今日は、きものを上手く着ているように見えるポイントについて、実例を交えながら考えます。
1.友人からの質問
先日、きものデビューしたての友人からこんなことを聞かれました。
「きものを一生懸命着ているのだけど、どうも仕上がりがしっくりいかないのよねえ。どうすれば良いかしら…」
私がその時ちょっとだけ彼女の着付けを直したところがあります。それは、きものの女性を見るとき、つい目が行ってしまう部分なのです。今日はそんな着付けのポイントについて考えます。
2.ここに目が行く!
あくまでも私の意見ですが、次の2つが注目ポイントです。
①帯揚の整え方
②背中のシワの処理
この2つがうまくいっていると全体がすっきり見えるような気がします。
特に会って挨拶をする時、顔の次に目が行くのは帯周りです。そこで帯揚を整えると効果的だと思いました。
衿元やお太鼓の形などは人それぞれ違って当然なので、私はあまり気になりません。
3.帯揚を整える
たとえばこんな経験はありませんか?
コートを脱いだらこんな状態になっていたり…
一見きれいですが、
せっかくの帯揚がクシャクシャになって帯に差し込まれていると、もったいない気がします。
そこで、一般的な帯揚の飾り方をご紹介します。
<帯揚の飾り方>
①帯揚を前に引きながら畳む
②片方は帯に休ませておいて両方整える
③ひと結びしたら、結び目になる部分がきれいになっているか確認する。
④形を崩さないようにふんわり結んでいく
⑤結んだ帯揚のたれている方を帯の中にしまう
⑥伸ばしながら適当な長さに折り、
⑦外側の帯揚の下に入るようにする
そうすることで薄い帯揚がふっくら見えます。ただし、縮緬や絞りのような厚手の帯揚の場合は膨らみすぎるので、小さくまとめて帯の中に入れることをおすすめします。
⑧出来上がり
帯揚の見え具合はお好みで。
年配の人ほど帯揚を見せない傾向にありますが、せっかく綺麗なものなので、少しは出したほうが良いと思います。
4.後ろも見られています!
次に、意外に注目されるのが後ろ姿です。
この点が洋装との違いでしょうか。どんなにカジュアルな装いでも(浴衣でも)きものは前と後ろで違う表情をみせるものです。
背中付近がすっきりしていると、お太鼓もきれいに見えます。
ところが…
きものの背中にたるみがあったり、
背縫いがシワで見えなかったりすると、たとえ帯が上手に締められていても印象がよくありません。
そこで、背中をすっきり着るために私が注意していることをご紹介します。
<背中をすっきり見せるためには>
①長襦袢の背縫いが背中の中心に来るように注意する
長襦袢がきちんと着られていれば、衿の重なりもうまく行き、きものも着やすくなります。
②紐や伊達締めは取りやすいところに置き、着付けの途中の動きを少なくする
かがんだり動作を大きくすると着崩れが起きやすいようです。
③紐やコーリンベルトでとめる度に背縫いを気にする
背縫いを中心に左右に伸ばし、さらに、たるまないように下に引っ張ることも忘れずに。
着付けの途中は背中にシワができやすいので、紐などを締める度に気にすることを習慣にしてしまいましょう。(こうすれば着てからの崩れはなくなるはずです)
最後に伊達締めをしたらもう一度チェックです。(帯を締めると、左右に伸ばすことが難しいので、この段階で決めて下さい)
④帯を締めたら最終チェック!
たるみがある時はお太鼓のたれ下のおはしょりをそっと下に引いて下さい。
外出先でも直せますが、その時に長襦袢の後ろ衿が飛び出さないように注意しましょう。
<後ろ姿>
派手な茜絞りを着たら、せめて後ろはすっきり若くみせたいものです。
絽のきもの。夏は特に暑苦しくないように、きもののたるみには注意しましょう。
背中の模様は結構目立つものです。
高校時代の恩師。自然で素敵な後ろ姿です♪
△染織研究家、随筆家の木村孝さん(1920~2016年)の後ろ姿(木村孝(2003)『和の美を育む きものことはじめ』集英社より引用)
「万筋」という細い縞柄の江戸小紋だそうです。刺繍の縫紋が美しく、ゆったりしていながらすっきり着付けられた素敵な後ろ姿です。
5.衿元は個性?
「帯揚」と「後ろ姿」に注目してきましたが、衿元はどうでしょうか?
はじめに述べたように、私はあまり気になりません。
半衿が左右対称でなくとも…
衿元や打ち合わせ部分が緩んでいても…
昔の日本人はもっと自然で、崩れた着方の人もたくさんいたので、年齢や体型に応じてゆったり着れば良いと思っています。
6.昭和の帯揚
前半に述べた帯揚の飾り方ですが、実は私が子供の頃は違っていました。もっとクシャッと、ぽってり飾っていて、帯揚の結び目の先を見せるように帯にはさんでいました。
ですから今回ご紹介したのは、「着付け教室」普及後の現代の感覚で<きれいに見える>方法です。
懐かしい昭和の帯揚についてなど、また機会があったら取り上げてみたいと思います。