7,8月の暑い日々、きものを涼しげに、そしてお洒落に着こなすためにはどうしたらよいでしょうか。
今日は、帯留めを活用した涼しげな装いを提案します。
1.帯留めとは?
帯留めは、見た目だけでなく機能性も兼ね備えたアクセサリーです。
帯を固定するだけでなく、全体のスタイルのポイントにもなるものです。
①帯留め?帯締め?
帯留の歴史は、江戸時代後期、文化・文政年間(1804年 – 1829年)に、始まりました。
「帯留」は、当時、胴締や上締とも呼ばれ、帯留の原形と帯締めの原形の、その双方を指したようです。
帯留の原形は留め金具式で、紐の両端に表金具と裏金具を取り付け、合わせて引っ掛けるタイプだったようです。(洋服のバックルベルトのようなものだと思います)
そして、腰帯・しごき帯・布を仕立てた「丸ぐけ」「平ぐけ」と呼ばれる紐・真田紐・組紐などの帯の上に結ぶものが、現在の帯締めとなりました。
(参考:Wikipedia.org)
△帯留の原形・留め金具式(前掲サイトより)
私は子供の頃、帯締めのことを「帯留め」と言っていて、母も「帯締め」という言い方はしませんでした。
大人になってからその間違いに気付き、帯留めと帯締めを分けて言うようになりましたが、昔は「帯留め」で両方を表していたのかもしれません。
②帯留めの素材
- 宝石
- 金属
- 木
- 陶磁器
- ガラス
- 樹脂(セルロイド、プラスチック等)
など、素材は様々です。
カジュアルな装いに用いられることが多いので、季節による決まり事などはありません。
大きめの真珠や珊瑚は少しよそ行きの着物に合わせることが多いですが、それも特に決まりはないと思います。
夏場はガラス素材の帯留めを浴衣に合わせて涼感を楽しむ人をよく見かけます。
③帯留めの装着方法
金具
帯留めのほとんどは裏に金具が付いていて、そこに紐を通して装着します。
レースの帯締とブローチ
帯留めでなくブローチを転用する場合
レースの帯締めなら、ブローチを直接付けることもできます。
レース編みの隙間にブローチのピンを通します。
普通の紐だと針は通らないので、次の↓ゴムを使うことをおすすめします。
ミニゴム
以下の場合はミニゴムを使います。
- 帯留めの金具に紐が通らない
- ブローチを帯留めにしたい
(ブローチは丸くて左右のバランスが良いものがおすすめ) - ボタンを帯留めにしたい
付け方は以下で紹介しています。
糸で
ペンダントやチャームを帯締めに糸で巻き付けて使うこともできます。
翡翠のペンダントを横にして糸で留めています。
組紐飾りのチャームを付けています。(ただし糸で留めると取り外しが面倒です。)
2.帯留めが夏にふさわしい理由
一年中使える帯留めですが、私がなぜ夏によく使用しているかを考えてみました。
①涼感と楽しさを演出できる
暑い中きものを着る場合、着心地と同じくらい大切なのは周りの人に暑苦しさを感じさせないことです。
可愛らしく、または涼感のある帯留めを体の中心に添えることで全体を涼しげに見せる効果があります。
そして帯留めで遊び心を表現するのには、夏の明るい日差しがぴったりです。
②帯付きで出掛ける
真夏は羽織やコートを着ない「帯付き」のスタイルなので、帯留めがよく見えて効果的です。
③帯留めの立体感
夏のきものは生地が薄く、刺繍なども少なくて配色がシンプルになるので、帯留めの存在が際立ち、夏の装いに立体感を出します。
④三分紐が涼しげ
帯留めを装着するのに使用する三分紐(さんぶひも)は普通の帯締めより細いので涼しげに見えます。
3.夏の帯留め使用例
①真珠・珊瑚など
②金属
△芭蕉布(ばしょうふ)の着物に紗の名古屋帯、肥後象嵌(ひごぞうがん)のブローチ
△越後上布(えちごじょうふ)に科布(しなふ)の帯、七宝焼(しっぽうやき)のブローチ
③木
④陶磁器、ガラス
陶磁器
△絽の小紋に羅(ら)織りの帯、ウェッジウッド ジャスパー ブローチ
ガラス
⑤その他
べっ甲
セルロイド
漆(堆漆<ついしつ>)
4.もう一つの帯留めの魅力
帯留めの楽しみはもう一つあります。それは紐(三分紐)です。
おなじ帯留めでも、紐が変わることで印象が変わります。
着物が変わり帯が変わることで、帯留めに合う紐の色が違ってきますが、一つの帯留めを色々な紐で楽しめることは大きな魅力です。
例として、白檀の帯留めの使い回しをご紹介します。
白檀は良い香りがするので夏に使うことが多いのですが、帯と紐の変化で楽しんでいます。
帯留めは、その小さな存在で装いの全体を引き立て、さらに季節感を加える力を持っています。
暑い夏も美しい帯留めを活用すれば、きものを楽しみながら過ごすことができるのではないでしょうか。