◇はじめに◇
~昭和20年代の御召縮緬を着てみました~
前回ご紹介した御召縮緬(おめしちりめん・普通はお召しといわれる)は、
大正から昭和30年代にかけて流行した絹織物です。
通常の縮緬よりコシがあり丈夫な為、
おしゃれ着として大変着やすいきものだそうです。
大正時代に女学生の間で流行した矢羽根模様(矢絣)のきものも、
お召しが多かったようです。
この紅葉模様のきものは母が20代から30代(昭和20~30年代)に着用していたものです。
私が生まれる前によく着ていたようで、私には着ている母の記憶がありません。
けれども一枚だけ写真が残っていました。
私が2歳の頃。母は30代前半です。
これと同じ組み合わせで……
この秋着てみました。
ここ数年で何回か着ているのですが、
すでに母の年齢を20年越してからの挑戦です。
アンティークのきもの*を若い世代が着るのは可愛らしいですが、
中年以降に古いきものを着る時には注意が必要だと思います。
*「アンティークきもの」とは……昭和初期以前のきものをさし、戦後のきものはアンティークとは言えないようです。
◇古いきものを着る時の3つの注意点◇
①できるだけきれいにする。
②帯や小物類は清潔感のある、あまり古くないものを選ぶ。
③色使い、柄合わせをすっきりまとめる。
以上の3点をお召しのきもので説明します。
①できるだけきれいにする。
落とせないシミは仕方がないとしても、
丸洗い(生洗い・ドライクリーニングのこと)をしてサッパリさせましょう。
手入れをして収納されていても、
長い年月使用しなかったら丸洗いが必要です。
このきものとコート、特に汚れはなかったのですが、
コートは少し臭いが気になった為、両方丸洗いを頼みました。
②帯や小物は古くないものを合わせる
薄いベージュに扇面柄の塩瀬の帯を合わせています。
最近ヤフオクで購入した新しいもの。
よく見ると春の扇ですが、うすベージュの地色が気に入っています。
帯揚げはこの日が初めて。
数年前購入した小紋のきものの余り布をそのまま利用しました。
まだ生地に張りがあるので、新しい雰囲気が出ます。
この時は10月中旬だったので、涼感も必要かと白地に「すくいの帯」*を合わせました。
新しい帯ではありませんが、白という地色が、きものの古臭さをカバーしています。
*「すくいの帯」…綴れ織りに似た織り方で紬糸などを用いたおしゃれ帯
③色使い、柄合わせをすっきりまとめる
大胆な柄や色使いの組み合わせが面白いアンティークきものですが、
戦後の古いきものはそこまで個性的ではありません。
ですからなるべく色合わせをすっきりしましょう。
帯や帯揚げを同色ででまとめる着こなしは洋服の感覚から来たもので、
比較的最近の取り合わせ方です。
一つ一つを目立たせないように、統一感で古さをカバーする方法です。
バッグも紫根染で。
ここまで紫色で合わせるとついでに草履も…ということに。
縮緬の羽織の余り布から作った草履です。
皆さんのそばにも昭和中期の着物はたくさん存在するはず。
それらを
「古いものなの……おかしくない?」
と遠慮がちに着るより、
「私は昔の着物をこのように生かして着ています!」
と胸を張って言えたら楽しいですね。