今日はカジュアルにも少しよそ行きにも着られる夏御召(なつおめし)をご紹介します。
黒っぽい印象なので9月の法事にも着用しました。
1.御召
①御召とは
御召(おめし)は御召縮緬(おめしちりめん)ともいいます。
先染めの糸を用いた平織りの織物で縮緬の一種です。徳川十一代将軍の徳川家斉が好んだところから「御召」の名があるそうです。
ふつうの縮緬よりもコシがつよく、紬よりしっとり馴染みます。
皺になりにくく裾さばきがよいのも特徴です。
夏御召は御召を夏用に薄く織り上げたものですが、今回ご紹介する夏御召はあまり透けないので、夏だけでなく単衣の時期にも着用しています。
②青海波の夏御召
黒地にモスグリーンの青海波(せいがいは)が織り出された夏御召です。透け感はほとんどありません。
黒いきものという印象が強く、柄の主張は少ないです。背中側は青海波がすべて逆向きになっています。(きものは肩山、袖山を境に折って仕立てるため、反物に一方向で柄が配置されると、仕立てたときには前と後ろの模様の向きが逆になります)
外の光に当てると少し透けているのがわかります。
2.カジュアルに着る
①木綿の帯で
白地に格子柄の名古屋帯を合わせました。
帯の生地は夏の洋服に使われるピケ(たてに畝(うね)のある織物)に近いもので、清涼感があります。
全体の色が渋いので堆朱(ついしゅ)の帯留めをしました。単衣や薄物の着物には細い三分紐がよく合います。
結城紬のバッグを持ちました。
結城紬というと冬のイメージですが、とても軽いバッグです。
②半幅帯で
博多の半幅帯を合わせました。
矢の字結びは帯枕をしないので背中が涼しくて楽です。
矢の字結びについてはこちらで取り上げています。
昭和世代は濃い色のきものに赤系の帯を締めると安心します。
青海波文の鼻緒の下駄にレースの足袋を履きました。
レースの足袋についてはこちらで紹介しています。
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https://kimono-kitai.info/19789.html
3.法事に着る
①七回忌、二十七回忌…ふさわしい服装は?
9月上旬、身内だけで義母の七回忌と義父の二十七回忌を同じ日に行いました。
年忌法要を一緒に行うことを「併修(へいしゅう)」または「合斎(がっさい・ごうさい」というそうです。
本来なら服装は年忌の浅いほうに合わせると思うので、七回忌のきものは「一つ紋付き色無地に黒または色喪帯」がふさわしいと思います。
一つ紋付き色無地に喪の帯の例
考え方や慣習によりますが、私の感覚だと喪主側は七回忌から、参列者側は一周忌から紋付き色無地を着用し、黒または色喪帯を合わせます。
そして13回忌以降なら無地でなくても地味な小紋に喪の帯や地味な帯を合わせれば良いと思っています。
今回の法要は、9月が命日の義父(二十七回忌)に合わせて行うことと、義母の形見の着物を身に付けたいと思ったので、七回忌でも無地ではなく、織柄の入ったこの夏御召を選びました。
②青海波文は大丈夫?
今回このきものを着るにあたって迷った点があります。
青海波は縁起の良い吉祥文様なので、不祝儀に用いることは避けるべきでは?ということでした。
しかし、良い方向に解釈しました。
青海波文様の穏やかに繰り返す波は、人々の幸せが未来永劫に続くこと、また家族の平穏な暮らしを願う意味があります。そして「繰り返す」ということは仏教的死生観にもつながるのではないでしょうか?
何より義母が着ていたものであることと黒っぽい着物ということで、青海波を法事に着用することにしました。
③着てみました
9月上旬の着用です。
色喪帯ではなく、普通の単衣用の軽い名古屋帯です。
帯まわりはグレーでまとめました。
帯揚げはシフォンストールです。
ラメ入りでキラキラしているので……
裏返して使いました。
バッグは甲州印伝。紺地に黒漆の葡萄柄です。
故人が愛用していた青海波文様のきものを着て、家族の安寧を願いました。