紬と絣。意味は違うのにどこか紛らわしい言葉です。きものを見ながら考えてみます。
前回の記事はこちら↓
5.絣文様の紬
絣文様でできている紬のきものを挙げてみます。
①蚊絣(かがすり)や亀甲(きっこう)絣
<結城紬>
<大島紬>
②その他の絣
<琉球絣>(琉球紬とも)
以下の記事参照↓
<十日町絣>(十日町紬とも)
③大島紬は紬ではない?
①で、「絣文様の紬」として挙げた大島紬ですが、実は、現代の大島紬のほとんどは紬ではありません。
手紡ぎ糸からではなく、機械で精練された生糸が使われているからです。
昔は薩摩藩の上納品として織られていた大島紬ですが、明治後期に防染のための締め機(しめばた)が開発されました。
図案通りに締め機で絣糸をくくっていくことで、緻密な蚊絣文様ができるようになったのです。
そして生産性向上のため、地機でなく高機で織るようになり、高機では織りにくい紬糸から、生糸に変わって行きました。
あのなめらかな手触りは生糸から織られているからですね。
ただし、現代でも真綿から作られた大島紬はあるようです。
6.絣文様だが、紬でないもの
絹以外の糸で作られた絣文様のきものを挙げてみます。
①木綿
鳥取県の弓ヶ浜半島(米子市、境港市)で製作されています。
以下の記事参照↓
宮崎県都城市で製作されています。
以下の記事参照↓
福岡県久留米市および周辺の旧久留米藩地域で製作されています。
以下の記事参照↓
②麻
新潟県南魚沼市、小千谷市を中心に製作されています。
以下の記事参照↓
沖縄本島から南西に290Kmにある宮古島で製作されています。
以下の記事参照↓
7.カジュアルなのに手間がかかる絣たち
無地の紬や後染めされた結城紬などは、少しよそゆきでお洒落な着物として着用できますが、「絣」のきものは昔も今も日常着として、気楽な場所でのみ活躍するものです。
それなのに、多くの絣のきものは、1反作るのにとても手間がかかります。
琉球絣で1ヶ月、久留米絣は2ヶ月、結城紬は数ヶ月から1年、宮古上布は1年以上かかることも。そして越後上布の絣入りは2年かかると言われています。
今では芸術とも言える染織技術を駆使し、長い時間をかけて作られた絣たち。
それらが世代を超えて受け継がれ、着続けられるのは、作り手の技術だけでなく、布に込められた魂によるものなのかもしれません。