今日は一枚持っていると便利な紬の色無地をご紹介します。
1.色無地について
①色無地とは
一般的に、色無地とは、綸子や縮緬の生地で、柄のない黒以外の無地のきもののことです。
用途が広く、以下のような使い方ができます。
a)家紋を入れる→訪問着や付け下げなどと同じように礼装として
b)家紋無し→略礼装やカジュアルな外出に
c)黒の喪の帯で→略式の喪服に
(ただし、最近のお通夜では色無地着用が少なくなりました。法事には役立ちます)
このように色無地は、昔は嫁入りの際に必ず用意されていた便利なきものでした。
しかし、現代ではきものを着ることが’特別’になったため、パーティーやお祝い事には華やかな柄物を着る人がほとんどで、きものでの法事参列やお茶会出席がない人は、ほとんど着る機会が無いようです。
「結婚の時に作ってもらった色無地はしつけが付いたまま派手になって着られなくなってしまった」という友人も複数います。
そこで、<きものを楽しむ>観点からおすすめするのは、紬の色無地です。
なお、ふつう「色無地」は染のきものを指しますが、ここでは「色無地風に着る紬」という意味で「紬の色無地」と表現しています。
②紬の色無地
<紬とは>
紬(つむぎ)とは、紬糸で織られた絹織物です。繭から糸を繰り出し、撚り(より)をかけて丈夫な糸にして織ったもので、元は屑繭からつくった真綿を引伸ばして紡ぎ出していました。
糸の太さが均一でなく節があるので,織り上がったものは手触りがざっくりしていて味わいがあります。糸を染めてから織り上げるので「先染めのきもの」といいます。
一方、綸子や縮緬、羽二重などは「後染めのきもの」といい、その手触りから「やわらかもの」とも言います。
もともと紬は普段着ですが、無地又は無地に近い紬は、少しよそ行きの洒落た雰囲気になります。
礼装にはなりませんが、縫紋を付けて格をアップさせ、軽いパーティーなどに着用することも可能です。
そして紬の色無地の楽しさは、どんな帯でもたいてい合わせられるところにあります。
一枚のきものを例にご紹介します。
2.紬の色無地に染帯を
織のきものには染帯が合うと言われています。
きものに柄が無いので、染帯の模様が際立ち、やさしい雰囲気になります。そして帯で季節を演出することができます。
①春に
塩瀬羽二重の染帯です。2月下旬から3月3日までの短い期間ですが、桃の節句の気分が楽しめます。
②秋に
先日着用しました。秋らしい色合いの染帯です。
辻が花調のしぼり型染の帯です。
帯の柄を際立たせるために、あえて帯締を同系色にしてみました。
きものが無地の場合は帯が主役になり、後ろ姿も落ち葉に見えるかも…?
3.紬の色無地に織帯を
織の帯を合わせると格が上がって少し重い雰囲気になります。
①シャープに
鎧縅(よろいおどし)をイメージさせる織の帯です。能鑑賞の際に着用しました。
2015.3.29の記事でも紹介しましたが、この日は修羅物の能(武将がシテとして登場する能)なので、私も鎧縅に見立てた帯を締めることで、女性らしさより、シャープなイメージに装いました。
②華やかに
この着物にはよく見ないとわからない程度に縫い紋が付いています。紋が目立たないので、気楽な外出と、少しあらたまった装いが必要な時のどちらにも着用しています。
唐織の帯を合わせてみました。
ここではおとなしいコーディネートにしていますが、小物を派手にしたり、衿元を華やかにすれば、ちょっとしたパーティーにも行けそうです。
綸子のようなツヤはありませんが、ひかえめな光沢があり、よそ行きの雰囲気があります。背中の紋も’きちっと感’に一役買っているようです。
このように、紬の色無地は、帯によってさまざまな装いを楽しむことができる上、年齢を問わず長く着用できる便利なきものです。