羽織・コート

刺し子刺繍の訪問着と加賀友禅のコート

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1月上旬、刺し子刺繍のきものを着て歌舞伎を楽しみました。鬘帯縞文の帯と、加賀友禅の道行きコートも一緒に取り上げます。

1.刺し子刺繍

①刺し子刺繍とは

刺繍の一種で、布地に糸で幾何学模様等の図柄を刺繍して縫いこむもの。保温、補強等のため麻布や木綿布に木綿糸で補強したものが始まりとされています。

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△木綿の刺し子刺繍の帯

②こぎん刺し

有名な刺し子技法には津軽の『こぎん刺し』があります。

津軽地方は寒冷地のため綿の栽培ができず、昔の農民は麻の野良着を着ていました。厳しい冬を越すには保温性に欠けるので麻布を重ねて麻糸で布目をびっしり刺すことで保温効果や耐久性を高めていたのです。

木綿糸が入手できるようになった明治以降も農家の女性達は工夫を凝らして藍色の麻布に白い木綿糸で精巧なこぎん刺しに精を出したそうです。

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△「西こぎん」(弘前市から西側、中津軽一帯の農村で作られたもの)
出典:木村孝(2002)『染め織りめぐり』JTBキャンブックス

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△母が使っていたこぎん刺しのバッグ

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△刺しの拡大。こぎん刺しにはあたたか味があります。

2.刺し子刺繍の訪問着

①訪問着として

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厳しい寒さに耐えるために始まった<刺し子刺繍>を、晴れ着である訪問着に施したものです。
遠目では柄や刺繍がわかりにくく無地にみえます。

 

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きもの全体に刺し子刺繍が見られます。

 

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刺し子は単体では地味なものですが、光沢のある霰(あられ)地紋の綸子地に刺繍されているのでツヤと華やかさがあります。

 

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濃いピンク色、二重の刺し刺繍で牡丹の花が描かれています。

②着用

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3年ぶりに着ました。

 

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裾までの総柄刺し子刺繍ですが、模様は近寄らないとわかりません。

 

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17年前娘と一緒に。

二人で並ぶ時は、きものの模様がはっきりしないほうが引き立て役になれて良いです。この頃の帯は、まだ振袖用の袋帯を合わせています。

 

3.鬘帯縞文の帯

①鬘帯の柄

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帯は京都・若松華瑶(わかまつ かよう)製の「鬘帯縞文(かずらおび しまもん)」です。

 

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能の鬘帯*をモチーフにした唐織です。

鬘帯…能装束のひとつで、面をつける前に鬘を押さえるように鉢巻状に頭に巻き、後ろで結ぶ細い紐状の布のこと。女性の役専用です。

 

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△鬘帯(武田修能館所有・2015年12月13日の記事参照

②能装束・行司装束として

初代若松華瑶の孫で、二代目若松華瑶の長女・若松いつみさんのお話によると、能を愛し、自身も能を演じた初代若松華瑶は、唐織の能装束を数多く制作し、新しい図柄の創案にも尽力しました。

この文様もはじめは能装束として作られたそうです。

その後、相撲の行司の装束としても制作しました。若松華瑶は相撲も好きで、昭和33年22代木村庄之助から昭和49年木村玉光に至るまで、29着の自作の装束を贈ったそうです。

この「鬘帯縞文」の装束は受け継がれ、現在は6代目木村玉治郎が着用しています。

また縞文様は七色で、厄除けの意味があるそうです。

 

4.加賀友禅の道行きコート

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昭和40年代の丈ですが、春を感じさせる柄が好きで毎年正月以降着用しています。

<柄のアップ>

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昭和時代の友禅作家・水野 博氏(1918~1979)の描いたものです。

 

5.鳥の柄のバッグ

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酉年のお正月なので鳥の柄のバッグにしました。琉球紅型の振袖の袂(たもと)部分を切って再利用したものです。

このバッグは30年以上愛用しています。

 

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△中振袖のきもの

袖の柄が上は松と梅、下は鳥、というようにはっきり分かれていたので、カットしても違和感はあまり無かったようです。

袖を切ったあとは小振袖として使用し、その後娘に着せました。

 

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△肩揚げをして娘(当時10歳)に着せた写真

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△その10年後にも着せています

松と梅の柄の袖。長い袂より気軽に使えて良いのですが、全体が派手な柄だけに娘もあと何年着られるでしょうか……。

 

6.市川右團治襲名披露公演

1月9日、市川右團治襲名披露公演(新橋演舞場)に出かけました。

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<東京歳之市羽子板商組合>制作の羽子板「矢の根」が、新春らしくロビーを華やかに演出していました。

 

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素敵な箱に入った襲名記念クッキーです。将来楽しみな歌舞伎界の星、初舞台の市川右近くん(6歳)の姿が可愛らしいです。

日本で初めてクッキーを販売した老舗、泉屋東京店のクッキー、個包装なので出来たての風味がそのままです。後日芝居の余韻に浸りながら味わうクッキーはまた格別でした♪

壽新春大歌舞伎は1月27日まで続きます。

 

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