今日は前回「紙衣(かみこ)を考える その1」の続きで、紙衣の帯をご紹介します。
5.着用例
①綿薩摩(めんさつま)のきものに
木綿の綿薩摩*に合わせました。
*綿薩摩…宮崎県都城市 東郷織物にて製作されている木綿の絣で、薩摩絣とも言います。
大島紬と同じ技法により作られる織物で、手触りは従来の素朴な綿織物とまったく違い、ふんわり、しっとりしています。木綿の中でも、一番細い糸を使って織られているため絹のような光沢や風合いがあると言われています。
このきものについては2014.11.1と2018.3.11の記事で取り上げています。
帯を初めて見た時、「紙で、しかもこんな強い紫色!?」とびっくりしましたが、着用すると結構しっくりきものに合っています。
和紙を揉むという手間のかかる作業が、きものに馴染ませているのかもしれません。
<帯揚・帯締>
違う系統の色で取り合わせをしようかとも思いましたが、今回は帯を主役にしたかったので、薄いピンクや薄紫の同系色にしました。
少し冷たい感じになってしまったでしょうか。でも涼しい雰囲気ではあると思います。
揉まれた紙衣紙のシワ感と、それに施された単純な絞りが気に入っています。
②紙布(しふ)のきものに
昨年の5月中旬、黄土色の紙衣帯を、紙布*の単衣に合わせました。
*紙布…薄手の和紙を細かく裁断し紙縒りにして、糸の代わりに用いて織ったものです。
紙布のきものは紙衣と違いしなやかさがありますが、サラッとした感触は和紙特有のもののようです。
<帯揚・帯締>
紙布も紙衣もツヤがないので、帯揚は光沢のある明るい色を。帯締は茜絞りで茶系の取り合わせに赤色をプラスしました。
紙布のきものに関しては2017.5.14,5.21の記事で取り上げています。
③紙衣と紙布の違い
紙衣と紙布は、和紙が原料でも作り方が違うので全く別のものです。大きな違いは風通しです。
紙布は風通しがよく、軽く涼しく、肌に付かないさわやかさがあります。
生地が厚めなので盛夏の薄物とは違いますが、蒸し暑い単衣の時期には最高の着心地です。(冷房に弱かった母は、夏も好んで着ていました)
反対に紙衣は防寒具として古くから用いられてきました。紙は繊維が詰まっているため暖かいのです。
紙衣は冬のもの、紙布は夏のものと言えるのかもしれません。また、紙衣は洗濯が出来ませんが紙布(しふ)は出来ます。
6.着用の感想
紙衣の帯は、揉んであるとはいえ和紙特有のハリがあるので、着用するときは体に巻いたらパタンと折っていく作業を繰り返します。
和紙の人形になったような…布の帯では味わえない不思議な感覚でした。
けれど、締めてしまうとその軽さに驚きました。帯を体に巻いている気がしないので、自然に動きも楽になっていました。
ただ、風を通さないので軽さのわりに涼しくなく、これも不思議な感じでした。
和紙は絹・麻・木綿と並ぶ きものや帯の素材であったことを実感でき、改めて昔の日本人と和紙の結びつきの深さを知りました。
7.白石和紙の紙子バッグ
①白石和紙とは
宮城県白石市で作られる和紙のことです。江戸時代から白石の特産品で明治時代まで盛んに作られました。強度と耐久性に優れ、紙子(かみこ)*、紙布(しふ)にも用いられました。
(2017.9.10の記事参照)
*紙子…紙衣と紙子は同じですが、白石和紙では紙子と表記されているようなので、バッグに関しては紙子とします。
②拓本染紙
拓本染(たくほんぞめ)紙とは、胡桃(くるみ)、黄蘗(きはだ)、浜茄子(はまなす)などの天然の染料で薄く染めた和紙を、模様を彫った版木(はんぎ)にたたいて密着させ模様を打ち出したものです。(一部化学染料も使用します)
白石の古い紙子模様を活かした拓本染紙は名刺入れやふくさ入れ、ハンドバッグや印鑑入れなどに加工されています。
以前もご紹介しましたが、「佐藤忠太郎紙子工房」では以下のような拓本染紙を作っています。
昨年、故佐藤忠太郎氏の次男の奥様、佐藤文子さんにお願いして、2種類の紙子ハンドバッグを作っていただきました。
③花菱文・桜の模様
<花菱文のバッグ>
夏の絽のきものによく合う水色です。
花菱の地紋にシルバーが入っています。
<桜の模様のバッグ>
桜模様自体は可愛いですが、
バッグの形になると落ち着いたものになりました。
濃い縮緬の重たい雰囲気を和らげます。
訪問着にはよそ行きの感じを出しています。
綿のきもの+紙衣の帯に合わせると、紙のバッグもカジュアルに見えます。
桜の季節にはもちろん持ちたいバッグです。
紙子のバッグは容量が小さいので手提げと合わせて持つことになりますが、本体が大変軽いので2つ手に持っても負担を感じません。
ただし雨の日には使用を控えています。
8.美濃和紙のソックス
和紙を使用したソックスがありますので、ご紹介します。
①美濃和紙使用
Amazonで1,216円でした。
袋から出してみると手袋のようです。
品質は綿、ポリエステル、指定外繊維(美濃和紙糸)、ポリウレタン。
日本製です。
②特長
商品説明による靴下の特長を挙げてみます。
<消臭機能>
「後加工」で消臭対策を施している靴下と違い、消臭機能のある糸を「直接裏編み」しているため、洗濯しても、その消臭機能は保たれる。
<超軽量>
他の繊維と比べても、美濃和紙は非常に軽く、比重は麻糸の約1/3。
実際に計ったら、両足で27gでした。
<強度>
繊維を縦横無尽に高い密度で積層させてつくられている。
また、劣化の原因となる摩擦が起きにくく、熱にも強いため、他の素材に比べて強度が高い。
<心地よい肌触りと清涼感>
優れた吸湿性と高い放湿性のため、ムレにくくサラッとした清涼感を感じることができる。
また、何度履いても毛玉ができにくい。
<無縫製のホールガーメント採用>
縫製とは違い、立体的に編み上げる「ホールガーメント」ならではの包み込むようなフィット感がある。
つま先にも縫い目がないようです。
③着用の感想
おおむね説明通りでした。肌触りが他の靴下と違いサラサラとして気持ちがよいです。
つま先の縫い目は靴を履くと痛くなることがよくあるので、その点ではストレスフリーでした。
洗濯をしたところ型崩れもありませんでしたが、丈夫さに関してはまだ分かりません。
つま先やかかとの強度は、長く履いてみないとわからないと思いました。
これから夏に向けて使用するつもりです。