今日はおはしょりの厚みに注目したいと思います。着方によってどのくらい違いが出るのでしょうか……?
第1回と第2回の記事はこちら↓
1.おはしょり 一重と二重
①おはしょりを一重にする(前回のおさらい)
前回トルソーでご紹介したおはしょりを一重にする方法を復習すると
<腰紐を締める>
腰紐(腰ベルト)は斜めに締めています。
<下前の処理をする>
(上前をはずして撮影しています)
下前を斜めに折り上げます。
コーリンベルトを留めて折り上げた上前を抑えるようにしながら
前に回して上前をはさみます。
出来上がり
帯を締めて横から見ました。
スッキリしています。
②二重にした場合
下前を処理せず、二重のまま下ろしてみました。
コーリンベルトは使わずに紐で抑えて
伊達締めをしました。
横から見るとおはしょりは少しふっくらしています
帯を締めるとこんな感じです。
横から見ました。
③比較
トルソーに着付けた場合は縮緬の生地でもそれほど変わりないように思います。
2.実際に着て比較する
私は子供時代~20歳頃までは自分で着るときのおはしょりは二重でした。
それがいつ頃からか下前を折るようになりました。美容院で教わったのか、雑誌か本で見たのだと思います。
同じ着物で実際に比較してみます。
①おはしょりを一重にした場合
普段の着方と同じです。
横から見たとき、おはしょりが飛び出していないところがスッキリ見えるのかもしれません。
②二重にした場合
同じきもので、おはしょりを二重にしました。
厚みがない結城紬です。
ややぽってりしています。
写真を撮る場合など、手は前で合わせることが多いので、二重でも問題はないようです。
③比較
今回はあまり違いが見られませんでした。
もっと生地が厚いきものでは大きな違いが出るかもしれません。
3.まとめ
①どちらでもよい
おはしょりについて考えてきましたが、おはしょりはシワがなく自然に下りていれば、斜めでも、厚くてもよいのではないかと思いました。
特に普段のお出かけではあまり神経質にならなくてもよいのではないでしょうか?
②自然なおはしょりでもきれいに見せるためには
おはしょりを頑張って一重にしなくても、次のような点を注意すれば良いと思います。
- 腰紐をするときに、きものにシワが寄らないようにする
(おはしょりがボコボコするのを防げます。腰ベルトが簡単です) - 伊達締めをする前に手をおはしょりの中に入れて整え、上前と下前がきちんと重なるようにする
- 着丈に注意し、あまり裾が短くならないようにする
(厚いおはしょりがたっぷりと出ているのに、きものの着方が短いと、全体のバランスが悪くなります)
③私が好きなおはしょり
大正から昭和初期に活躍した画家、高畠華宵(たかばたけ かしょう)(1888 – 1966)が描いた女性です。(弥生美術館・高畠華宵の絵葉書より)
私にはこの絵がとても素敵に見えます。おはしょりのぽってりしたところが女性らしい柔らかさを強調しているようで、美しいからです。
このような柔らかな着方を自然にしていた昔の女性が羨ましく思えることもあります。
(高畠華宵については、以下の記事で取り上げています。)
おはしょりを3回にわたり取り上げました。長い間お付き合いいただきありがとうございました。