前回の記事のディナーショーで着用した付下げは、メルカリで初めて購入したものでした。
今日は勇気を出して買ったメルカリの着物と、それに合わせた大柄の唐織の帯をご紹介します。
1.初めてメルカリで着物を購入
前回の記事の着物はこちらです。
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①購入理由
メルカリでは過去に帯を購入したことはありますが、着物は初めてでした。
寸法、生地の質感、状態などを写真と説明だけで判断するのが難しそうだったので着物の購入は控えていたからです。
けれども今回は次の理由で買う決意をしました。
- 私が好きな「竹屋町(たけやまち)刺繍」を検索していたら目に止まり、とても気になった
- 新古品(一度出荷されているものの未使用の商品)とのことなので状態は良いらしい
- 出品者は着物や帯を専門に扱っている人らしい
- マイサイズより少し大きかったが、娘と嫁にちょうど合うサイズなので、後々役立ちそうだと思った。
- 価格が安かった(15,800円)
②届いたときの感想
「写真のイメージと違って気に入らないものが届いたらどうしよう…」とドキドキでしたが、購入4日後に商品が到着しました。
着物を確認して思ったことは……
- 状態はきれいで、しつけが付いていた(臭いもなし)
- 色は画像通りで、生地は予想よりずっしりと重く上質に感じた
- 承知の上だが、やはり私にはサイズが大きいと思った
(サイトには「156.5~166.5㎝くらいの方がご着用頂けます」と明記されていたが、私は154.5cm) - 画像ではわからなかった地紋があり、気に入った
珠光緞子(じゅこうどんす)という名物裂(めいぶつぎれ)の意匠からできた地紋だと思います。
珠光緞子は茶の湯の祖、村田珠光が愛用したといわれる織物です。
③着用した感想
- 身幅や丈がいつもより大きいので着付けに時間がかかった
- 雨コート(当日は雨でした)の裄丈と合わず、少し袖口が出てしまった。
- メルカリの安価な着物ということで、大切にしているほかの着物より気楽に着られた気がする
身幅が広いので下前は折り返して着付けています。
2.竹屋町刺繍の付下げ
①竹屋町刺繍とは
竹屋町刺繍は竹屋町縫いとも言われます。
京都の竹屋町通りで生まれたのでこの名前があるそうです。
紗の生地に平金糸(ひらきんし)や色糸で刺繍を施したもので、帛紗(ふくさ)、仕覆(しふく)、掛け軸の表装などに使われます。
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△帛紗(ふくさ)
(いずれも鈴木時代裂研究所・鈴木一弘氏の作品)(『MITSUKOSHIお帳場通信・2016秋』より)
また、室町時代の能装束でも竹屋町刺繍が使われているものが現存しています。
この装束を含め、竹屋町刺繍についてはこちらで取り上げています。
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②付下げの竹屋町刺繍を見てみる
この着物の竹屋町刺繍は近くで見ないとわからないと思うので、拡大写真でご紹介します。
葡萄の葉のみが竹屋町刺繍です。
ずっしりと重そうな赤い葡萄の実と、薄い葉のコントラストが、異なる刺繍の技法で上手く表現されています。
身頃のサイズが大きいこともあり、胸の刺繍は手を下ろすと少し隠れてしまいます。
後ろの裾の刺繍です。
竹屋町刺繍は横方向のみに糸が渡っているのでシンプルに見えますが、高い刺繍の技術が必要とされます。
また、太い巾の平金糸を使っているので、小さい刺繍でも独特の存在感と光沢感があるようです。
この付下げはデザインがおとなしく柄も小さいので、帯は大きな花の意匠の唐織りの袋帯を選びました。
3.誉田屋源兵衛(こんだやげんべい)の唐織帯
①誉田屋源兵衛とは
誉田屋源兵衛は1738年(元文年間)創業の京都室町にある帯の製造販売の老舗です。
10代目当主である山口源兵衛氏は、素材と意匠にこだわり、独特の感性で工芸品のような帯を制作しています。
②空想の花
この帯は徳川家康の孫の千姫の嫁入り衣裳をもとに制作されたそうです。
大輪の花は紫陽花ですが、葉は菊、そして茎は枝分かれするのが特徴である牡丹の茎です。想像上の花、幻の花ということで、春でも秋でも季節は問わず着用できます。
柄が大きく赤系の色が強い帯なので、3~40代の頃に着用していました。
今回は洋装の人がほとんどのパーティーなので、若い頃の華やかな帯を久しぶりに(虫干しを兼ねて)着用することにしました。
帯揚げと帯締めは以前と違い全体に馴染むような薄い色を選びました。
ラッキーなことにメルカリで良い買い物ができ、パーティーも楽しく過ごすことができました。
③絽刺し刺繍と竹屋町刺繍はタテ・ヨコの違い?
これもまた若い頃のものですが、当日は絽刺しのクラッチバッグを持ちました。
絽刺しは絽の生地を使います。布のたてのラインに沿って絹の強撚糸を巻くように刺すのが特徴です。
一方、本来の竹屋町刺繍は紗の生地を使います。平金糸(または色糸)を用いて布のよこ糸に沿ってたて糸をすくいながら文様を作っていきます。
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△絽刺し刺繍(2019年 江戸川区伝統工芸展「刺繍と人形」の展示パネルより)
日本の伝統的な刺繍技法である絽刺しと竹屋町。糸の運び方がタテとヨコで異なることや、平糸と撚り糸という使う糸が違うことで文様や仕上がりの風合いが全く違うものになることが興味深いです。
