イベント訪問

「英語で楽しむ伝統芸能~能と歌舞伎~」に行きました

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先日、能と歌舞伎のユニークな公演を鑑賞しましたのでご紹介します。

1.「英語で楽しむ伝統芸能」

9月9日、東京都港区赤坂の赤坂コミュニティーぷらざにおいて画期的な公演が行われました。日本の代表的な伝統芸能である歌舞伎と能が、それぞれ英語の解説付きで上演されたのです。

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△チラシ。(主催:港区スポーツふれあい文化健康財団(kissポート財団))

①歌舞伎俳優 市村萬次郎さん

この英語解説付きの歌舞伎公演は、以前から市村萬次郎さん*とそのご家族によって行われてきました。

*市村萬次郎(1949~)…十七代目市村羽左衛門の次男、兄は初代坂東楽善(八代目坂東彦三郎)、弟に四代目河原崎権十郎が、子に六代目市村竹松がいる。女形で、行儀のいい演技が持ち味。

昭和54年(1979年)1月に中国、昭和62年(1987年)にソ連、昭和63年(1988年)に韓国と、海外での公演にも積極的である。

また、外国語による解説をつけた外国人のための歌舞伎教室を開催、インターネットのホームページを使った啓蒙に取り組むなど、歌舞伎を広める活動に熱意を見せている。
映画・テレビドラマへの出演も多い。

(出典:Wikipedia

萬次郎さんは1994年に英語で歌舞伎を解説したホームページを作りました。そして1992年には「外国人の為の歌舞伎教室」、96年には自分たちで企画した海外公演を始めました。

これらのことは、萬次郎さんが歌舞伎をやっている理由のひとつなのだそうです。萬次郎さんの父、十七代目市村羽左衛門さんも生前「自分の言葉で歌舞伎という文化を世界に伝えたい」とよく話しておられたとのこと。

歌舞伎の海外公演は日本文化の紹介や入り口になる。だから衣装や音楽、建物といったものに少しでも興味を持ってもらえたら、という思いが萬次郎さんには常にあるそうです。

参考:港区コミュニティ情報誌「キスポート」(2015.9、2017.8)

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△市村萬次郎さん(プログラムより)

②萬次郎さんの家族

妻・坂間潔子さん

京劇女優。日本から京劇を学ぶために台湾に留学。帰国後は京劇の立ち回りなどを歌舞伎界で指導。(市川猿之助の『ヤマトタケル』初演・坂東玉三郎の『楊貴妃』など)
台湾では潔子さんの中国語解説による「外国人の為の歌舞伎教室」も行われました。

また、プログラムやチラシなどのイラストも潔子さんが担当し、いつも素敵な絵で楽しませてくださっています。

長男・市村竹松さん

1990年生まれ。94年初舞台。インターナショナルスクールに通っていたので英語が堪能。公演の英語解説を担当しています。

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△市村竹松さん(プログラムより)

次男・市村光さん

1994年生まれ。98年初舞台。インターナショナルスクールからチャイニーズスクールに通ったので、中国語が堪能だそうです。

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△市村光さん(プログラムより)

参考:港区コミュニティ情報誌「キスポート」(2015.9、2017.8)

③今年の公演

今回の「英語で楽しむ伝統芸能~能と歌舞伎~」は、一部は能、二部は歌舞伎というように一回の公演で2つの伝統芸能を鑑賞できるものでした。

演目は以下の通りでした。

<第一部> 能

  1. 能の見方 英語解説付き
  2. 素謡「翁」  シテ 金春憲和
    半能「高砂」 シテ 山井綱雄

<第二部> 歌舞伎

  1. 歌舞伎の見方 英語解説付き
  2. 歌舞伎舞踊「藤娘」 藤の精 市村萬次郎

能と歌舞伎それぞれの見方を実演付きで説明していましたが、日本語の後には必ず市村竹松さんによる英語の解説が付きました。会場には外国の方も多くいて、皆さん真剣に聞いていました。

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△会場のポスター

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△展示されていた能面と扇

 

2.「能と歌舞伎」

公演内容と感想を少しご紹介します。

①能の見方

金春流シテ方の山井綱雄さんが、いろいろな能の型(所作)を実演し、それが何を表しているのか説明していました。

楽しさ、喜びを表す「ユウケン」の型や、こぼれる涙を抑える(泣いている)動作の「シオリ」、月を見る型の「月ノ扇」や寝ている様子を表す型などを実演。また、能のすり足を「ハコビ」といいますが、歩幅や速さで男女や人物の特徴を表すことを話していました。

