今日は代表的な和柄、「麻の葉文様」について考えます。
1.麻の葉文様とは
①植物オオアサから
麻の葉文様については以前にも取り上げましたが、(2016年3月26日の記事)正六角形を基礎にした幾何学文様で、植物の大麻(おおあさ)の葉に似ていることからこう呼ばれます。
麻は古来から食べ物や衣類を作るための大切な原料として欠かせないもので、広く栽培されていました。
麻は生活を支える植物としてだけでなく、神聖なものとして神事にも用いられています。
△ オオアサ(By Barbetorte)
麻は4月頃に種が蒔かれるとすくすく伸びて7、8月には刈り取られるというほど、生命力が強いものでもあります。
②いつ頃から?
麻の葉は平安時代の頃には文様化されていたようです。
③麻の葉文様の意味
麻の葉文様は三角形の集合でできています。もともと三角形の文様*には魔除けの意味があるので、同様に麻の葉にも魔除け、厄除けの意味があり、広く使われているのです。
*三角形の文様…鱗文(うろこもん)といいます。大蛇のウロコが鱗文発祥のいわれで、呪いや魔除けの力を持つとされています。ウロコ→蛇の脱皮を連想し「厄を落として更正する」という意味もあるそうです。武具や戦陣の衣服にも使われました。
△ 能「道成寺」装束の鱗文(堀上謙『能 修羅と艶の世界』能楽書林より)
△ 同じく能「道成寺」装束の鱗文 (2015年8月30日・12月13日の記事参照)
身近な麻の葉文様をあらためて見てみようと思います。
2.着物
①小紋
細かい麻の葉文様ですが、麻の葉の中心部が白く浮き立つので華やかな小紋です。
好きな着物で若い頃から愛用していました。子供(生後4ヶ月)のお食い初めの時にも着ています。
②大島紬
以前ご紹介したものです。 (2016年3月26日の記事参照)
③弓浜絣(ゆみはまがすり)*
*弓浜絣…鳥取県の弓ヶ浜半島(米子市、境港市)で製造されている絣で、およそ250年前、江戸時代から織り継がれている絵絣です。
麻の葉と花菱(はなびし)*、梅の絣文様です
*花菱…菱形に擬して四弁の花形を意匠化したもの。紋章としても有名です。
④紬
どこの紬かは不明ですが、若い頃は赤い半幅帯を合わせてカジュアルに着ていました。真っ赤な裾まわしが付いています。
⑤子供のメリンス着物*
*メリンス…モスリン・本モスともいい、羊毛100%の細い糸で平織りされたもの。薄くて柔らかく暖かいため、子供の着物や長襦袢、女性の普段着としても使われています。
この麻の葉は「輪違い麻の葉」です。円を4分の1ずつ重ねた輪違い文様(七宝文様ともいいます)のように丸みを帯びた麻の葉文様です。
⑥産着
ガーゼの袷の産着です。生後すぐから着せていましたが、この写真は生後半年です。
息子を抱いているのは母で、今回初めて気付きましたが、③の弓浜絣を着ています。初孫の成長を祈る気持ちを込めて麻の葉柄の絣(かすり)を着ていたのでしょう。
⑦浴衣
17年前。娘を連れて友人のお宅に。左は当時13歳のお嬢さん。浴衣を着せてあげてこれからお祭りに行くところです。
3.帯
①木綿に刺し子刺繍
麻の葉文様は刺し子刺繍の代表的な柄といえます。
②ちりめんに相良(さがら)刺繍と刺し子刺繍
相良刺繍は結び玉で模様を縫い込んでいくものです。両脇の刺し子と比べると立体感があります。
③紫根絞り
素材は絹です。麻の葉だけでなく、絞りの模様に味わいがあります。
④白山紬(はくさんつむぎ)*
*白山紬…石川県白峰村で織られている紬織物です。
昭和時代の帯ですが、色使いがポップな感じです。
4.コートや羽織
①刺し子刺繍・紬の道行コート
茶色濃淡、2色の糸で麻の葉文様が刺繍されています。
②紫根絞りの羽織
3-③の帯と同じ生地です。
5.長襦袢
①メリンス長襦袢
メリンスの長襦袢は暖かい普段用です。
②二部式長襦袢
洗える二部式長襦袢です。若い頃愛用していました。
6.小物類
①帯揚げ
②風呂敷
③ハンカチ
以上のように、麻の葉文様はさまざまな形で自分の身近に存在していたことがわかりました。
その時々の思い出をたどると、麻の葉文様は私や子供たちを守ってくれていた気がします。