あとは後ろでお太鼓を作ります。
でも、私は前で締めることに慣れていないので(前柄の調節が難しそうで)やりませんでした。
③使ってみた感想
- 帯止め金具は人に着せてあげるときには簡単で使いやすいです。
- 自分で着るときは後ろでさすのが手っ取り早いですが、少し練習が必要かもしれません。
- 前でさして後ろに回すほうが楽でしたが、どんな帯でもできるかは不明です。
- 固いので使用感が心配でしたが、装着後は背中に当たることはなく、違和感はありませんでした。
- 重い帯やすべりやすい帯を着用するときは便利だと思いました。
- 帯枕の紐をきつく締めなくてもお太鼓が落ちてこない点が良いと思います。
いつもよりお太鼓がかっちりして安定しているように感じました。
「帯止め金具はきもの初心者でも簡単にお太鼓を安定させられるのでは?」と思ったので、色々な帯で試してみました。
――ところがその後、思いがけない事態が発生しました。
長くなりましたので、続きは次回に……。