お直し/リメイク

振袖の袖を短くすると……?

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きものばなれと言われながらも、成人式には綺麗な振袖姿をたくさん見かけますね。

今日は「振袖の袖を短くしたらどうなるか」について考えます。

1.いろいろな振袖

一般的に振袖には大振袖・中振袖・小振袖の3種類があるといわれています。

①大振袖

袖の長さが110cm以上で、手を下げた時、たもとの先がくるぶしまであるものです。

本振袖ともいい、格式の高い未婚女性の第一礼装です。

戦前までは婚礼儀式、色直し用で、帯は丸帯*を締めていました。

*丸帯…幅が約70cmの帯地を二つ折りにして、帯芯を入れて縫い合わせたもので、戦前までは第一礼装用の帯でした。

その後、袋帯が普及しても1970年代までは大振袖は花嫁のお色直し用が主で、成人式用では少なかったようです。

1980年代には大振袖を成人式でも着るようになりました。

ただし、「結婚式のおよばれには花嫁さんの振袖より派手にならないように中振袖が望ましい」とする説があります。

(大振袖を着ても、花嫁さんとは着付けやメイク、髪型、髪飾りなどが明らかに違うので、私は大丈夫だと思いますが……。)

②中振袖

袖の長さが100cm前後のもので、たもとの先がふくらはぎまであるものです。

③小振袖

袖の長さが65~85cmぐらいのものをいいます。

スーツやワンピースといった、一般的な正装のイメージのきものです。

現代では二尺(約76cm)袖の晴れ着風のきものを小振袖といい、袴に合わせて卒業式に着るのが定番になっているようです。

昭和50年頃までは、若い女性の袖丈は今より長く、二尺(約76cm)くらいのものもありました。
それらは小紋(総柄)の反物で袖丈を長く仕立ててあるもので、お出かけ用の着物でした。

私も十代~二十代は、一尺六寸(約61cm)~一尺八寸(約68cm)のきものを着ていたことがあります。

それらは「小振袖」とは言わず、たもとの長いおしゃれ用の外出着でした。

④昭和時代の雑誌から

昭和後期の雑誌から、振袖3種類の写真をご紹介します。

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△大振袖

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△中振袖

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△小振袖

※いずれも主婦の友デラックスシリーズ『美しい着つけと帯結び』(主婦の友社・昭和54年発行)より

この雑誌は当時私の愛読書でしたが、まだ卒業式の袴は無く、袴は男児と男性用のみが掲載されていました。

昭和54年頃、一般で袴を着用する女性は、学校の先生だけだったように思います。

⑤最近の振袖は?

このように振袖は袖の長さによって分けられていますが、最近は「大振袖」「中振袖」という言い方はあまりしなくなっているようです。

身長160cm以上の女性が多くなり、成人式の振袖の袖丈は三尺(約110cm)が普通になってきているとか。

あえて大振袖とは言わず、「振袖」か「小振袖」の2種類という考え方になっているようです。

 

2.袖を切るということ

①なぜ袖を切るか

江戸時代、未婚女性が振袖の長い袖を結婚後に短くし、身八口を縫い留める習慣があり、このような着物を「留袖」と呼んでいました。

ここから、「留袖」と言う名称自体が「既婚女性の礼装」と言う意味に転じていったそうです。

つまり、昔から振袖の袖を切るということは行われていたわけです。

大正、昭和のアンティークの振袖には紋が付けられ、袖を切れるような柄の配置になっているものがあります。

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△大正時代の振袖(『日本のおしゃれ 池田重子コレクション』日本経済新聞社 2001年 より)

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△昭和時代の振袖(前掲書より)

このような習慣が昭和の中、後期になってもまだ残っていて、着る機会の少ない振袖のたもとを切って、少しでも長く着ようとしたのだと思います。

「振袖の袖を短くすれば結婚しても訪問着代わりに着られる」というのが当時の考え方でした。

昭和時代、結婚年齢が20~25歳くらいだと、まだ振袖の華やかさが似合う年齢だったということもあるでしょう。

②訪問着になるか?

結論としては、現代では訪問着にならないと思います。

たとえ紋が入っていても、地色が地味めでも、柄行きが訪問着と振袖は違うので、「袖を切った振袖を訪問着として着ている」という感じになりそうです。

③小振袖としての利用は?

