イベント訪問

「藍染の絞り 片野元彦の仕事」展に行く・その2

投稿日:2019年7月21日 更新日:

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前回に続き、日本民藝館で開催された「藍染の絞り 片野元彦展」を取り上げます。合わせて行われた講演と、私が受け継いでいる片野絞りの浴衣や帯も紹介します。

1.写真家・藤本巧氏の講演から

①藤本巧氏について

藤本巧(ふじもと・たくみ)さんは1949年生まれの写真家です。

藤本さんの父は民芸作品のコレクターであったため、片野元彦と親交があったそうです。

そんな関係から藤本さんは、1968年に片野元彦と出会い、展示会の案内状作りに携わったり、1970年、片野元彦を取り上げたNHKの番組「藍浄土」撮影のロケ班としても参加することになりました。

藤本さんは片野元彦の作品集の装丁も手がけ、片野元彦・かほり親子の写真も撮影しています。

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△ 藤本巧さん(講演会終了後撮影)

②エピソード

<行者のような人>

片野元彦の人となりについて藤本さんが話された中で、一番印象に残ったのは、次の一言でした。

彼は自身を職人と言っていましたが、私から見ると、行者のようでした。

片野元彦の住まいは名古屋にあったそうです。

その家は今で言うと1K、玄関と四畳半と台所といった質素な家で、そこで片野は長女のかほりと二人で暮らしていました。(妻の静子さんは昭和24年に亡くなりました)

片野の部屋には、ベニヤ板に模造紙を敷き、押しピンで止めただけの座卓があり、片野はそこで図案を思考したり、下絵を描いていました。

藤本さんはその部屋にはいつも緊張感が漂っていると感じたそうです。

57歳という年齢から絞染の世界に入り、欲を捨ててひたすら仕事に精進し続けた片野元彦の姿に、藤本さんは仏道に専心する僧侶や、修験者を見たのでしょう。

「自分は作家ではなく職人だから……」と片野は言い、藤本さんの説明では、その作品は高い芸術性と人気のわりに、手が届く価格で販売されていたそうです。

<民俗学者のようなたくさんの本>

片野の本棚にはびっしりと本が収められていて、彼は本をよく読んでいたそうです。

藤本さんによると、それらの本は柳宗悦を始めとする様々な思想家や作家の全集が多く、「民俗学者のようだ」とも思ったそうです。

<小津安二郎の映画のよう>

片野元彦の住まいを<緊張感が漂う部屋>と藤本さんは表現していますが、また、別の空気も感じ取っていました。

片野が台所にいる娘に対して用事を頼むため「かほりちゃん!」と呼びかける時です。片野に呼ばれると、かほりさんはすぐにとんできて父の前に座ったそうです。

「二人が語り合う姿は、まるで名画座で上映される小津安二郎の作品を観ているようだったので、二人を撮影する時にはカメラのアングルを低く構えました。」と、藤本さんはスライドで写真を見せながら懐かしそうに話されていました。

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△片野かほりと片野元彦 藤本巧氏撮影(http://home.att.ne.jp/orange/sodosha/index.htmlより)

③藤本さん自信の一枚

片野元彦が作業をする姿を撮影した写真の中に、素晴らしい一枚があります。講演会で藤本さんが紹介してくださいました。

片野元彦は自分で建てた藍で藍染をしていました。天然藍の発酵は神秘的で難しく、日々の世話も大変だそうです。

そんな藍甕のある片野の仕事場で、藤本さんはその写真を撮影しました。

「偶然撮ることが出来た一枚です」と説明されています。

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△「縄もっこ絞」藤本巧撮影 1968年、『民藝』2018年8月号(日本民藝協会)より

藍に浸した絞布を縄もっこ*の中に入れて絞っている69歳の片野元彦。年齢を感じさせないすごい迫力だったそうです。

*縄もっこ……縄を網状に編んだ運搬用具

藤本さんは、片野元彦の人となりをいろいろな例えを挙げて説明してくださったので、若い頃から「片野絞りの片野という人物はどんな人?」という疑問を持っていた私には、大変有り難い講演会でした。

おかげで片野元彦という作家を身近に感じることができ、藍染絞りにいっそう愛着が湧きました。

 

2.片野元彦作の帯で

前回も紹介しましたが、当日は片野元彦作の帯を締めて行きました。

①日本民藝館にて

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△日本民藝館 2019年5月18日撮影

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以下の記事で紹介した紙布のきものに藍絞りの名古屋帯を合わせています。

 

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△正面入口にて

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△講演会終了後、藤本巧さんと

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日本民藝館では「華段経縞紋折縫絞」というタイトルが付けられていた絞りです。

②以前の取り合わせ

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藍染の綿薩摩に合わせています。

 

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着物も帯も、デザインの面白さは<藍染>によって際立っているのだと思います。

 

3.片野元彦作の木綿単衣

私が受け継いでいる片野元彦のきものをご紹介します。

①立涌絞(たてわくしぼり)の単衣

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木綿地立涌文様の折縫絞です。

 

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△アップ

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粗紗の帯で

 

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博多の帯で。

厚手の柔らかい木綿地で、浴衣というより単衣のきものです。

着用するとかなり目立ちますが、知らない方に「涼しげで素敵!」などと声をかけられることが多いので、嬉しくなります。

②浴衣

次にご紹介する浴衣は、片野元彦の絞りと思われるものです。生地はみな同じ手触りで、①ほどではないものの、厚手で柔らかい木綿です。

 

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以下はトルソーに着せた状態でご紹介します。

 

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2回にわたり、片野元彦展と藍染をご紹介しました。

今年(2019年)は片野元彦の生誕120年です。藍染と絞りの技術がこれからも受け継がれ、人々に愛されることを心から願っています。

ご覧いただきありがとうございました。

 

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