生地

ムガシルクの着物と辻が花の帯

2021年12月18日

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前回ご紹介した渋谷能には、ムガシルクの着物に辻が花の帯を締めて行きました。

ムガシルクは紬でもおしゃれ感があり、渋い草木染の帯との組み合わせは能楽堂に馴染む装いだと思いました。

1.不思議な輝きのムガシルク

①ムガシルクとは

インドのアッサム地方に生息するムガ蚕(かいこ)からとれる絹糸、またはその織物をさします。

ムガ蚕は山野などに自然に生息している野蚕(やさん)の一種で、野生の植物を食べます。ムガシルクの織物は黄金色に輝くことと、軽くて強いのが特徴です。

多孔質(表面に小さい穴がたくさんあいている)繊維なので、光を乱反射し光沢が強いのだそうです。

参考資料:成田典子(2014)『テキスタイル用語辞典』テキスタイル・ツリー

 

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所々に紬糸のネップ(節)が見えます。

 

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△生地拡大

 

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母から譲られたムガシルク、自分が着るまでは分からなかったことですが、単衣の着物のように軽いです。

繊維が多孔質構造だからなのでしょう。

②カジュアルだけどよそ行き?

ムガシルクの着物は太陽光の下ではわからないのですが、室内では輝いて見えることがあります。

ですから紬とはいえ少しあらたまった装いにもできるので、名古屋帯だけでなく洒落袋帯や袋帯と合わせることによって着用シーンが広がります。

 

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△ きものを室内でフラッシュ撮影したもの

 

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過去には絽ざしの帯を合わせました。

 

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縅(おどし)のバッグをアクセントに少し華やかに装いました。

 

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△ムガシルクに唐織の帯を締めた母と(2007年)

フラッシュ撮影なので光沢が分かります。

 

2.辻が花の帯

①辻が花とは

辻ヶ花(つじがはな)は、室町時代から安土桃山時代にかけて現れた絞り染めと墨描きによる模様染めのことです。

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△小袖 白練緯地亀甲檜垣藤雪輪模樣(しろねりぬきじ きっこう ひがき ふじ ゆきわ もよう)
安土桃山時代 16世紀 京都国立博物館(「特別展 きもの 図録」東京国立博物館 2020年発行 より)

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△辻が花の拡大(同上)

②紬地の名古屋帯

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紬地に辻が花調*の絞りが施された帯です。

*「縫い締め絞りと墨描き」が辻が花の定義とするなら、この帯は墨描きがないので辻が花ではなく、ただの絞りの帯ともいえます。

 

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白地の絞り部分が映えています。

③地味めのコーデには明るい小物

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能「山姥」を少し意識し(前回の記事参照)、老女風?のコーディネートにしたため、赤系の帯締めで明るさを出しました。

 

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着物の余り切れで作った草木染バッグに更紗の鼻緒の草履を合わせました。

ベージュや茶系の着物には赤系小物が役に立ちます。

 

3.秋色の辻が花の帯

最後に私が大切にしているもうひとつの辻が花の帯をご紹介します。

秋色の辻が花の帯です。

①紬の無地に

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2で紹介した帯と同じ作家のものと思われます。

②黄八丈に

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地色と模樣の構図からは落ち葉を連想するので、秋の季節限定で着用しています。

③色大島に

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茶の地色によって、絞りの中の小さな鹿の子絞りや墨描きされた葉の虫食いが、鮮やかに際立っています。

 

 

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