イベント訪問

能装束の虫干し その1

2015年12月13日

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きものの虫干しについては以前ご紹介しましたが、(2014年11月8日15日の記事)今日は「能装束の虫干し見学」に行ったレポートです。

1.能装束は夏に虫干し

虫干しに適する季節は

夏(土用干し)
秋10~11月
冬1~2月(寒干し)

の年3回と言われていますが、能装束は夏に行われることが多いようです。
以前は夏場に公演が少なかったことによるものです。

 

2.東京・武田修能館での虫干し見学ツアー

毎年8月10日頃に実施されます。事前申し込みをし、参加費は2,000円でした。

観世流能楽・武田家が所蔵する200点以上の装束・能面・小道具類を能楽師の説明を聞きながらじっくり見学させて頂きました。

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このように豪華な装束が幾重にも張り巡らされたロープに掛けられています。
この光景にまず驚きました。

 

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その装束をくぐったりかき分けたりしながら移動し、武田宗典さんの説明を聞きました。

 

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柱には座布団が当てられ、その上からロープが巻き付けられています。

 

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それぞれ名前が書かれた”たとう紙”

虫干し終了後はすべて元通りに納めなくてはならないのです。大変な作業ですね。

 

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広げられない袴(理由は大きい・畳むのが大変だからでしょうか)などの装束は、このように畳んだまま並べられています。これも立派な虫干し。広げて干さなくてもこのようにたとう紙から出してやるだけで空気は通り、装束はほっと深呼吸しているようです。

能装束は使用したら干して湿気をとばすこと以外特別な手入れはないそうです。

伝統の虫干しの光景、私たちにも参考になりますね。

 

3.能装束の説明

①縫箔(ぬいはく)

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繻子織(しゅすおり・サテンのこと)の地に箔を置き、絹糸で刺繍(ししゅう)を施したものです。

 

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観世流独特の「油煙型」という道成寺専用の文様。

 

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どれも刺繍が美しいです。

 

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地色も素敵な菖蒲の刺繍の縫箔ですが……

 

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このように腰に巻くので中程は刺繍がないそうです。
衣装として合理的に出来ているわけです。

②摺箔(すりはく)

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金箔・銀箔を布に貼り付けて模様を表したもので、能装束では上着の下に着るものです。(さらにその下には胴着という肉布団を着るそうです)

上半身しか見せないため、腰までの丈です。この三角の鱗模様は「道成寺」や「葵上」などの鬼女専用だそうです。

③唐織(からおり)

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多彩な色糸で柄を刺繍のように織り出す技法〈浮き織り〉で作られた豪華な装束です。

 

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「道成寺」を演じた時の装束です…と説明する武田宗典さん。

 

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②の摺箔を上半身、①の縫箔を下半身用に腰に巻き付け、最後にこのような③唐織を上から着て、「道成寺」の装束になるのです。

 

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色が互い違いで段になっているものは、観世流ではシテ(主役)専用だそうです。

 

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これはもっとも高い技術が必要とされる唐織で、昔使用していたもののコピーとのこと。技術を残す為に、武田家は平成に入ってから本物を能装束店に寄贈し、代わりに同じ物を作ってもらったそうです。

 

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秋草の唐織。色は違いますが、以前(2015年11月29日)ご紹介した帯の元になっているデザインの装束です。このように、能装束の意匠を元に帯が作られることも多いようです。

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背後から唐織パワーを感じています♪
現在、唐織の能装束を製作する工房は京都に2軒、東京に1軒ということでした。

④熨斗目(のしめ)

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男性役の装束。無地と段模様があり、僧侶や老人役、下級武士の役などに用いられます。

 

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段熨目は昔から大好きな柄なので、一緒に撮ってもらいました。現代にも通じるお洒落な模様です。

⑤長絹(ちょうけん)

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絹の絽・紗のような単衣の装束で、とても広い袖に作られています。「身長が高く腕が長い現代の能楽師でもサイズは大丈夫!」とのことでした。そして「長い袖はひるがえした時に効果的なのです」という説明もして下さいました。薄物でも夏用ではなく、主に舞を舞う女性や草木の精霊役が着用するそうです。

⑥室町時代の装束

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虫干しされている装束の中で、最も古いもので現在は使用されていないようです。見た限りではあまり傷んでいるようには感じませんでした。

 

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紗綾型(さやがた)に龍の模様。面白い顔ですが、中国では皇帝のみが象徴として用いた〈五爪の龍〉です。唐物(からもの)と言われる中国由来の物語や詞章の能に使用されたそうです。

⑦鬘帯(かずらおび)

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女性役専用で、かつらの上から鉢巻きのように締める細長い帯のことです。

三角形の鱗模様の鬘帯は「道成寺」・「安達原(あだちがはら)」・「葵上(あおいのうえ)」の鬼女役が使います。

続く――

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