丁寧な説明と実演は楽しくてわかりやすかったです。
真剣な表情での実演のあと、にっこり笑ってお辞儀をするたびに、会場からは拍手が湧いていました。
また、市村竹松さんの英語解説は明晰で、時として日本語の解説より詳しく説明されていたようです。

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△山井綱雄さん(プログラムより)

②能公演

<素謡「翁」>

シテ方金春流宗家 金春憲和さんらによる「翁」の素謡は神への奉納、神聖な儀式としての謡だけに、力強く、格調高く謡われました。

また、謡のはじめと終わりにシテと地謡全員で深々とお辞儀をする独特の演出も興味深かったです。

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△金春憲和さん(プログラムより)

<半能「高砂」>

若い神(住吉明神)がさっそうと舞う姿を表現した「高砂」の神舞は大変気合が入ったスピード感のあるもので、舞だけでなく、囃子や謡も聴き応えのあるものでした。
見方解説の山井さんがシテをつとめました。

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△能「高砂」梅若万紀夫
『能を彩る文様の世界』野村四郎・北村哲郎共著 檜書店2013年より)

③歌舞伎の見方

「歌舞伎の下座音楽*」と「立廻り」をわかりやすく解説しながらの実演でした。

*下座音楽(げざおんがく)…歌舞伎の演出で、基本的に舞台下手の黒御簾の中で演奏される効果音楽のこと

<下座音楽>

普段は客席からは見えない黒御簾の中で演奏される下座音楽を、実際に見ることができて楽しかったです。

唄と三味線、笛や大小の鼓、太鼓、笛や木魚などによる演奏は、自然現象や情景を描写し、主人公の喜怒哀楽や場面の状況をうまく表しています。

雨・雪・風・波、幽霊、街の賑わい、祭りの様子、田舎の情景など、芝居好きには聞き馴染みのある音や曲が舞台上見える形で演奏され、とても興味深かったです。

一人がニ調の太鼓を同時に演奏したり、二人が打つ時間差での小鼓の音が、遠くのこだまの音を良く表現していることに感心しました。

<立廻り>

市村竹松さんと市村光さんがそれぞれ立廻りを実演してくれました。英語解説の兄・竹松さんがいつもの眼鏡を外して登場。萬次郎さんのお弟子さんたちと演じた「だんまり」*がとても面白かったです。

*だんまり(暗闘)…歌舞伎の演出の一つ。登場人物が暗闇(くらやみ)という設定の中で、互いに探り合いながら死闘を繰り広げたり、物語の鍵となる物品を奪い合ったりする立ち回りをすること。暗桃とも書く。

(出典:Wikipediaより)

④歌舞伎公演

市村萬次郎さんによる歌舞伎舞踊「藤娘」でした。美しい藤の妖精が描き出す幻想的な世界に、女形の演技派ならではの情感あふれる妖艶な踊りが加わり、とても見応えがありました。

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△歌舞伎舞踊「藤娘」 七世尾上梅幸
『NHK 日本の伝統芸能2001年4月~2002年3月』日本放送出版協会より)

 

3.琉球絣の単衣で

①琉球絣

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若い頃に母からもらった琉球絣。50年は経っているきものです。軽くて涼しいので初秋にはぴったり。

明るめの藍地にはっきりした絣模様の単衣は、着るといつも軽快な気分になります。

 

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独特の絣模様です

②麻の染帯

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麻の九寸名古屋帯を合わせました。麻でも九寸名古屋帯には芯が入るので、真夏には暑く感じます。9月初旬にはちょうどよくなります。

 

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茜絞りの帯締をアクセントにしました。

 

4.来年も

「英語で楽しむ伝統芸能~能と歌舞伎~」は、市村萬次郎さんのご家族を中心に、長唄と下座音楽の皆さん、金春流シテ方と能の囃子方の皆さんによる大変贅沢な公演でした。工夫された演出とわかりやすい解説はとても楽しく、あっという間に時は過ぎました。

来年はどのようなユニークな公演になるのでしょうか。大いに期待したいと思います。

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△プログラムの両表紙

萬次郎さんの奥さんの手になるものです。

 

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△藤娘顔出しパネル

萬次郎さんの奥さんが、「ぜひ写真を撮っていってくださいね!」とすすめて下さった力作パネル。藤娘に寄り添うかわいい萬次郎さんが、自分を指差して「これ、僕!」と言っていますね。

 

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