麻のきものは涼しくサラッとした着心地が特徴です。シワが出来やすいことはわかっていても、夏にはどうしても着たくなります。
今日はこの夏着用した越後上布と、麻のきもののシワ対策をご紹介します。
1.越後上布
①越後上布とその原料
新潟県南魚沼市で織られる麻織物です。縮(ちぢみ)織のものは小千谷縮と言います。
原料は苧麻(ちょま)といわれる麻の中でも特に繊維が細い上質なものが使われます。
現在は 苧麻の繊維を乾燥させた「青苧(あおそ)」を福島県昭和村から買い入れて使っています。
△水に浸した苧麻(ちょま)を小指の爪で裂き、糸の端をなめながらひねって絡み合わせつないでいく「苧績み(おうみ)」(『残したい手仕事 日本の染織』片柳草生著 2017年世界文化社より)
△績(う)んだ糸(前掲書より)
②しなやかな糸
このように手績みで作られた糸は細くて絹糸のようになります。
<越後上布><絹の紗><芭蕉布>の三点を顕微鏡拡大写真で比較してみました。
タテ糸ヨコ糸共に手績みの苧麻を用いた越後上布は絹の紗に近いつややかさがあることがわかります。
③地機(じばた)と雪晒し
絹糸のような…とはいえ、麻糸は乾燥すると切れやすいので高機にはかけられず、昔のままの地機(いざり機)で織りあげます。
そして湯もみしたあと、不純物を取り除いたり色を鮮明にするための雪晒しを行って越後上布は仕上がります。(越後上布については以下の記事で取り上げています)
江戸後期には、越後上布と縮は年間20万反生産されていましたが、現在、重要無形文化財の条件を満たす反物は30反にまで減ったそうです。(参考:前掲書)
△越後上布(前掲書より)
2.着用例
①同じ色の取り合わせ
毎年着ている越後上布ですが、今年は麻の紅型染帯を合わせました。
琉球紅型研究家で型絵染作家の鎌倉芳太郎(1898年~1983年)の帯です。
以前は違う系統の色の帯を合わせることが多かったのですが、今回は全体をグリーン系にまとめました。(この帯については以下の記事で取り上げています)
草履も緑で合わせています。
②実際の色
ぱっと見ると黄緑色の印象を受けるきものですが、実際は黄色に藍色の絣文様です。
青い部分が絣文様です。
これが遠目で見ると黄緑色に見えるのです。
帯飾り、帯締め、帯揚げの色を合わせました。
3.シワ対策
麻なのに柔らかさやとろみがある越後上布ですが、弱点はすぐシワが出来てしまうところです。
①湿らせる
麻のシワ対策で唯一出来ることは霧吹きで湿らせることです。
着用後の麻のきものは大抵それでシワを伸ばすことが出来ますが、着用中に気になるシワはどうすればよいのでしょう。
苦肉の策ですが、着たまま湿らせます。
②携帯用アトマイザー
私が使用しているのは、香水の携帯用アトマイザーです。
香水を入れる場合は劣化を防ぐために少し良いものを選ぶ必要がありますが、水を入れて携帯するだけなので、低価格の軽いもので十分です。
口紅の大きさで、5mlほど水が入ります。
内側の瓶はガラス製、外側はポリプロピレンです。
水を満タンにしても19g。5mlの水で36回噴霧出来ました。
③やり方
化粧室に入ったら真っ先にシワに2~3回スプレーします。
そのあとお化粧直しなどをします。2~3分後には乾いています。
例
※撮影は外で行っています
袖にわざとシワをつけてみました。
スプレーしました。
濡れた状態です。
2~3分後にはシワがなくなり、生地も乾いていました。
長時間腰掛けて付いてしまったお腹周りやお尻付近のシワにもスプレー可能です。
下のほうに噴霧することになりますが、容器は逆さまにせず、持ち方を替えてスプレーします。(人差し指ではなく、親指でスプレーを押します)
麻の着物にシワはつきものですのであまり気にする必要はありませんが、写真を撮る時など、どうしても気になる場合は試してみてください。
でも、かけすぎには注意してくださいね!