4月下旬、東京都港区にある「味の素 食とくらしの小さな博物館」を訪ねました。
江戸から明治、現代までの日本の食文化の変遷をゆっくり見学できる小さな博物館でした。当日は単衣の久留米絣を着用しました。
1.「味の素 食とくらしの小さな博物館」とは
①元は味の素グループ創業者の自邸
この博物館は味の素グループ創業者二代目鈴木三郎助が自邸として建築し、三代目三郎助も暮らした場所です。
戦後社員研修などに使われ、2004年に建て替えられ研修センターとして完成しました。
当初は従業員向けの資料展示室だった施設が現在は一般向けに公開され、無料で入場できるようになっています。
②アクセス
都営浅草線「高輪台」駅より徒歩3分
JR線、京急急行線「品川」駅より徒歩15分
私は地下鉄都営浅草線を利用しました。出口はA1です。
③短時間で楽しめる施設
建物内の1,2階に展示室があります。
コンパクトな施設ながら、「味の素®」が誕生した明治後期から現代までの日本の食生活の変遷をわかりやすく解説、または再現していて、短時間でも十分に楽しめる展示になっていました。
1階には食の専門図書館『食の文化ライブラリー』もあります。
約4万5000冊の書物が所蔵されているそうです。
2.展示内容
①味の素の100年の歴史
味の素のうま味のもとを発見したのは池田菊苗(いけだ きくなえ)博士(1864~1936)です。
家で湯豆腐を食べているとき、昆布だしのおいしさを不思議に思って研究を始めたそうです。
そして1908年、うま味のもとがグルタミン酸(アミノ酸の一つ)であることを発見し、1909年、「味の素」が発売されました。
(参考:展示と解説動画)
△池田博士(「食とくらしの小さな博物館」絵葉書より)
会場には発売当時から現代までの「味の素」のパッケージやその他の関連商品が展示されているほか、各時代の出来事なども併せて紹介されていました。
△発売当初の味の素(「食とくらしの小さな博物館」絵葉書より)
△大正期中国向けのポスター (「食とくらしの小さな博物館」絵葉書より)
△1937年アメリカ向けのポスター(「食とくらしの小さな博物館」絵葉書より)
②各時代の食卓風景
博物館2階のメインとなる展示は、各時代の食卓風景をテレビドラマのセットのように再現したものでした。
ちゃぶ台や桐箪笥が置かれた昭和初期の和室をはじめ、1960年頃、1985年頃のダイニングキッチンの様子などが再現されていました。
1960年以降の調理家電やキッチングッズ、テレビから流れるコマーシャルなど、どれも見覚えのある懐かしいものばかり‥。
昭和レトロブームの現代、若者にも好まれそうなコーナーでした。
テレビドラマで見たことのある戦前の風景ですが、桐タンスや写真右下にある木の裁縫箱など、私がまだ実際に持っているものと似ているものがありました。
戦前のコーナーだけは写真撮影可能でした。
絣の着物がこの場面に馴染みます。
③江戸時代からの食文化の変遷
1階には常設展示「日本の食文化」のコーナーがあります。
江戸時代の錦絵や戦前の食に関する雑誌、再現料理の模型など、眺めるだけでも楽しい展示になっていました。
まさに着物の「吹き寄せ文様」ですね。
3.当日の着物と感想
①かつお縞の着物
4月下旬の見学でしたが、木綿単衣の久留米絣を着用しました。
柄は縞模様。「鰹縞(かつおじま)」です。カツオの背の模様に似ていることからこう呼ばれています。
「味の素」の元はグルタミン酸。昆布の旨み成分なので、「こちらはイノシン酸のカツオ節!」と思ってのこじつけチョイスです(^^;)
②型染めの帯
紅型研究家、鎌倉芳太郎作の朧(おぼろ)型※の名古屋帯です。
※朧型……沖縄読みでは「うぶるーがた」といい、型紙を2-3枚重ねて染める紅型のことです。
(バッグは自分で作り帯にリメイクしたときの残布を利用して作ってもらいました)
細かく散りばめられた白い模様から味の素をイメージしたので、この帯を選びました。
この帯についてはこちらで紹介しています。
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③「食とくらしの小さな博物館」 感想
懐かしさを味わえる
味の素に関するものだけでなく、各時代に流行ったものやコマーシャル映像などを見ることで、当時の世相が懐かしく思い出されました。
懐かしさは自分の原点に向き合うものでもあるので、そこからまた明日へのパワーを見出せるかもしれません。
食卓は時代の象徴
身近な食卓風景は子供の頃から現在まで自分が体験してきたものとそっくり。
食卓にこそ時代が表れるものだということがわかりました。
子供たちには新鮮
子供や若者とっては、もっとも身近である食卓風景にこんな歴史があった、という新鮮な驚きがあるかしれません。
子や孫との会話が弾みそうな博物館でした。
今日は味の素の「食とくらしの小さな博物館」をご紹介しました。