今日は浴衣の季節に着る木綿と麻のきものをご紹介します。
1.きものと浴衣の違い
①ほとんど同じ?
きものと浴衣は形も同じで、はっきりとした違いは無いように感じますが、一番の大きな違いは浴衣は簡単な下着だけで着ることが多く、寝間着として着る場合は素肌に着用します。
一方きものは半衿の付いた長襦袢(または半襦袢)を内側に着てから着用します。
つまり、浴衣でも生地や色柄によっては襦袢を着ることで、きものとしての装いになるのです。
②コーマ地浴衣
コーマ地とはコーマ糸を使った平織りの綿生地のことです。
はじめはハリがありますが、洗濯を繰り返すと、やわらかくなっていきます。もっとも浴衣らしいもので、柔らかくなったら寝間着にぴったりです。
一般的にコーマ地の浴衣をきもの風に着ることはあまりないようです。
△ コーマ地浴衣を襦袢なしできた場合(私のお古を娘に着せました)
半衿の無いくつろいだ装いは、シンプルで夏にぴったりです。
けれどもコーマ地の浴衣を次のように着てみたこともあります。
日舞のお揃いコーマ地浴衣ですが、柄行きがきもの風に思えたのでこのような装いを試してみました。
半衿付き半襦袢+ステテコで着ています。(2016.7.31の記事参照)
ピンクの麻のちぢみ半衿を付けています。
△ステテコ(和装下ばき婦人物ステテコ クレープ生地 綿100%楊柳)(2016.4.17の記事参照)
白足袋に桐下駄を履いています。
③きもの風に着る浴衣とは?
きもの風に着られる浴衣としては、透け感のある素材や、着ていて涼しい素材が向くとされています。
- 綿絽
- 綿紅梅
- 絞り
- 縮
などです。
綿絽 めんろ
綿生地で絽目があります。コーマ地より涼しく着られます。
綿絽は遠くからではわかりませんが、
近くで見ると絽目があることがわかります。
綿紅梅 めんこうばい
太細の綿糸で格子状の畝(うね)を表したものです。生地が薄くサラッとしていて涼しいですが、透ける場合があります。
絞り
絞り部分の凹凸のせいか、涼しい肌触りで着心地が良いです。また、初めから生地がやわらかく感じられるのも特長です。
縮 ちぢみ
絞りと同じで肌触りが良く、涼しく感じます。
ただし、浴衣をきもの風に着るのにはなるべく新しいものが良いですね。家庭で洗濯していると綿製品はどうしても色が褪せて、くたっとなってきます。(それで着やすくなっていくのですが…)
シーズン後に専門店に手入れを頼むようにして大切に着れば、長くきもの風の装いを楽しめるかもしれません。
2.6月の片野絞り
①品川のお祭り
6月4日、東京都品川区の荏原神社祭礼(えばらじんじゃさいれい)に行ってきました。このお祭りは神輿を海中にかつぎ入れて練り歩くことから“かっぱ祭り”とも呼ばれています。
今年はお祭りの浴衣を新調したそうです。
お洒落な地色の浴衣は綿絽。帯も綿絽です。
麦わら帽子もお揃いだそうです。
皆さん楽しそうに神輿を担いでいました。
②片野絞り
当日着用したのは、藍染絞り作家片野元彦氏(1899-1975)の木綿のきものです。独自の技法の確立により「片野絞り」といわれています。
(片野元彦氏と作品については2015年8月15日の記事を御覧ください)
きものの下には絽の半衿が付いた麻の長襦袢を着ています。
そして白足袋に下駄を履いています。
③古い博多帯
6月上旬なので夏帯ではなく博多帯にしました。
帯は母が若い頃使用していたと思われる博多帯です。
シミがあったため、きれいな部分で二部式作り帯にしました。
↓
お太鼓部分の赤はかなり派手なので、ほんの少しお太鼓の下のラインを右上がりにして粋な雰囲気にしてみました。
ところが、締めてみるとあまり変わらなかったようです。
④小物
前は白無地の部分を出したので、堆朱の帯留めをしてみました。
お祭りは長時間歩くので、バッグは軽い和柄の浴衣用トートバッグです。(2016.7.9の記事参照)
下駄は鎌倉彫。欠けて諦めかけたものを塗り直して復活させたものです(2016.1.31の記事参照)。軽くて歩きやすいので疲れませんでした。
お天気に恵まれ、とても楽しいひとときでした。
3.7月の麻絽のきもの
前回和装ボディに着せてご紹介した麻絽のきものです。
柄が派手に思えて20年近く着用していません。浴衣にしか見えない気もしますが、透けるので以前からきもの風に着ていました。(2017.7.9の記事参照)
かなり透けます。だから涼しいです。
友人とのランチに着てみました。
科布の帯に合わせてバッグも科布にしました。渋さが増して、柄の華やかさが抑えられたようです。
母が大切に使っていた「出羽の織座 」製のバッグです。
無地の帯には帯飾りが欲しくなります。
浴衣か夏きものか、微妙な立場のきものですが、この先も遊び着として少し楽しんでみようかと思いました。