花兎文様の帯:室町時代からの伝統的なデザインを楽しむ

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みなさんは花兎文様(はなうさぎもんよう)を知っていますか?

花とうさぎがモチーフなんてメルヘンチックで少女っぽいですが、今回取り上げるのは「花兎金襴(はなうさぎきんらん)」という室町時代に中国から日本に伝来し、日本人に愛されるようになった古い文様です。

1.名物裂(めいぶつぎれ) 花兎金襴(はなうさぎきんらん)

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今回着用した帯です。

これは花兎金襴(はなうさぎきんらん)と言われる名物裂(めいぶつぎれ)のデザインを紗の袋帯にしたものです。

①名物裂とは

名物裂とは鎌倉時代から江戸時代初期に主に中国から渡来した高級絹織物の総称で、武家や社寺、茶人に珍重されました。

金襴(きんらん)・緞子(どんす)・更紗(さらさ)・間道(かんどう)・竹屋町(たけやまち)など、数多くの種類があります。

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上から金蘭・緞子(純子)・間道
出典:鈴木一(2007)『名物裂事典』鈴木時代裂研究所

 

いかに貴重な裂地(きれじ)だったかを、以前鈴木時代裂研究所の鈴木所長さんが次のように教えてくださいました。

「古い茶会記を調べると、1608年に「切地」という言葉が登場するそうです。

1700年代、名物裂の「富田金蘭(とみたきんらん)」は60cm×40cmの裂が現代の価格で2500万円だったそうです。

一方、利休の茶杓はその10分の1。名物裂の袋(仕覆)になると、茶入れよりもずっと高価になるというわけです。」

②花兎金襴(はなうさぎきんらん)とは

花とうさぎを織り出した文様で、多くはうさぎの足元に作り土と呼ばれる盛り土があります。

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△花兎金襴(復元)(長崎巌監修、弓岡勝美編(2005)『きもの文様図鑑』平凡社より)

うさぎは前足をちょこんと浮かせて後ろを振り返っています。

その仕草が可愛らしく、茶人たちもこのような文様に心を寄せたのかと思うと微笑ましいです。

 

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△萌黄地花兎文様金襴(はなうさぎきんらん)中国 明時代・15~16世紀

東京国立博物館 東洋館「金襴・銀襴」展 (2020年8月 ~ 2020年11月)より

この金襴は江戸時代の豪商角倉了以(すみのくらりょうい)が愛したもので、「角倉金襴」と言われています。

前述の花兎金襴とは少し趣が違います。うさぎがくっきりしているからでしょうか。

 

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△龍村平蔵作 「角倉文錦」(長崎巌監修、弓岡勝美編(2005)『きもの文様図鑑』平凡社より)

これは色糸を使って織り上げているので、いっそう可愛らしい文様になっています。

③月兎も

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△縞地月兎丸文様金襴(しまじ つきうさぎ まるもんようきんらん)(明時代・16~17世紀)
東京国立博物館 東洋館「金襴・銀襴」展 (2020年8月 ~ 2020年11月)より

縞の印象が強いのですぐにウサギとはわかりませんが……

 

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△拡大
ウサギと枝付きの花が丸い文様になっています。
よく見ると「月兎」ですね。

 

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△愛用のうさぎ柄和風メモ帳

現代人も好きな<花+うさぎ>の柄は、静と動の組み合わせが楽しいデザインなのだと思います。

 

2.レースの着物に合わせる

①芝居見物は好きな着物で

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花兎文様の帯は八月上旬、歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」を見に行く際に着用しました。

 

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△「八月納涼歌舞伎」チラシ

芝居見物、しかも納涼歌舞伎と銘打っている公演ですので、服装は少しお洒落な浴衣などでも良いと思います。

今回の袋帯は銀糸入りなので、改まった場にふさわしく、芝居見物には少し仰々しいかもしれません。

けれども好きな芝居を楽しむとき、「周りは気にせずに自分が着たいものを着る!」というのが私のモットーです。

そこで、ややカジュアル寄りの無地のレース着物に合わせて着ることにしました。

 

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絹のレースは伸縮性があってシワにもならないので、若い頃から度々歌舞伎鑑賞に着ている着物です。

②帯揚げなど

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白地に赤い絞りの帯揚げは、少し古風で歌舞伎鑑賞向きだと思いました。

帯留めは翡翠(ひすい)のペンダントトップを使用。翡翠も日本の昔ながらの宝飾品です。

 

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帯の花兎文様に合わせて古典的な小物合わせにしました。

③以前のコーデとの比較

前回このレースの着物を着用したのは「アルゼンチンタンゴの夕べ」に参加したときでした。

 

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このときは着物をレースのロングドレスのつもりで着用し、帯や小物は同系色で洋服のような統一感のあるコーディネートにしていました。

2年前ですので、まだマスクは必須。外出もためらわれた頃です。

 

様々な制限がなくなった今年、令和5年はうさぎ年です。

今まであまり着用機会がなかった花兎文様の袋帯を歌舞伎鑑賞という楽しいシーンに使うことができてよかったと思います。

 

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