毎年5~6月に着る紙布(しふ)の単衣に今年も袖を通しました。
今回はツバメのブローチを身につけたくて、この着物を選びました。
1.着物や帯のツバメ柄
①燕文(つばめもん)の季節
燕文はツバメをかたどった文様のことで、季節は春から初夏です。
燕は俳句では春の鳥ですが、夏の間活発に動く「夏燕」という季語もあるそうです。私の実感としては、やはりツバメは初夏から夏の鳥のように思います。
△波に燕。絽地に刺繍の帯(『きもの文様図鑑』より)
着物や帯の場合、初夏や夏の文様として波や流水と組み合わせたり、春には柳と組み合わせることが多いようです。
長く二股に伸びた特徴的な尾がスマートで美しいので、模様全体も洗練された雰囲気になります。
②紅型にも
ツバメは、琉球紅型や藍型の意匠としてもよく登場します。
△枝垂れ桜に燕
△桜と藤に燕
△<藍型> 牡丹、梅、柳に燕
(写真はいずれも『琉球紅型』青幻社2012年より)
△ 麻地に牡丹の花籠に燕文様 衣裳
△ 枝垂れ桜に流水菊文に燕 衣裳
(写真はいずれも『沖縄染織王国へ』與那嶺一子 新潮社2009年より)
躍動的なツバメは春から初夏への季節の移り変わりを表現したり、上下の模様をつなげる役割を果たしているように思われます。
③琉球絣の柄
琉球の絣の一つ、トゥィグヮー(鳥)文様はツバメを連想させます。
△芭蕉布のトゥィグヮー(鳥)文様(芭蕉総絣上衣 平良敏子作)
③燕が意味するもの
春になると南方から飛来し、害虫を食べてくれたり、つがいで子育てをするツバメを人は昔から大切にしてきました。
また、ツバメが来る家は栄える・商売繁盛・家庭円満・子宝に恵まれる・安産・豊作になる、などいろいろな良い意味があるようです。
きものにおいては、縁起が良い柄「吉祥文様」というわけではありませんが、身近で親しみのある柄なのだと思います。
2.ツバメのブローチを帯留めにする
①ツバメのブローチ
今回使いたいブローチはこれです。
安価ですが、ひと目で気に入り購入しました。
②丸いブローチは簡単
ブローチを帯留めにする方法は以前取り上げましたが、それらはみな左右対称の丸に近いものばかりでした。
丸いブローチ
付け方はこちらで紹介しています。
このブローチはピンが中央にないことと、羽の形のせいかバランスが悪く、同じように付けても安定しないと思われます。
そこで、次のようにやってみました。
③丸くないブローチの付け方
三分紐にゴムを巻きつける
用意するものはいつもと同じです。
ゴムを2個巻きつけます。
ゴムの上からブローチを付ける
ゴムを滑り止めとして使い、ゴムの上からブローチを付けます。
裏にピンを通す
裏側を固定するために、ゴムの一箇所にピンを通してからブローチを留めます。
出来上がり
滑らないので、しっかりついたようです。
3.紙布の単衣に合わせる
①紙布
和紙を細く切って糸にしたものを織った紙布(しふ)の着物です。タテ糸、ヨコ糸共に紙の糸ですが、タテ糸には絹糸も使われています。
裾模様は波で、袖にもあります。
この着物に関しては、こちらで詳しく紹介しています。
②博多帯
帯は単衣の季節にふさわしい博多帯をあわせました。
カジュアルですが白地でツヤ感があるので、黒っぽい紙布を明るくしてくれます。
③帯揚げと帯締め
帯揚げはタイシルクのスカーフを。
着物が暗い色なので帯揚げの半分は綺麗なピンクを出しました。
博多織の模様のゆらぎを「しだれ柳」に見立ててみたり…
全体でみれば「波に燕」といえるかもしれません。
人の往来が制限されている状況ゆえか、今回は飛翔の姿に魅力を感じてツバメのブローチを選びました。
このように着物は「着る人のいろいろな思い込み」で楽しむものだと思います。