お気に入りのきものはいくつになっても着たいものです。
今日は、以前の記事「50代でも赤系のきものを着られる?」(2014年10月11日の記事)の第二弾です。
1.鴾色(ときいろ)のきもの
①山繭紬*(やままゆつむぎ)の単衣
山繭の光沢部分が流水文様になっています。
*山繭紬…天蚕(ヤママユガ)の繭から採った糸を用いて織った紬。光沢があり、普通の絹糸と交織して染めると独特の模様が出ます。
無地のきものに属しますが、この涼しげな流水文様が大好きでした。
②10年前
このきものは20歳頃から着ていますが、この写真は10年前のすでに40代。それなのに平気で小物に赤を使っているのにびっくり。
同じ物を気続けていると、知らないうちにコーディネートが固定化され、中身が年をとっていることに気付かなかったのかもしれません。
③イカット風帯
派手になっても単衣のきものには裏地がないので、八掛けを地味にするという方法は使えません。
このように地味な帯で落ち着かせるしかないようです。
ややざっくりした紬のイカット*風帯です。
イカット…糸を染めておいてから模様を織り出す絣織りの布のこと。もともとはマレー語の「縛る」「結ぶ」などを意味する言葉に由来するそうです。本来はインドネシアやマレーシアの織物をさします。
前の柄をいろいろに出したかったので、最近作り帯にしました。
④ポイントを別に作る
後ろ姿は顔も見えないし、お太鼓が地味ならば問題はないのですが、前は帯の割合が少ないので、どうしてもきものの華やかさに目が行ってしまいます。
そこで……
ここに目が行くようにしました。
英国ウェッジウッドのブローチです。ちょっと変わった組み合わせで存在感があるでしょう?
夏用の網代組紐(メッシュ)なので、ブローチの針はそのまま通しています。
普通の紐の場合はこちらを参考にしてください。(2015年8月2日記事)
こうすればきものの鴇色より、帯まわりのグレーと水色に視線が行くような気がしました。
2.赤系更紗
①更紗文様の紬
以前にも取り上げた更紗の単衣です。
20代の頃は茶色や紫色、そして更紗の柄を地味だと思っていましたが、今は赤が目につきます。
けれども着心地の良さが忘れられず、一昨年から袖丈を詰めて再び着始めました。
②紬の帯
9月の暑い日だったので、白地の紬を選びました。
白檀(びゃくだん)の帯留で渋さを出しました。
やはり帯留と紐の紫がトーンダウン効果をあげているようです。
③綴れ織りの帯
無地の綴れ織りを合わせてみました。茶系の印象が強くなります。
お太鼓の茶色で、背中の赤も目立たないようです。
④小物類
帯締めは紫系に。
帯飾りは木彫りの雀。飛騨高山の一位一刀彫(いちいいっとうぼり)です。
唐草模様の紫の手提げと……
紫系の鼻緒です。
このように、注目してほしい色(茶と紫)を強調して、赤の印象が弱くなるようにしてみました。
3.茜
前回ご紹介した南部絞り・茜染めのきものは木綿です。浴衣に近いものだと思えば赤いことはあまり気にしなくてもよいのかもしれません。
でも……
または
で茜色の赤さをおさえるようにしています。
4.紗の羽織
赤系のきものに羽織を着てみたらどうでしょうか?
①紗の黒羽織
黒い紗の羽織です。
風通紗(ふうつうしゃ)といい、表裏二重組織になっていて、裏は赤です。昭和時代の羽織です。
②更紗に着てみる
黒の印象が強いので、きものの赤は気になりません。
そばに寄ると柄がよく見えます。
帯が透けて見えるところが魅力です。
紗の黒羽織を着ている人を近くで見ると、とても素敵です。肌寒い時や冷房対策に羽織っている時は安心感を与え、初夏や初秋の少し汗ばむ日には、とても涼しげに見えます。
黒い紗の魔術かもしれません。
羽織の裏です。
③単衣の黄八丈にも
黄色の印象が強い為か、地味なようで派手さを感じる黄八丈ですが、黒の紗羽織を合わせてみました。
(半襟は麻の葉柄のハンカチです。2016年6月11日の記事参照)
羽織によってずいぶん落ち着き、気分もほっとしました。
このように、派手な単衣のきものに紗の羽織を合わせると、かなり印象が変わります。
紗の羽織は4月後半から10月まで、塵よけとしても活用できて便利です。
大人ならではのお洒落かもしれません。
5.一番の注意点
このように、派手になった単衣を工夫して着てみました。年齢を気にせずに好きな色を着ることは、現代のきものの楽しみ方の特長だと思います。
華やかな色を身につけると元気になるように感じますよね。ですから私はまだまだ赤系を着ていくつもりです。
皆さんにも挑戦してほしいと思います。
その時に重要なポイントはただ一つ、姿勢に気を付けることです。
若々しいきものを着るときは、いつもより背筋をのばして明るい表情を心がけましょう!