今年は型絵染作家の芹沢銈介(せりざわけいすけ)生誕120年です。
10月上旬、日本民藝館の「芹沢銈介展」に行きました。
■ 芹沢銈介展
期間:2015年9月1日~11月23日
場所:公益財団法人 日本民芸館(東京都目黒区駒場4-3-33)
公式サイトURL:http://www.mingeikan.or.jp/events/special/201509.html
1.日本民藝館とは
思想家・美術研究家柳宗悦(やなぎむねよし)(1889~1961)により企画され、民藝運動の本拠として1936年に開設された美術館です。所蔵品は17,000点。
木造瓦葺き2階建ての本館は、戦争で焼けることなく昭和11年当時のたたずまいです。まだ美術品を見ていないのに、建物の中に足を踏み入れた瞬間に昭和時代の懐かしい空気に包まれ、ゆったりとした気持ちになりました。
2.芹沢銈介展
芹沢銈介については以前取り上げましたので(7月4日)説明は省きます。生誕120年記念の展示会のポスターやパンフレットの表紙を飾っている作品をご紹介しましょう。
「機織図四曲屏風(はたおりずよんきょくびょうぶ)」
これはパンフレットの表紙です。
実際は縦が175cmの麻地の屏風で、会場でも圧倒的な存在感でした。機織りの機械や道具、糸や反物がまるで生き物のように躍動的に描かれ染められています。
型絵染の魅力を深く味わうには、やはり近くで布地の質や発色を感じることがベストだと思いました。
3.印象的な作品
芹沢銈介の作品には、見るものを鼓舞する力強さと心を和ませる柔らかさがあります。多くの展示の中でも、私が長く立ち止まって見た作品があります。ここでは平凡社・別冊太陽『染色の挑戦 芹沢銈介』から写真を一部引用してご紹介します。
①丸紋伊呂波八曲屏風(まるもんいろははっきょくびょうぶ)
丸紋の中に仮名、その上(又は下)の丸には仮名文字を頭に冠する工芸品が染められています。何の絵かすぐにはわからない物もあり、作者からのなぞなぞにワクワクしながら答える子供のような気持ちになりました。
②沖縄絵図六曲屏風(おきなわえずろっきょくびょうぶ)
昭和14年、「第1回芹沢銈介工芸展」に出品されたものです。現在は英国の美術館所蔵。
青い海に色鮮やかな沖縄本島が描かれ、その周りに沖縄の建物や工芸品、紅型の着物や泡盛、沖縄舞踊などが染められています。ここに描かれた沖縄の眩しいまでの明るさは、数年後に迎える悲惨な歴史の光景とあまりにかけ離れていて胸が熱くなりました。
③津村小庵文(つむらしょうあんもん)着物
芹沢氏は1957年から鎌倉市・津の茅葺き農家の離れを仕事場として借りていたそうです。その津村の四季折々の風景が描かれています。
この写真は、掲載された本によると「帯地の型染めひと型分」と紹介されていますが、今回展示されていたのは着物でした。白の縮緬(ちりめん)地に染められた美しい物で、少し離れて見ると、山々の緑・青・黄色の三色が印象的で、大変モダンな雰囲気でした。
画面右下の庵の縁側には、仕事の手を休めてうたた寝する自身の姿が描かれているそうです。
ユーモアのある人だったのでしょう。
4.日本民藝館のおみやげ
1階受付横の部屋は売店です。この日最も混んでいた部屋でした。
私が購入したのはこちらです。
①草土社『片野元彦 絞と藍』ポストカードブック
絞り染作家・片野元彦(8月15日の記事参照)の手になる絞りが22枚の絵葉書として一冊の本のように綴られています。全4刊のうちの1冊です。(864円)
②絵葉書
江戸時代や19世紀の工芸品の絵葉書です。中央は芹沢銈介の型絵染め「琉球風物」(1939年)
右下は日本民藝館 西館(旧柳宗悦邸)応接室です。(1枚70円)
絵葉書は、自分のお気に入りの物をメッセージを送る相手にさりげなく見せられるので大好きです。
5.秋向きの帯で
この日は何を着るか悩みましたが、やはり型絵染めの紬にしました。
6月は麻の帯でしたが(7月の記事)今回は赤系の紬にしました。
歩きやすい鎌倉彫りの右近(うこん)下駄にしました。
これは先日鼻緒を替えてもらったばかりです。
以前は濃い赤系の鼻緒でした。
鼻緒を薄い色に替えることでお洒落な雰囲気の下駄になり、きものにも合わせやすくなったようです。