イベント訪問

能装束の虫干し その2

投稿日:

_MG_1304

能装束の虫干し見学レポートの続きです。

4.扇

_DSC1520

これらは本格的な能で使われる「中啓(ちゅうけい)」という種類の扇です。閉じていても中が少し見えます。すべて閉じられる扇は「鎮め扇(しずめおうぎ)」というそうです。

包んでいた紙を外し、このように並べて虫干しをしています。私たちもバッグや草履をこうして箱から出してやればよいわけですね。(なかなか実行できませんが……。)

①神扇(かみおうぎ)

【表】
_DSC1524

【ウラ】
_DSC1525

男性の神様や貴人が持つ扇です。

 

②修羅扇(しゅらおうぎ)

a.「松に日の出」
_DSC1527

勝修羅(かちしゅら)といい、「田村」や「八島」など戦に勝った武将の霊が主役の場合に使われます。

b.「波に日の入り」
_DSC1526

負修羅(まけしゅら)といい、「朝長」「実盛」「頼政」など、戦に負けて修羅道に落ちて苦しむ主役が持つ扇です。源平の戦いで敗れた平家の武将達が海で死んだことから、波のデザインになったそうです。

③鬘扇(かずらおうぎ)

_DSC1528

高貴な女性役が持つ扇。 表は唐人風の女性たち(玄宗皇帝と楊貴妃)が描かれ、裏は花車が決まりだそうです。

 

_MG_1313

裏面の写真が撮れなかったので、母が持っていた同じ柄の鎮め扇を撮影しました。

④狂女扇

_DSC1530

狂女役が専用で持つ扇。青色が美しく素敵な柄ですが、この青は寂しさや心の乱れを表しているそうです。裏も同じです。

⑤鬼扇(おにおうぎ)

_DSC1531

鬼、又は鬼女専用の扇です。赤地に大きな牡丹が一つ描かれています。鬼なのに綺麗な花で意外ですが、牡丹は古くから花妖(かよう)と言って鬼神が好む花なのだそうです。

きものでは、牡丹は富貴・幸福などを意味するおめでたい柄として好まれていますが、能では「鬼が持つ扇」のイメージになるのですね。裏も同じです。

⑥墨絵扇

_DSC1532

老人の役に用いられる扇です。

⑦天女扇(てんにょおうぎ)

_DSC1533

鬘扇の一種ですが、天女が専用に持つ扇だそうです。

 

5.小道具

①唐団扇(とううちわ)

_DSC1463

中国を題材にした能で使われ、扇の代わりとなる物です。

②鉄輪台(かなわだい)

_DSC1465

鉄輪とは鉄の輪に3本の足をつけたもの。能「鉄輪」では、捨てられた女が夫を呪う時に頭にかぶります。これだけ見ると可愛らしく少し滑稽です。

③水桶

_DSC1470

「松風(まつかぜ)」で松風,村雨(むらさめ)の姉妹が在原行平を思いながら汐を汲む桶です。

④勧進帳(かんじんちょう)

_DSC1471

「安宅(あたか)」で弁慶が読み上げる(ふりをする)勧進帳。もちろん白紙(無地)です。

⑤羯鼓(かっこ)

_DSC1473

胴の両側に革を張った小さな太鼓です。前腰に付け両手にバチを持って舞います。「放下僧(ほうかぞう)」「花月(かげつ)」などに用います。

⑥梵天(ぼんてん)

_DSC1479

「安宅(あたか)」の弁慶や義経家来の装束で使用するものです。

修験(しゅげん)者が着る法衣を篠懸衣(すずかけい)といい、鈴掛衣・鈴懸衣とも書きます。その上に掛けるのが結袈裟(ゆいげさ)ですが、それに付けるふわふわの房を梵天(ぼんてん)といいます。

_DSC1477

前は左右、縦に2個ずつ、背中には2個で計6個の梵天が袈裟に付けられます。

 

_DSC1462

このように小道具のほとんどは箱に入れられ蓋をあけた状態で廊下に整然と並べられていました。とにかく、蓋を取って中に風を通してやることが大切なのですね。

以上、武田修能館の虫干しで公開されていたものを大まかに紹介しました。

当日は他に鬘(かずら=かつら)類や能面も拝見しました。「能面の虫干し」は装束とは別に行われ非公開ですが、代表的な面(おもて)を見せて頂きました。

それらに関してはいずれご紹介するつもりです。

 

6.大切な「虫干し」

こうして見学をしてみると、能装束の虫干しは、能という芸能を後世に引き継ぐ為にも重要な仕事だということがわかりました。

後日、武田宗典さんのご親戚である武田祥照(よしてる)さん(20代の有望な若手能楽師)に虫干しについてインタビューしたので最後にご紹介します。

①何人で虫干し作業?

_DSC1494

武田修能館の虫干しには9人。 ”初日に干して、翌日片付け”……つまり二日間かけているそうです。

武田祥照さんのお宅では、虫干しは非公開ですが、4人。”朝干して夜片付け”を4日間繰り返して虫干しをしているそうです。

②虫干しの重要性

干すことだけでなく、所蔵の面装束の状態を確認すること、そして所蔵するものを「思い出す」為に必要なことだそうです。(これは私たちの着物の虫干しと同じですね。しばらく着ないと忘れてしまうこともよくあります)

③本当に手入れは干すだけ?

能面も装束も使用後は干して乾かすだけだそうです。

装束の下には真綿入りの胴着を着ているので汗はほとんど通らないそうですが、気になる埃などは濡らした布を絞ったもので少し表面を拭うくらい、とのことでした。

 

④装束に対する思い

「能楽師にとって、世の中に生き残って行く為に、舞台が城、仲間は兵力、面装束は武器」
と武田祥照さんは言います。
「だから先祖が苦労して手に入れてくれた面装束の手入れは大変重要です!」

と、語ってくれました。

15121801
▲ 武田祥照さん(公演のチラシより)

私たちにとって、着物は武器ではないけれど、「自分を守り元気付けてくれるもの」であるかもしれません。

頻繁に袖を通し、虫干しもしましょう!

この記事をシェアする:

読んで楽しかった! 役に立った! という方は、是非シェアをお願いします。

-イベント訪問
-, , ,

Copyright© きものを着たい! , 2018 All Rights Reserved.