手入れ

【解説】きものを脱いだあとはどうする?

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「きものは着てもいいけど、後片付けが大変で……」という話をよく聞きます。

みなさんはどうですか?

今日は私のやり方をご紹介しながら着物を脱いだあとのことを考えます。

1.干して湿気を取る

①脱ぐ前に必ず手洗い

外出先から帰宅したら、コートは脱がずにすぐに手を洗います。

コートを着ていないときは、水で着物や帯を濡らさないように特に注意します。(感染予防には手首まで洗うのが良いですが、きものの時は袖口を濡らしてしまうので手だけにして、気になる時は長襦袢を脱いでから、また洗い直してください)

とにかく「きものに触れる前はいつも手を洗う」という習慣を身に着けたいものです。

②脱いだらハンガーに

  • コートを脱いでハンガーに掛ける。
  • 帯締め、帯揚げ、帯は衣裳敷か広げた風呂敷の上にいったん置く。
  • 伊達締め、腰紐も衣裳敷に。
  • 脱いだ着物はすぐハンガーに掛ける。
  • 長襦袢もハンガーに掛ける。(きものと一緒に脱いでそのままハンガーに掛けるのはNG)
  • 衣裳敷に置いた帯のシワを伸ばしながら、ハンガーに掛ける。
  • 帯揚げ、伊達締め、腰紐は湿り気を感じる場合はハンガーに掛ける。

このように、ほとんどすべてをハンガーに掛けて風を通します。

補正パッドなども洗わない場合は干しておきます。

着物をかけるハンガーは和装ハンガーが望ましいですが、場所を取るのでコート、襦袢、帯は洋服用のすべらないハンガーがおすすめです。

 

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△場所を取らない着物ハンガー

これは着物ハンガーとしては短くて軽いものです。

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△すべらないハンガー

③風を当てて湿気を取る

そのままハンガーに掛けておけばよいですが、小さい首振り扇風機を1~2時間回しておくと湿気がはやく取れます。

着物や帯は半日~1日干しておきます。小物類は早めにしまっても大丈夫です。

普段着で頻繁に着るものは2時間ほどで畳んでしまうこともあります。

部屋に直射日光が当たらないように、また、部屋の証明がLEDライトでなく蛍光灯の場合は紫外線に注意してください。

 

2.洗濯など

①肌着の洗濯

時間がある場合は、汗取り襦袢、肌着スリップ、足袋はすぐに手洗いします。

その日使用したハンカチやタオル、手ぬぐいなども一緒に手洗いすると、色あせがなく長持ちします。
(私はおしゃれ着用洗剤のエマールを使用しています)

足袋の汚れがひどい時は予洗いしておき、洗濯機で他の洗濯物と一緒に再度洗うときれいになります。

②半衿の手入れ

半衿を毎回付け替えることはしません。

汚れがひどくなければ、少しケアして次回も使います。

汚れが目立たない場合

  • 正絹(シルク)
    ガーゼにベンジンを含ませたもので肌があたった部分を叩くように拭き取ります。
  • ポリエステル
    エマールを垂らした水にガーゼを浸し、軽く絞ってから衿をふきます。次に水だけで絞ったガーゼで拭き、乾かします。

汚れが目立つ場合

  • 正絹(シルク)
    外して手洗いします。
  • ポリエステル
    洗える襦袢に付いている場合は襦袢ごと洗濯(洗濯機でもOK)。絹の襦袢なら外して手洗いします。

③袖口

きものの袖口と長襦袢(絹)の袖口は、ガーゼに染み込ませたベンジンで拭きます。

毎回ではなく、長時間の着用で気になるときだけ行っています。

④きものブラシ

湿気が取れたら、コート、きもの、帯にブラシを当ててホコリを取ります。

 

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△着物ブラシ

ブラシをかける時は軽く、1~2回払う感じがよいと思います。

手首のスナップをきかせて、こすらないように「払う」こと。”払い飛ばす”感覚です。

以下の順でブラシをかけます

  1. 衿、肩、袖、身頃……と布目に沿ってかけていく
  2. 裾は横方向に丁寧にかける
  3. 裾は裏側も横方向に
  4. 裾の縫い目にもかける(縫い目から虫が入ることがあるので)

こちらでも取り上げています。

 

3.たたむ

最後にたたんで収納するのですが、この作業を一番面倒に感じる人が多いのではないでしょうか?