袖の柄がちょうど良いところで切れるのならば、小振袖になります。

歌舞伎やクラシックコンサート、オペラなどの鑑賞や、パーティーや食事会への出席など、振袖では大袈裟に思う所でも、小振袖なら、よそゆきのスーツやワンピースと同じ感覚で着用できます。

また、金糸銀糸の袋帯を合わせることで友人の結婚式にも着用可能なので、着る機会が多い人なら利用範囲は広いと思います。

けれども、現代では小振袖=卒業式の袴用の着物 というイメージが定着し、その後の出番がない場合も。

パーティなどで着用すれば良いですが、卒業式一度きりのために振袖を切るのはもったいないですね。

現代は、成人式で振袖一式を購入した人でも、卒業式は別に小振袖と袴をレンタルすることが多いようです。

 

3.袖を切った振袖の着用例

私は親のすすめで袖を切った振袖を持っています。

①大振袖の例

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成人式や卒業式、稽古ごとの舞台で着用後、最後に結婚の色直しで着た振袖です。
その後……

 

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袖丈を一尺六寸五分(約63cm)にしました。小振袖と言うには短い袖丈です。

パーティなど大勢の人が集まる場面で何回か着用しました。

 

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△歌舞伎関係の方の襲名披露パーティにて(40代後半・この着用が最後)

その後……

 

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娘が卒業式で着用しました。

②中振袖の例

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△紅型の中振袖

20代はじめに袖を切り、2~3回着用しました。(当時の写真は残っていません)

それから、切った袖の残布でハンドバッグを作りました。

 

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△バッグ

これはきものの色柄を選ばず何にでも合うので、よそゆき用のハンドバッグとして活躍しました。
現在も使用しています。

バッグは重宝したものの、袖を切った着物は華やかすぎてあまり着られませんでした。
けれどもその後、

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娘が10歳の時、着用しました。(衿を細めに着付け、肩揚げをして裄丈を調節しています)

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その5年後20歳で正月に着用しました。

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さらに5年後の先日、友人の結婚パーティで着用しました。(10月上旬着用)

電車を使って1時間以上かかる会場だったので、振袖はやめて、動きやすいこの着物にしました。

 

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帯は電車やタクシーに乗る時も楽なふくら雀に結びました。

また、帯や袖が引っかかったり汚れたりするのを防ぐために、紗の道行コートを着用しました。

コート姿は撮影しなかったので、数日前に取り合わせを見るためにトルソーに着せた写真を……

 

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きものの派手さが抑えられ、電車に乗っても目立たなかったはずです。

きものの袖が少し長くても、コートのたもとの中に収めることができれば、道行きも着用可能*です。

*コートの袖は、きものの袖丈と合っていなくても問題はありません。
コートの袖のほうが長いとおかしいですが、きものの袖が長い場合は折って入れれば大丈夫です。

この紗の道行コートに関しては、こちらで紹介しています。

③袖を切った振袖の良い点/残念な点

<良い点>

  • お気に入りの振袖を結婚後も着られる
  • たもとが短いので動きが楽になる
  • 移動する時、コートが着られる
    (中振袖以上はコートの袖丈が普通より長くないと袖の収納は難しいです。)
  • 柄によっては子供に着せられる
  • ちょっとしたパーティ向きで、気軽に着られる。
  • 帯をお太鼓結びにできる
    (振袖用の華やかな帯結びにしなくても、お太鼓でバランスが取れます)
  • 切った袖をバッグなどに再利用できることがある
    (思い出の生地をいつまでも手元に残せる方法です)

<残念な点>

  • 訪問着にはならないことが多い
    → 薄めの地色、総柄の模様ではないこと、柄が小さめであること、など、訪問着らしく見えるための要素が必要となり、それを満たすような振袖は、おとなしすぎてつまらない振袖ではないかと思います。
  • 袖を切ってしまうと準礼装ではなくなり、きものとしての格が下がる
    → きちんと着ていれば振袖でなくても大丈夫だと私は思うのですが、格の点では下がるので、少し気が引けることがあるかもしれません。
  • 袖を切ってもそれほど長くは着られない
    → 着る機会がないまま、あっという間に時が経ってしまい、華やかな元振袖は、すぐに派手だと感じてしまうかもしれません。

 

今日は振袖の袖について考えました。

振袖を着られる期間は短いものです。

そのまま残して次の人に着てもらうか、袖を切って着る期間を伸ばすのか……

振袖の地色や柄にもよりますが、何枚か振袖を持っていてそのうちの1枚をリメイクするのなら、いろいろに楽しめて良いと思います。

そうでなければ、そのまま残しておくほうが無難かもしれません。

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