縞のきものを楽しむ その1

2019年5月13日

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今日は縞のきものについて考えます。粋でかっこいいイメージの縞ですが、着こなすのはなかなか難しいものです。

今回は御召と久留米絣などを取り上げます。

1.縞とは

①縞の意味

縞について、まずは言葉の定義を辞書から引用します。

筋を平行に並べた、あるいは縦横に交差させた連続模様のこと。横縞と縦縞、斜め縞、格子縞がある。

文化出版局、文化女子大学教科書出版部編(2003)「ファッション辞典」第3版、文化出版局

②なぜ縞というか

漢字の「縞」は本来は白絹・練絹を意味します。

日本語には古くは縞についての呼称がなく、平行の縞模様を筋や条、段、また縦横に交差するものを格子と呼んでいました。

16世紀以降、舶来品として縞地の織物が流行し、これを「島渡り」「島物」「奥島」等と呼びました。これが転じて複数の線から成る文様を「縞」と呼ぶようになったということです。(参考:前掲書ウィキペディア

「縞」は和服に限らず誰もが使う言葉ですが、着物の歴史が込められた面白い言葉だったのですね。

③舶来の洒落たもの

舶来品の「しまもの」を当時の日本人はたいそうオシャレなものと感じていたのでしょう。
粋で洒落た縞は、現代の私達にも特別な雰囲気を持つ文様として受け止められています。

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△唐桟(とうざん)*の縞模様(『きもの草子』田中優子著 淡交社 2005年 より)

*唐桟…インド、マドラスの「サントメ(桟留)」から来たサントメ島(じま)・縞の木綿のこと

 

2.縞御召

①昔はあらたまった着物として

徳川11代将軍の家斉が好んで着たことからその名が付いた御召(おめし)ですが、昭和時代前半まで、地味な色で細い縞の御召は格が高く、黒い紋付きの羽織と共に略礼装として着用されたようです。

戦前に作られたものと思われる縞御召
△戦前に作られたものと思われる縞御召

紋付き黒羽織と略礼装の着物

同じ着物です(昭和20年代の写真)。紋付き黒羽織と共に略礼装として孫の七五三に着ています。

現代では黒羽織を合わせることがなく、あらたまった着物としての役割はないようですが、街着として縞柄を楽しむことができます。

②羽二重の染帯を合わせる

羽二重と染帯の着物

塩瀬羽二重に姉様人形が描かれた優しい雰囲気の帯を合わせました。

 

羽二重の染帯の着物

しばらくしまってあった若い頃の帯ですが、渋い御召にならまだ締められると思いました。

私の場合、男物のような細い縞には、このような甘い雰囲気の帯を選んでいます。(この着物は以下の記事で紹介しています)

③縞御召の羽織

着物(縞御召の羽織)

縞柄の羽織は強い印象になるので、明るい色合いの小紋に合わせました。

 

着物(縞御召の羽織)

羽織紐を白っぽいものにして旅館のどてらや半纏風にならないようにしたつもりです。(この羽織は以下の記事で紹介しています)

 

3.久留米絣の鰹縞

①難しい鰹縞

久留米絣の鰹縞

威勢のよい木綿の鰹縞(かつおじま)の単衣です。

鰹縞とは、カツオの体のように濃い色から薄い色まで藍色でぼかしをつけた縞文様のことです。(白がはいったり、藍以外の色もあるようです)

この縞は私にとってかなり難しい柄でした。

縞が太く、くっきりした鰹縞は、本来ならば粋にすっきり、格好良く着こなしたいところなのですが、身長も低い私ではもっさりした雰囲気になりそうだからです。

②黒地の木綿の帯で

黒地の木綿の帯

まず合わせたのは黒地の木綿帯でした。ごく日常着的な装いです。

 

黒地の木綿の帯

いろいろな刺し子刺繍の帯です。反物から自分で作り帯に仕立てました。(この帯は以下の記事で紹介しています。)

 

黒地の木綿の帯

きものと帯、帯締めを共通の色でつなげたことで縞の派手さが抑えられ、普段ぽくまとまりました。

ただ、オシャレ感が少なく物足りない気がしました。

③白地の帯で

白地の帯の着物

白地の帯で少しだけよそゆきの雰囲気を出しました。

 

白地の帯

紬の八寸名古屋帯で、大きな唐草文様です。

 

白地の帯とこけしの帯留め

タイシルクのスカーフ帯揚げと京焼のこけしの帯留めを合わせました。

こけしの登場で格好良さとは程遠くなりましたが、白の帯ですっきりして鰹縞は引き立ったようです。

④イカット風の帯で

イカット風の帯

イカット風の紬の帯を合わせました。

インドネシア伝統の絣であるイカットは色や模様も個性的で主張が強いのですが、鰹縞に合わせてもぶつかる感じはしません。

 

イカット風の帯

①、②の帯とは違い、視線が帯の方に行くような気がします。

このように趣味的で目立つ帯のほうが、全体の大部分を占める鰹縞とのバランスが良いように思いました。

 

イカット風の帯と水色の帯締め帯揚

帯揚と帯締めはおとなしく水色に揃えました。

粋な装いはできませんでしたが、鰹縞のように目立つ縞でも帯によって少しずつ雰囲気を変えることができたようです。

 

4.黄色地の縞の紬

黄色地の縞の紬

この縞は鰹縞と違い細くてあまり個性がないものですが、明るく柔らかな雰囲気です。
単衣で着ています。

①更紗鳥の帯で

黄色地の縞の紬

紬の名古屋帯を合わせました。鳥と生命樹のような植物の更紗文様です。

 

黄色地の縞の紬

着用するまでは柄が合うか心配でしたが、模様いっぱいの帯でも単調な細い縞には違和感なく馴染んだようです。

 

黄色地の縞の紬

帯締めは縞の緑色から取りました。

②紅型の帯で

黄色地の縞の紬と紅型の帯

細かい紅型の紬の帯を合わせました。

 

黄色地の縞の紬と紅型の帯

これは紅型のうち、型紙を二枚又は三枚重ねて染める朧型(おぼろがた)「うぶるーがた」の帯です。

 

黄色地の縞の紬と紅型の帯

帯のひし形と、きものの縞が直線同士で少しぶつかっていますが、いつもは地味になるおぼろ型の帯を華やかに装えた気がしました。(この帯については以下の記事で取り上げています。)

このように間隔のあいた細い縞は、帯の柄にはこだわらずに取り合わせができ、意外にどんな帯でも合いそうです。

 

続く――

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