今日はきもの姿をエレガントに見せるクラッチバッグを取り上げます。
1.クラッチバッグとは
①クラッチバッグ(抱えのバッグ)
クラッチバッグ(英: clutch bag)とは、肩ひものついていない小型のハンドバッグのこと。トートバッグなど大きいハンドバッグの中に入れて持ち運ぶ事もあるため、セカンドバッグとも呼ぶ。
持ち手が付いていないので、抱え込んだり、握り込む様にして持つ。アクセサリー的な意味も含めて、女性が持つことが多いが、これは女性の礼装(ドレス)にはポケットが付いていない事がほとんどのため。最低限の化粧品やハンカチなどを入れて携帯する。
(ウィキペディアより)
クラッチバッグのことを、私は子供の頃から「抱えのバッグ」と言っていました。母がよく手にしていたのを思い出します。また、子供の頃私も使用していました。
②憧れのイメージ
昭和50年代以降は和装の減少で、抱えのバッグは結婚式やパーティー、または喪服用の黒など、礼装用が主流になり、普段用はあまり見かけなくなりました。
けれどもそれ以前は、大人の女性が街着に抱えのバッグをあわせるのはごく普通の光景で、子供心に素敵だな…と憧れていました。
やはり和装には荷物を手に提げるより、バッグや風呂敷包みを抱えて持つ姿の方が美しく見えるのではないでしょうか?
△私の小学校入学時。母は黒羽織に抱えのバッグです。
(昭和40年代)
昭和時代のきもの雑誌でもクラッチバックがよく登場します。
△『美しい気つけと帯結び』主婦の友デラックスシリーズ(主婦の友社・昭和54年1月発行)より
派手な道行きコートと抱えのバッグが昭和っぽいですね。
③実際はポーチやセカンドバッグとして
現代人はなかなかクラッチバッグひとつでは外出できませんね。実際は手提げを持ったり、買い物の紙袋を提げたりして、クラッチバッグの他にも持つことになります。
結局はポーチやセカンドバッグのようになってしまいますが、きものに合わせていろいろなクラッチバッグを持つのは楽しいものです。
革などの大きいバッグはなんでも入って便利かもしれませんが、私は苦手です。
重たいバッグを手首に懸けるときは、きものの袖口が気になりますし、膝の上に置く時もきものを汚さないか不安になるからです。
2.フォーマルやパーティー用のクラッチバッグ
今ではフォーマルシーンでもクラッチバッグをあまり見かけなくなりましたが、以前は晴れ着には欠かせない物でした。
少しご紹介します。
①佐賀錦
母から譲られた佐賀錦*のクラッチバッグ
*佐賀錦(さがにしき)…金箔・銀箔・漆を貼った和紙を細かく裁断したものを経糸に、染めた絹糸を緯糸にして織り上げたものです。
小さいので立食パーティーでは、帯のお太鼓の間に入ります。両手が空くので楽です。また、和紙を経糸に使用しているからか、見た目よりも軽いのが特徴です。
子供の頃に使用したもの
小学生の私
娘が小学生の頃。同じクラッチバッグを使用。
佐賀錦は丈夫なことと、よそゆき用なので長持ちします。三代は充分に持てそうです。
②絽刺し
*絽刺し(ろざし)…専用の三本絽の絹織地を絹糸で刺し埋めてゆく日本刺繍。
完成品をアップリケのように着物などに縫い付けます。
△祖母と私
振袖を着た時に使用。私は手提げタイプのハンドバッグより好きでした。
小さくても存在感があり、どんなきものにも合いました。
③喪服用
定番の喪服用のクラッチバッグです。数珠を入れると結構いっぱいになってしまうので、喪服用布製手提げと一緒に使用しています。
クラッチバッグを手にした姿は、昔風だからでしょうか、どこかのんびりしていて優雅な感じに見えますね。
洋装でも最近クラッチバッグが流行しているようですが、女性らしい優雅さを求めているからなのかもしれません。
3.カジュアル用の布製クラッチバッグ
ぐっとくだけた雰囲気のクラッチバッグです。
①大島
ちょっと大きめのクラッチバッグです。
母が着ていた大島紬のきものから作りました。布製なので大きくても違和感はありません。
②帯地のポシェット
帯地から作られた市販の物。肩掛け用の長い革紐が付いていましたが、紐は短くして、中に入れています。
③こぎん刺し
木綿製 こぎん刺し*のバッグ
*こぎん刺し…青森県津軽に伝わる刺し子の技法のひとつ
藍色のカジュアルなきものに良く合います。
冬の結城紬に。
夏の宮古上布に。
次の2つは化粧ポーチ型ですが、私にとっては特別な布で出来ているので、クラッチバッグに格上げされています。
④更紗
マチがあるので結構入ります。
⑤郡上(ぐじょう)紬
絹の生地に郡上紬*がはめ込まれています。
*郡上紬…岐阜県郡上市八幡(はちまん)町で織られる紬織物。
(郡上紬については2016.12.11と2017.4.9の記事参照)
素朴な味わいの久留米絣の道行コートを着たときに持ってみました。
(コートについては2017.10.8の記事参照)
4.数寄屋袋をクラッチバッグとして
茶道に欠かせない数寄屋袋をクラッチバッグとして持つこともできます。
本来はお茶席に必要なふくさや懐紙、扇子、楊枝などの小物を入れますが、クラッチバッグとしての使用も可能です。
こちらはバッグらしい細長い形です。
内側はこのようになっています。
わたしのお下がりの数寄屋袋を持つ娘
芯の入っていない柔らかい布製クラッチバッグは、バッグinバッグとして、手提げに入れておき、必要な時に取り出して使用します。
5.自然布のクラッチバッグ
絹や木綿以外の自然布のクラッチバッグもお洒落です。
麻や芭蕉布、科布など、次回ご紹介します。