久留米絣でコートを仕立ててもらいました。丈夫で気楽に着られる優れものです。
前回は久留米絣のきものを取り上げましたが、今日はコートに姿を変えた久留米絣をご紹介します。
1.蝶と鳥の紺絣
実家に長い間保管されていた久留米絣の反物がありました。
このように洗い張りされたきれいな状態で、傷みもありません。
これは昔母が愛用していた物ですが、20年ほど前、もう自分は着なくてもいいからと、私の息子のために男児用に仕立て直してくれました。
12歳の息子が着ています。
母は満足そうでしたが、息子が着たのは2,3回ほど。私はもったいないと思いながら、その後はそのまま母に返してしまいました。
洗い張りされた反物を発見したのは母が亡くなったあとのことです。
松、鳥、蝶の細かい絣です。
こちらは前回ご紹介したきもの。雰囲気は似ていますが、このほうが絣が複雑です。
このまま反物の状態で放置しては、この久留米絣を手掛けた人に申し訳ないと思い、何とか活用したいと考えました。
きものとしての用尺は無いので、思いついたのはコートでした。
2.どんなコートに?
①道中着
はじめ、この久留米絣を見てイメージしたのは道中着*でした。カジュアルな絣には気楽な道中着がぴったりだからです。
*道中着…きものの上に気軽に羽織れるコートで、 衿まわりが着物のようになっているものです。
△結城紬の道中着(父のきものを仕立て直したもの2015.2.7の記事参照)
しかし、道中着は衿の形がうわっぱり(上っ張り)*に近いので、久留米絣ではカジュアル感が強すぎるのでは?という不安がありました。
*うわっぱり…きものに羽織る家庭用上着のこと。割烹着のように袖口にゴムの入っているものもあります。
道中着でおしゃれした気分になっても、上半身がうわっぱりを着ているように見えたら残念です。そうなると衿の形を変えるしかありません。
絣の道行コートはどうでしょうか?
②道行コート
道行コートは、衿ぐりの四角い定番スタイルのコートです。道中着よりややかしこまった装いになります。
もんぺやうわっぱりのイメージが強い紺の絣を、よそゆき感のある道行きコートに仕立てるのは少し冒険で、仕立てを頼んでいる呉服屋さんにも意外な顔をされてしまいました。
でも、道行き衿ならば久留米絣で仕立ててもうわっぱりには見えないはずです。
別の着物から外して保管してあった裾回し(八掛)です。これを使おうと思いました。
総裏にすると重くなるので、裏地は肩すべりと袖口、振り部分だけに付けてもらうことにしました。
3.道行きコートが出来上がる
出来上がりました!
肩すべりと袖口、振り、紐はモダンな格子柄です。単衣仕立てです。
紬の小紋に合わせました。
柄が細かいのでカジュアル感は強くないようです。
かなりレトロな木綿の更紗バッグを持ってみました。紺の絣に合わせると更紗模様がよく映えます。
袖が単衣だとすべりも悪く、普段着っぽさが強いですが、薄い色の裏地を付けたことで、少しお洒落を演出できたかもしれません。
振りからも裏地は見えます。
着用して感じたのは、まず気楽に羽織れるということでした。出先で慌てて脱いでも洋服のコートのようにちょっと腕に掛けたり丸めたりできます。絹のコートと違って乗り物に乗る時も気を使わずに済みます。
そして、単衣仕立てのわりには暖かいです。
昭和時代の久留米絣、これからはコートとして、身近な存在になってくれそうです。