私は子供の頃からのきもの好き(オタク?)ですので、次のような観点から着物の片付けを楽しんでいます。

①きものを眺める

掛けてあるきものを眺めるのは楽しいです。

着ているときには気付かなかった柄の配置や模様の魅力、絣の面白さなどを客観的に見ることができます。

その延長で、脱いだ着物に汚れやシミがないか眺めながらチェックします。

ここでシミや汚れを発見した場合は、なるべく早めに専門店に相談するのが無難です。

水を付けすぎたり、強くこすることは絶対避けてください。

②きものに触れながら思い返す

きものは衣裳敷の上に広げ、状態をチェックしながらたたみますが、同時にその日の出来事や会話、鑑賞した演奏、舞台などを思い起こしながらたたむと楽しい時間になります。

 

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衣裳敷の上でたたみます。

 

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たとう紙に収納します。

③アイロンを当てて気持ちをアップ

必要な場合はあて布をしてアイロンでシワを取ります。

着物や帯は掛けておくだけでシワが取れる場合もあります。

また、少し気になってもたたんで収納すれば元通りになることも多いので、アイロンは必須ではありません。

けれども、アイロンを当てるときも楽しむことができます。きものや帯のシワが取れ、元のようにピンとなるのを見ると気持ちがアップします。

ついでに帯揚げ(絞り以外)や伊達締めにアイロンを当ててシワを伸ばすと新品のようになり、次に使うのが楽しみになります。

アイロンは「スチーム」を使いません。頑固なシワは、あて布に霧吹きをしてアイロンを当てます。(この時、霧吹きの水がきものに直接かからないように注意してください)

 

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△シワを伸ばして収納する伊達締め

伊達締めはアイロンを当てなくても巻いたり三角畳みにしておくとシワが伸びます。

④思い出

私も子育て中、落ち着いて着物をたたむ余裕がない時期もありました。

カジュアルな紬や小紋などはササッと適当に収納していましたが、よそゆきできちんとしまう必要のある着物は、その日実家に預けていた子供を引き取る時に脱いだ着物を置いていき、母に片付けを任せてしまったことも何度かありました。

母は「若い人のきれいな着物を畳むのは楽しいものよ♪」と喜んで引き受けてくれたのですが、年齢を重ね、その気持がだんだんわかるようになってきました。

母は華やかな着物に触れることで気分が高揚し、エネルギーを得ていたのだと思います。

 

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△母に子供を預けていた頃

 

4.手入れに出すタイミングは?

①人それぞれ

きものは汚さないように着ることが重要で、そのためには何気ない動作でも洋装とは違う動きや注意が必要になります。

また、汗取り肌着や補正パッドなどで汗が着物に通らない工夫をし、シミを作らないように着ることで、丸洗いの頻度を抑えることができます。

丸洗い(生洗い)は有機溶剤を使ったドライクリーニングなので、洋服も同じですが、生地へのダメージがあるのです。

私の場合は、衿や袖口の汚れが気になり出した頃を目安に丸洗いに出し、紬のきものは裾が切れたりしたら洗い張りして仕立て直しをしています。

着物の手入れに関しては人それぞれで個人差が大きいです。

次に私の知り合いの例をご紹介します。

②着たらすぐ手入れに出す友人

彼女は多忙で土日も仕事で忙しく、めったに着ないけれど、きものが大好きです。たまに着るのは訪問着や付下げなどよそゆきのきものです。

帰宅して脱いだらハンガーにかけて陰干し。その後、きものと襦袢は近くの呉服店に持っていき、手入れ(汗抜きや丸洗い)をしてもらうそうです。

そうすると自分で畳む手間も省けます。

その呉服店とは半衿付けから取り合わせのアドバイスまでしてもらえる付き合いなので、多忙でも着物を楽しむことを可能にしています。

③季節の終わりにまとめて出す友人

仕事(着付け講師)でほぼ毎日きもの(柔らかものも多い)を着るので、何回か着たものはたとう紙に入れずにそのままタンスに入れておき、シーズンの終わりに着たものすべてを手入れに出すそうです。

だから、たとう紙に入っているきものは手入れ済みのきれいな状態のものだけ、とのことでした。

 

今日はきものを脱いだあとのことを考えました。

確かに手間と時間がかかりますが、きものと向き合える大切な時間でもあります。

靴好きの男性が履くだけでなく靴磨きも趣味とするように、着物の後始末にも楽しみを見い出してみては如何でしょうか?

 

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