以前、手洗いして縮んでしまったウールのコートをご紹介しましたが、今日は母が遺していった¨失敗¨の後始末のお話です。
1.眠っていた夏大島
古い長襦袢や浴衣と共に、箪笥の引き出しの一番下から出てきたのがこの夏大島。そのせいか、かなりシワが目立っていました。
でも、このシワは明らかにおかしいです。
裏側の白い居敷当てが引っ張られ、表地に止まっている部分以外は上がっています。これを見て、洗濯による裏地の縮みだとわかりました。つまり、母がこの着物を洗濯した為に、衿裏や居敷当てに使われている羽二重の生地が縮んでしまったのです。
このままでは着られないので、部分的に直すことにしました。
2.居敷当てを直す
①居敷当て上の部分はそのままに残し、背縫いと脇縫いに付けられている部分を外しました。
3.衿を直す
衿は裏が縮んでツレたことが原因でシワシワに。掛け衿(共衿)にはシミもありました。
①掛け衿をはずして裏返しに付け替えました。
これで点線部分のシミは裏に隠れることになります。
②表の衿がだぶついているので、途中にタックをとることにしました。
(部分的に衿裏をほどきます)
このように衿裏の長さに合わせてつまみました。
左の縫い目がつまんだところ。(右の縫い目は掛け衿の端です)
タックは右の衿だけなので、着ると隠れます。
4.着てみる
7月はじめに着用しました。
夏大島は薄物のような透け感はないので見た目の涼しさはありません。そこで風通しの良い夏用八寸名古屋帯を合わせました。
帯締も軽い夏物、草履はメッシュです。
荷物が多かったので麻のトートバッグを持ちました。
麻の専門店 井上企画・幡(ばん)製。母の奈良旅行のお土産で、もう23年も前の物です。手紡ぎ/手織りで柄は古典柄の牡丹唐草です。貴重品は若い頃から愛用の革の縞ミニバッグに入れて……。
藍色のきものは個性的な小物との相性が良いようです。
5.夏大島を着た感想
夏大島をフワリと手に持つと、他の単衣物とは違う感じがします。
洋服ならば軽いスプリングコートやレインコートを持った時と似ています。軽さ・ハリ・艶やかさ、そしてひんやりした感触もあります。まさに梅雨時にぴったりの着物だとわかりました。
軽くて雨に強いので撥水加工して雨コートにする人も多いようです。けれども、水に強いから水洗いができると思うのは少し無謀です。裏地の無い単衣のきものといえども、表地だけでなく、衿裏、居敷当て、背伏(背縫いを補強するための細長い布)、縫い糸など、異なる素材でできているからです。
母からの宿題? ……何とかこなして着ることができ、ほっとしました。