2018.7.8の記事では「矢の字結び」を取り上げました。
今日は簡単な結び方「貝の口」を紹介します。
1.貝の口結びで浴衣を着る
①紺地の綿コーマ浴衣で
綿コーマ地の浴衣を着てみました。
コーマ*地は浴衣として一般的な生地です。
はじめはパリッとかたいですが、水を通すと柔らかく着心地もよくなります。綿絽やちぢみの浴衣よりは目が詰まっているので暑く感じることもあります。
*コーマとは
コーマは綿や毛の紡績工程で使用する、櫛(コーム)状のものを取り付けた「コーマ機」または「コーマ機で行う作業」のことです。
繊維の中の不純物を除去したり繊維を一定方向に揃える<カード>という通常の工程に加えて、コーマ機でさらに短繊維を取り除き、長い繊維のみを平行に揃えます。
そうすることで糸ムラやケバが少ない糸となり、肌触りや光沢が増します。
若い頃使用していた博多織の半幅帯を貝の口に結びました。
帯締めが後ろからでもよく見えます。
帯の色がもう派手になりましたが、帯締めの色で落ち着かせています。帯留めは以前ご紹介した(2016.10.30の記事)チェコガラスのボタンです。
貝の口はあまり主張がない、目立たない結び方なので、赤が入った帯でも合わせることができたようです。
②大人の女性は貝の口?
若い頃の浴衣には文庫結びが最も可愛くて合いますね。私もずっと文庫にしていました。
結婚後、30代前半の頃はどうしようか迷いましたが、貝の口は地味に感じたので、軽い夏の名古屋帯でお太鼓にしていました。
でも、浴衣に名古屋帯は暑く、やせ我慢をしていた気がします。
40代以降はとにかく着心地が優先になり、背中が涼しくて楽な貝の口に親しみが持てるようになりました。
やはり、大人の女性が手早く楽に結べて、浴衣を大人っぽく着こなせるのは、シンプルな貝の口なのかもしれません。
細い帯締め1本あれば、ゆるむことなく安心して出かけられます。
2.貝の口の特徴
<良い点>
・簡単
貝の口は男性の角帯の結び方として馴染みのあるもの。
手先やたれの長ささえ決まれば簡単に結べます。
・おとなしい感じ
結んでも大きくならないので、派手な帯でも落ち着きが出ます。
・背中が楽
仕上がりが平らで背中がふくらまず、帯を背負う感じがありません。
<注意点>
・小さい
ボリュームが無いので他の結び方より地味です。
また、大柄の人には物足りない印象になるかもしれません。
・ゆるい
文庫結びのようにキュッと締まらないので、帯の素材によってはゆるむ心配があります。
外出する際は人混みでほどける危険もありそうなので、帯締め使用をおすすめします。
3.貝の口の結び方
(撮影の都合上きものクリップを使用していますが、実際にはなくても結べます)
①伊達締めをしっかり
最後に帯を回すので、伊達締めはほどけないようにしっかり結び、端は中に入れておきます。
②巻き始め
手先はたて半分折り。長さは40cmくらい取ります。帯の厚みや体格によって変わりますが、「矢の字結び」よりやや短いです。
③二回巻く
胴に二回巻きます。(ひと巻き目でいったん締めてから、ふた巻きします)
④タレを折り返す
長いタレを内側に折って短くします。
一巻き目の帯の上にきちんと重なるようにします。
このタレの長さはお太鼓や羽の大きさによって変わります。
手先と同じか、5cmほど短くすると良いようです。
⑤結ぶ
結ぶときはタレを上にしてから
手先の下をくぐらせてタレを引き抜きます。結び目は斜めに、なるべくシワが寄らないようにします。
タレを下ろしたら、お太鼓になる部分の上辺をまっすぐにしておきます。(丸印の部分)
⑥タレを折る
タレを斜めに折り上げます。
⑦手先を入れる
お太鼓の中に手先を入れます。
キュッと締めます。
この形は帯締めを使うつもりで、少し大きめにしています。
⑧帯締めをする
帯締めを通します。
お太鼓の近く*で結びます。
*紐だけの場合は後ろで仮結びします。(2018.7.8の記事の4を参照してください)
帯留め付きなので結び目はお太鼓の中に隠します。
↓ ↓ ↓
結び目を隠したので見えません。
⑨後ろに回す
帯を崩さないように注意しながら、自分の右後ろ(時計回り)に回します。
帯留めが中心に来るように整えます。
必要ならば帯板を入れます。
⑩出来上がり
出来上がりました。
後ろ
横から見たところ
お太鼓が少しふっくらしていると良いようです。
今日は貝の口結びをご紹介しました。帯結びとしては一番単純かもしれませんが、ウールや木綿、紬などのカジュアルな装いに、また羽織を着るときにも活用できるので、自分なりの結び方に慣れておくと良いと思います。