9月上旬、五十回忌法要に列席しました。
限られた身内だけが平服で参加する法事でしたので紋付き色無地ではないきものを選びました。
五十回忌法要にふさわしい着物かどうかはわかりませんが、ご紹介します。
1.五十回忌の意味と服装
①五十回忌とは
故人の没後、四十九年後に行う法要を「五十回忌」といいます。
没後50年経つと極楽浄土へ行ける、という考え方があるようで、特別な回忌のようです。これが済むと、特別な場合をのぞき法要は行われなくなります。
確かに50年という歳月は重みがあります。
②一般的な服装
五十回忌の参列者は洋服の場合、略喪服(フォーマル以外の黒や紺、グレーのワンピースやスーツ)が一般的だと思います。
着物の場合も地味なものが基本ですが、五十回忌ともなると近しい身内だけで行なったりすることも多いので、私は必ずしも無地でなくても良いと思いました。
③お祝いごと?
地方によっては五十回忌は、お祝いごととする場合があるようです。
付下げ、留袖、振り袖といったおめでたい席用の装いで行うと聞いたことがあります。50年というのは、家が子から孫の世代へと移るくらいの年月なので、家がそれだけ長く続いていることに対してのお祝いなのかもしれません。
私は実際見たことがないので、どんなふうに行うのか興味があります。
2.9月はじめの五十回忌の装い
①紋紗(もんしゃ)のジョーゼットのきもの
ジョーゼット生地*の単衣のきものです。
生地は伸縮性があり薄くて涼しいので、5~9月、真夏でも着られる素材です。
*ジョーゼットのきもの…昭和初期に流行した薄い平織りのきもの。ごく細い強撚糸を使っているので細かいシボがあります。(薄い縮緬の風合いです)
紋紗(もんしゃ)*の一種、透紋紗(すきもんしゃ)と思われます。表の模様とは関係なく、ところどころに紗組織で柄が織り出されています。
*紋紗…紗地に文様を織り出したもの。
平織り地に紗組織で文様を表したものを「透(すき)紋紗」、紗組織の中に平織りで文様を表したものを「顕(けん)紋紗」というそうです。
今までこの着物は街着として、コンサートや芝居見物に着ていました。
法事が9月2日で気温が高いことを予想して、涼しくて着心地の良いこの着物を着用することにしました。
出席者は身内の数人のみ。気楽な服装で集まろう、と打ち合わせ済みです。
②着てみる
黒の帯によって、着物の刷毛目(はけめ)模様の黒が強調されているようです。
夏用の喪の帯です。
グレーのシフォンストールを帯揚げにして、帯締めは紫にしました。
50年というおめでたい気持ちを柄のピンク色で表しているつもりです。
この日の東京の最高気温は34.9度でしたが、無事に五十回忌法要を終えることができました。
亡くなって五十年。写真に残る故人(明治23年生まれ)はいつも縞御召に紋付き黒羽織を着ています。
3.法事のきもの 過去の記録
①一周忌~七回忌
故人を偲ぶ追善供養として行われる年忌法要は、一周忌、三回忌、七回忌までは黒喪服や色喪服*を着ます。
*色喪服…通夜や法事で着る黒以外の喪の略式礼装。光沢が少なく、吉祥文様の地紋でない「一つ紋付き色無地」のこと。
②十三回忌以降のきもの
十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌は、法要にふさわしい装いであれば、紋がなくても地味な小紋や名古屋帯でも良いと私は考えています。
この頃は身内だけでの法要になることが多いので、着物で格式ばると周りとのバランスが崩れてしまいそうだからです。
ただし、法要の規模や喪主側か参列者側か、または地方や家のしきたりによって異なるので、これはあくまで個人の意見です。
△義父二十七回忌
(青海波は吉祥文様ですが、義母愛用の着物ということで着用)
ここで取り上げた着物については以下の記事で紹介しています。
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