イベント訪問

柿傳ギャラリーで大人の道草を ~茶の湯の裂地(きれじ)展~

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今日は最近足を運んだ柿傳ギャラリーと、その展示会を取り上げます。

柿傳ギャラリーは「新宿で大人が道草を」という言葉をテーマに掲げています。

1.柿傳(かきでん)ギャラリーとは

①京懐石・柿傳と柿傳ギャラリー

柿傳ギャラリーは東京・新宿東口にある安与(やすよ)ビルの中にあります。安与ビルの6~9階は京懐石・柿傳が入っており、柿傳ギャラリーは地下2階です。

柿傳ギャラリーは、昭和51年、東京の新宿東口で陶磁器を中心に展示・販売するギャラリーとして始まり、平成20年、場所を新宿駅隣に移しました。

建築家・橋本夕紀夫氏が設計した瀟洒で和モダンな建物で、「新宿で大人が道草を楽しめるギャラリー」*として和文化好きの人に親しまれています。

*「新宿で大人が道草を」は、昭和44年、「新宿・京懐石・柿傳」開業のときに、ノーベル文学賞受賞作家・川端康成氏から受けた言葉だそうです。

(参考:柿傳ギャラリーウェブサイト)

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△ビル外観(柿傳ギャラリーウェブサイトより)

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△安与ビルエントランス

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△安与ビル内の案内板

懐石料理の柿傳は表千家と深い関わりがあり、4階には茶道表千家同門会の東京支部があります。

6~9階のサロンや茶席では表千家社中の茶会の他、流派を超えて様々な茶会が開かれているようです。

②柿傳ギャラリーの店主・安田氏

柿傳ギャラリーは茶の湯に用いる陶器を中心に、陶磁器、漆器、染織、金工、絵画などの展示販売をしています。

ギャラリーの店主は安田尚史(やすだたかし)さんで、柿傳ビルを建設した安田善一氏の息子さんです。(「安与ビル」の名前は、安田善一氏の父、安田与一氏の名前に由来しています。)

「日本全国の作家を一人でも多くご紹介したいという想いから、1年に33回位の企画展を開催し、お客様に喜んでいただく事だけを念頭に、日々、商いをさせて頂いております。」

と安田さんはウェブサイトで述べています。

展覧会の開催にあたってはパンフレットや案内状の細部にこだわり、展示品の陳列方法も他とは違う見応えのある演出をなさるそうです。(このお話は展示会の作家・鈴木一弘さんに伺いました)

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△ 向かって左が安田尚史(やすだたかし)さん 右は兄の安田眞一さん(安与商事代表取締役社長)(『美しいキモノ』2016年秋号(株式会社ハースト婦人画報社)より)

③駅ちかギャラリー

柿傳ギャラリーの魅力の1つが、駅から近いということです。

新宿駅東口のルミネエストの並びにあるので、駅を出てすぐのルミネエストのエレベーターで地上に出ると、ビル1階エントランスが目の前に見えます。

地下2階ギャラリーまではエレベーターがあるので、駅の改札から階段の心配もなく、新宿の雑踏を回避しつつギャラリーに入ることができるのです。

また、ビル1階はガラス張りになっているので、展示品の一部を外から見ることができます。新宿駅東口に訪れた人が、ふらっと立ち寄れる「大人の道草」ギャラリーです。

 

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△外から見たところ

 

2.展示会について

① 鈴木一弘 茶の湯の裂地(きれじ)展

令和4年11月20日~25日の期間は、鈴木時代裂研究所所長、鈴木一弘さんの展示会でした。

以前当ブログで取り上げていますが、鈴木一弘さんは時代裂(じだいぎれ)*を研究・復原し、作品を制作する研究者であり作家でもあります。

*時代裂……室町時代から江戸時代にかけて中国、東南アジア、インド、ペルシャなどから輸入した染織品のこと。

名物裂(めいぶつぎれ)とも呼ばれ、武家や社寺、茶人に珍重されました。

金襴(きんらん)・緞子(どんす)・更紗(さらさ)・間道(かんどう)・竹屋町(たけやまち)など、数多くの種類があります。

 

鈴木時代裂研究所が復原した時代裂のほんの一部をご紹介します。

 

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△笹蔓手金更紗(ささづるできんさらさ)

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△格天井更紗(ごうてんじょうさらさ)

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△鶏頭手金更紗(けいとうできんさらさ)

柿傳ギャラリーでの鈴木さんの展示会は、私にとって初めてでした。

茶の湯に関連する展示ということで、復原された時代裂で作られた帛紗(ふくさ)や懐紙入れ、数奇屋袋、利休バックなどが華やかに展示されていました。

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△時代裂の小帛紗(展示会の案内ハガキ)

斜めの黒い部分は茶室の畳の縁。添うように小(古)帛紗(こぶくさ)が並んでいます。ギャラリー店主の安田さんのアイディアだそうです。

昔の茶人が強い憧れを抱いた舶来の裂(きれ)が復原され、現代の私達が鑑賞したり手にとって使うことができるのは有り難いことだと思います。

時代裂に関して過去の記事はこちら

②当日の写真

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△時代裂の小帛紗

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△竹屋町刺繍の小帛紗

 

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竹屋町刺繍の掛け軸と、時代裂がはめ込まれた花瓶 「青磁裂象嵌(せいじきれぞうがん)花瓶」

 

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△笹蔓手金更紗の帯やバッグ、大帛紗、マフラーなど

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△竹屋町刺繍のトンボ

鈴木さんのお父様の作品だそうです。

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△トンボの羽がすべて違う柄になるように刺繍されています。

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△鈴木一弘さんと

③当日のきもの

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茶系の訪問着に竹屋町刺繍の帯を合わせました。

 

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△帯の刺繍 拡大写真

 

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きものは蔦文様で、実(み)は金糸で刺繍されています。(竹屋町刺繍ではありません)

 

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△刺繍アップ

 

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帯揚はきものに馴染む色に、帯締めは赤紫系にしました。

 

3.これからの展示会

柿傳ギャラリー2022年12月のこれからの展示会をご紹介します。

①鎌倉彫

令和4年12月10日~15日

「鎌倉彫 三橋鎌幽(けんゆう)個展」

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(ギャラリーの案内状より)

②三川内焼(みかわちやき)

令和4年12月20日~26日

「みかわち焼 平戸松山窯 三代展」

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(ギャラリーの案内状より)

これから新宿に出かける予定の方は、ちょっと立ち寄って「大人の道草」をしてみてはいかがでしょうか。

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