もうすぐ10月。「衣替え」が近くなりました。
皆さんは10月1日から袷を着ますか?それともしばらく単衣で過ごしますか?
単衣の場合はどのような装いが良いのでしょうか……?
1.衣替え
①衣替えの歴史
衣替えの習慣は、平安時代の宮中行事から始まったとされています。
中国の風習に倣って旧暦の4月1日および10月1日に夏服と冬服を着替えると定められていました。
江戸時代になると、幕府は公式に年4回の衣替えでの出仕を制度化し、一般庶民もこれに従ったそうです。
明治時代には、政府は洋服を役人・軍人・警察官の制服に定めて、夏服と冬服の衣替えの時期も制定しました。
やがてこれが一般にも定着し、官公庁・企業・学校が毎年6月1日と10月1日に衣替えを行うようになりました。
(参考:Wikipedia.org)
学校の制服の衣替え、今では懐かしい思い出ですが、この決まりは明治時代からのものだったのですね。
②着物の衣替え
着物を着始めるとどうしても確認しなければならないのが着物の季節ごとの決まりです。
- 10月~5月……<袷:あわせ>
- 6月と9月……<単衣:ひとえ>
- 7月~8月……<薄物:うすもの>
きものに合わせて帯や小物も替える必要があります。
これらはあくまでも正式な場所やお茶会などの改まった装いを求められる場合の決まりですが、これが初心者には面倒でわかりにくいことの一つかもしれません。
③移行(併用)期間も
学校の制服も近年は夏服と冬服の併用期間を設けているところが多いようです。
6月、10月というしばりをなくし、徐々に移行していく形で切り替えていくのです。
その日の気温で夏服、冬服どちらでも着用できるのは健康面でも良いことですし勉強の効率化にもつながりそうです。
5月と10月は気温の高い日が多いので、着物も5月と10月は併用期間として単衣を着てもよいと私は思っています。(フォーマルは除く)
2.10月の単衣はいつまで?
①気温で選ぶ
単衣か袷かを選ぶ場合、私は天気予報の気温で考えます。
最近は10月初旬の最高気温が25℃以上になることが多く、ときには薄物でもよいくらいの暑さになることもあります。
ですからここ数年、カジュアルな外出はほとんど単衣にしています。
お茶会など少しかしこまったところに出かけるときは、気合を入れて袷を着ますが、汗取り肌着や長襦袢などで対策をして、なるべく快適に過ごせるように準備します。
②10月後半から袷に
東京の場合、10月15日くらいから次第に最高気温が低くなってくるので、自然に袷を着たくなるのではないでしょうか。
私はだいたい10月後半から袷を着ていると思います。
ただし、その日の気温と出かける時間帯を考え、まだ暑いようなら単衣でもかまわないと思います。
③木綿は例外
木綿の着物はほとんどが裏のない単衣ですが、袷の時期でも着られるので、10月は木綿着物の季節と言えるかもしれません。
また、真冬になっても下着や襦袢を工夫したり、羽織やコートで寒さ対策をすれば着ることができます。
3.10月に着る単衣
私が10月に着ている着物をあげてみます。
10月限定というわけではなく、9月~10月前半まで着ているものです。
①赤系のきもの
秋をイメージする赤系のきものは温かみを感じさせるので、単衣であることがあまり気になりません。
山繭(やままゆ)紬*の単衣です。
*山繭紬…天蚕(ヤママユガ)の繭から採った糸を用いて織った紬。光沢があり、普通の絹糸と交織して染めると独特の模様が出ます。
イカット風の紬の帯を合わせています。
更紗文様の紬の単衣です。
無地の綴れ帯を合わせています。
茜絞りの木綿の着物です。
茜絞りは目立つので、渋い色の生紬(なまつむぎ)の帯を合わせました。
いずれも若い頃からの着物で少し気恥ずかしいのですが、親しい友人との気楽な外出に着用しています。
②赤系の帯で
型絵染の紬の単衣に赤系の帯を合わせています。
黄色や赤の紅葉を思わせる紬の帯です。
着物の模様には季節がないので、春と秋で帯を変えて楽しんでいます。
赤系の帯は最近流行っていないようですが、私は好きなのでまだ愛用しています。
③木綿の絣はいつでも
厚手の木綿着物は夏以外ならいつでもOK。
中に着る襦袢や下着を調節すれば3シーズン着られて重宝します。
弓浜絣
木綿の弓浜絣(ゆみはまがすり)*です。
これは秋ではなく1月に着用したときのものです。
防寒のため、絹の袷の長襦袢を着ていますが、10月なら筒袖の半襦袢などで涼しく快適に着られます。
この日は羽織を着て出かけました。
これも弓浜絣です。
10月に着用したので小物を赤にしています。
弓浜絣についてはこちらで取り上げています。
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久留米絣
久留米絣を10月に着ています。
お洒落に装いたくて白地の紬帯を合わせたので、バッグと履物(鎌倉彫)は赤にしました。
久留米絣についてはこちらで取り上げています。
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4.春と秋、同じ単衣で帯を変えて
最後に、5~6月に着ることの多い羽二重の単衣を、帯を変えて10月に着用するにはどうすればよいか考えました。
①6月の場合
羽二重単衣の小紋に絽綴れの帯を合わせています。
季節のない唐花模様の着物です。
この着物はたいてい6月に白っぽい帯(涼しげに見せるため)を合わせて着ています。
帯揚げは絽縮緬です。
②10月の場合
黒地の塩瀬羽二重の名古屋帯を合わせました。
小物を秋色にしています。
小菊と笛の刺繍が施されています。
帯揚げは袷用*です。
黒地の帯で落ち着いた雰囲気に、朱色系の小物で秋らしい華やかさを出しています。
*9月中は絽や絽縮緬の帯揚げですが、10月1日からは袷のものに切り替えます。
黒地に朱系の花柄の草履を合わせました。
今日は10月に着る単衣を取り上げました。
気温が安定しない10月ですが、秋に向かっての装いをあれこれ迷いながら考えるのも楽しみの一つだと思います。