この夏、浴衣の帯に帯留めや帯飾りを楽しんだ方も多いと思います。
私も麻のきものに珊瑚風帯留めを合わせ、夏のおしゃれを楽しみました。
1.藍の上布
①産地はどこ?
以前も取り上げた麻のきものですが、産地がはっきりわからないまま着ていました。
先日、銀座金春通りに店を構える「はんなり」(きもの販売とレンタル)を訪れた際、社長の中瀬さんに見てもらい、越後上布であることがわかりました。
上布をはじめ、あらゆる染織工芸品に詳しい中瀬さんはきものに少し触った瞬間、「タテヨコ苧麻(ちょま)の越後ですね。」と言い、お店に展示してある越後上布や、八重山上布なども見せてくださいました。
産地は関係なく着心地の良さで愛用していた着物ですが、越後と分かり、写真で見た雪晒しの光景が頭に浮かんで来て、なおさらこの着物に親しみを感じるようになりました。
△越後上布の雪晒し(『美しいキモノ』2015年秋号ハースト婦人画報社より)
②越後上布・格子文の絣
この上布は藍の濃淡と白、朱、ベージュなどの格子の絣になっています。
手績みの苧麻糸で織られているようです。
特にタテヨコの白が重なった部分は星のようにも見えて明るさがあります。
越後上布についての説明は、以下の記事で御覧ください。
2.帯の取り合わせ
藍の絣はどんな色の帯でも合うのが特徴で、コーディネートが楽です。
①白でも赤でも
以前の組み合わせです。
白の絽綴れは少しよそ行きの雰囲気になります。
小豆色羅の帯で昭和風な色の取り合わせに。カジュアルで幼い感じです。
②今年は茶色で
今年はしな布の帯を合わせてみました。
同じベージュ系の芭蕉布ミニバッグを持っています。
帯留めが唯一華やかなポイントです。
渋い色の帯を締めると、きものの絣文様も落ち着いて見えるから不思議です。
越後上布に限らず、藍の絣は、若いときから年を取るまで長く着られるきものだということを実感しました。
3.帯留め
①菊の帯留め
今回使用したのは前述の銀座「はんなり」で見つけた可愛い帯留めです。
珊瑚ではなくプラスチック製だとか。
裏を見るとわかります。
でも繊細な細工物のように見えるのに感心して購入しました。
現代の帯留めは遊び感覚で楽しむものですから、宝石でないほうがかえって良いのです。
②乱菊・糸菊
素朴な無地の帯に帯留めをすると結構引き立ちます。
糸菊とか乱菊というのでしょうか。
きものの文様としてはポピュラーなものです。
△乱菊(『きもの文様図鑑』長崎巌監修、弓岡勝美編 平凡社2005年より)
△糸菊(前掲書より)
菊は、江戸時代から栽培が流行し始め、現在もあちらこちらで菊花展が開かれるなど、愛好家が多い花です。
菊の種類としては、このような形状のものは「管物(くだもの)」(花弁のすべてが中空の管状になっているもの)と呼ばれるようですが、繊細かつダイナミックで大変美しい菊です。
△大菊 管物(wikipedia.orgより)
③終わる夏
もうすぐ8月も終わり、9月9日の重陽の節句を迎えます。
重陽の節句は別名「菊の節句」。五節句のひとつで菊の花を用いて不老長寿を願う行事です。
きものの世界では「この日から夏の薄物をやめて単衣を着る」と決めている人も多いようです。夏物に秋草の柄を配すように、今回は秋の先取りとして、菊を一つあしらってみました。
でも、実はもう一つ違うイメージもあります。
ゆく夏を惜しむ花火に見立てるのです。
まだまだ暑い時期、秋の花というより「夏の夜空に咲く大輪の菊」のほうがしっくりくるかもしれません。