最近の七五三やお宮参りは、お詣りを目的としつつも家族の楽しいイベントとして華やかに行う傾向があるようです。
そんなとき祖母(おばあちゃん)の着物は何を選べばよいのでしょうか。
格を揃えるとはどういうことか、昭和の時代にはどの様な着物が着られていたのか、洋装と和装の組み合わせなどについても、私の考えをご紹介します。
1.何を着れば良いか
①格をそろえる?
両家顔合わせ、お宮参り、七五三など、二つの家が集まるイベントでは服装に迷うことがありますね。
呉服屋やきものレンタルショップのウェブサイトや、その他のまとめサイトで、次のような説明をしているのを見かけました。
両家、家族全体の服装の格をそろえましょう
全体の格を揃えるというのは、もっともな説明のように思いますが、具体的にはよくわかりません。
洋装と和装は格が違うのか、きものの格(留袖、訪問着、小紋など)を同じにするべきなのか、格という表現は難しいですね。
主役(お宮参りの場合は赤ちゃんとママ)が洋装なら周りも洋装にしましょう
主役が洋装なら全員洋装というのは少しおかしいですね。
そもそも神社にお詣りに行くために身なりをきちんと整える、というのが基本の考え方なので、洋装和装は関係ないはずです。
②主役が引き立つのなら何でも
祖母のきものは、小紋、色無地、訪問着など、何でも良いと私は思います。
着物の種類に関係なく、子供や若夫婦を引き立てながらきちんとお詣りをするための装いを自分なりに考えましょう。
また、父方と母方の祖母2人が、着物または洋服のどちらかに揃える必要はないと思いますが、事前にどんな服装で行くかはお互い話をしておくと安心ですね。
祖父母が遠方から電車で駆けつけるという場合もあるでしょう。そんなときは動きやすい紬の着物でもよいのではないでしょうか。
いかにも普段着という装いでなければ、和装が特別になっている現代では紬もおしゃれ着のうち。
合わせる帯を少し光沢のある塩瀬地にしたり、刺繍入りの帯や洒落袋帯などを合わせると良いかもしれません。
③色留袖は?
色留袖は一つ紋や三つ紋が付き、比翼仕立て*になっています。
*比翼仕立て……留袖の下に白の着物を重ね着しているように見せるために衿や袖口、裾などに羽二重の白布を縫いつけた仕立て方です。昔は本当に二枚重ねて着ていました。
衿元や裾の比翼(白羽二重)はわずかにのぞくだけなのですが、重ねていることで重厚感が増し、格調高い装いとなります。
ですから、地色や裾模様が華やかな色留袖は目立ちすぎて子供のお祝いには大げさかもしれません。
渋い色で裾模様も地味ならば大丈夫だと思います。
2.昭和の七五三とお宮参り
親族の七五三とお宮参りの古い写真を見てみます。
①昭和20年代前半のお宮参りと七五三
戦後は黒紋付き羽織や黒の絵羽織が流行ったため、祖母の多くは黒羽織だったようです。
ママも祖母も黒い羽織を着ています。
祖母は細かい縞御召(しまおめし)の着物に黒紋付の羽織を着て、赤ちゃんを抱いています。
②昭和50年代半ば頃の七五三
両端の祖母のうち、一人は無地のきものに織の帯、もう一人は小紋のきもので、その模様に合わせた塩瀬か綴れの帯のようです。
後ろで紫の無地を着ているのはママです。
この頃になると、黒の羽織はもう流行っていませんでした。
③その2年後の七五三
後ろの祖母は、一人は無地、もう一人は上が無地で控えめな裾模様がある訪問着のようです。
二人とも礼装用の袋帯を締めています。
ママはきれいめの小紋で、帯や小物に統一感を持たせています。お姉ちゃんの着物と被布も可愛いです。
偶然なのか、相談していたのか、祖母二人は女児の七五三の時よりあらたまった着物と帯です。女の子のときは柔らかい雰囲気で、紋付袴の男の子の祝いでは格上の装いにしたのかもしれません。
この時代は自分できものを着る人が多かったので、祖母2人とママはそれぞれ自分なりの自然な着方をしていて素敵だと思いました。
3.お宮参りで色留袖を着る
①比翼なしの色留袖
先日のお宮参りで、私は比翼がない色留袖を着用しました。
上半身は無地で重ね衿も無いので落ち着いた印象だと思います。
②黒地の洒落袋帯
櫛織り風の洒落袋帯です。金糸が入っていますが、礼装用の帯ではありません。
帯揚げは飛び絞りを合わせました。
絞りの紅色で赤ちゃんの御祝いの気持ちを表し、また柔らかい雰囲気が出るようにしました。
裾模様はモダンな葡萄唐草です。
③洋装と和装
今回のお宮参りは、父方の祖母は洋装で、母方の祖母(私)が和装でした。
お詣りや写真撮影の中心は父方の家ですので、行動も自然とそうなり、私と夫はあとに従う感じでした。
ですから、私が着物でも違和感はなかったと思います。
両家全員の集合写真を撮ったあと、最後に娘と二人で……
娘も比翼なしの色留袖を着ています。
以前こちらで紹介しました。↓