先日、法事で色喪服を着ました。
最近はお通夜に着ることはほとんどなくなった色喪服ですが、法事では前もって準備をすることができ、心を込めて装うことができます。
1.色喪服と帯
①色喪服とは
通夜や法事で着る黒以外の喪の略式礼装。
光沢が少なく、吉祥文様の地紋でない「一つ紋付き色無地」のこと。
②色喪服に合わせる帯
黒の喪帯か色の喪帯*を合わせます。
*色喪帯…グレーや紫などの地色で、流水や雲取りなどの柄や、梵字や経文が書かれている地味な帯のこと
帯を黒にするか色物にするかは、正式か略式かによって、つまりその時に必要とされる喪服の格で断します。
「喪服の格」とは?
最も正式なのは黒喪服+黒喪帯です。葬儀や告別式の喪主、家族、参列者が着用する第一礼装です。
次に黒喪服+色喪帯、色喪服+黒喪帯、色喪服+色喪帯の順に略式になります。
なお、私は黒喪服+色喪帯という装いを最近は見かけないように思います。また、略式になると、色喪帯の代わりになるような地味な帯を合わせることも可能です。
③いつ着るか
色喪服をいつ着るかについては地方の習慣などによって違いますが、個人的な意見としてまとめてみました。
色喪服+黒喪帯
- 喪主側:三回忌~
- 参列者側:通夜、一周忌~
色喪服+色喪帯
- 喪主側:七回忌~
- 参列者側:一周忌~
私が知る昭和時代は、色喪服に黒の紋付き羽織を着ることが多かったように思います。
黒羽織を着てしまえば、どんな色の無地でもどんな帯でも格好が付くので、楽だったのではないかと思います。
2.七回忌で
父の七回忌に色喪服を着ました。
①ちょっと派手な紫の色無地
身内だけの法事でしたので、若い頃から着ている色無地を着用しました。
明るい性格の父の法事には、この着物がふさわしいような気がしたのです。
故人への思いを着物や帯に反映させることができるのも和装の魅力かもしれません。
②グレー地の帯
色喪帯ではない地味な色合いの帯を合わせました。
文様は「天平狩猟文錦(てんぴょうしゅりょうもんにしき)」で、特におめでたい柄ではないと思い、色喪服に合わせました。
③帯まわり
帯揚げは薄いベージュに、帯締めはブルーグレーにしました。
不祝儀なので帯締めの房は下向きになるようにはさみます。
3.十三回忌で
1週間後、親戚の十三回忌に出席しました。
①抑えた色の無地
十三回忌になると、洋装でも喪服を着用せずに平服で行うこともありますが、招かれて出席する法事なので、控えめで少しあらたまった装いを心がけました。
少し紫がかった濃いグレーです。
*外で撮影した写真は実際の色とだいぶ違ってしまいましたが、以下の写真は同じ着物です。
白っぽく写っていますが、全体的にもう少し濃い色の取り合わせです。
②色喪帯
帯は義母が遺したものを着用しました。不祝儀専用の帯ではないようです。
厚みのある生地だからか、作り帯に直してありました。
右側にあるのはその時の余り布ですが、端は縫い閉じられていて敷物として使えそうです。
グレーの地に薄い藤紫色の冊子文(さっしもん・そうしもん)*が施されています。色喪帯としても、他の用途にも使える汎用性のある帯のようです。
*冊子文…和綴じの本を文様化したもの
③帯まわり
帯揚げは黒では強すぎるので、グレーを合わせてみました。
実は代用品のシルクのストールです。袷仕立てになっていて長さが足りないので、結ばずに帯の中に入れることにしました。
紫色の帯締めが全体を引き締める役割をしています。
④コートとバッグ
コートと草履は黒にしました。バッグはかかえではなく、洋装にも使用しているシンプルな革のハンドバッグにしました。
十三回忌の場合、ふさわしい地味なコートや草履があれば黒でなくても良いのですが、黒のほうが簡単にまとまる感じです。
とてもお世話になった叔父。着物が大好きだったので、心を込めて着て行きました。また、列席者は黒の喪服スーツが多かったので、きものでも浮かなかったように思います。
今日は色喪服をご紹介しました。
亡くなってからの年月や、故人への思いに合わせてコーディネイトを考えることができる色喪服は、便利なきものと言えます。
もちろん色喪服の出番は法事だけではありません。
「一つ紋付き色無地」は喪のきものとしてだけでなく、おめでたい席や、あらたまった席に着用できるものです。(以下の記事で取り上げています)