今日は子供や若い女性の「だらりの帯」と、だらりの作り帯を取り上げます。
だらりの帯は振り下げ帯ともいい、舞妓さんの帯として有名です。
1.だらりの帯とは
①文庫結び
文庫結び系で、両羽をだらりと下げる結び方を「だらり結び」と言います。
「だらりの帯」というと京都の舞妓さんがすぐに浮かびますが、歌舞伎や舞踊のお姫様などの衣裳でも、だらりの帯は使われています。その場合は「振り帯」「振り下げ帯」とも言うようです。
②舞妓さんの帯
舞妓さんの帯は「丸帯」という表裏すべてに柄があるもので、重厚感あふれる豪華な帯です。(丸帯は、戦前までは一般女性の第一礼装用の格の高い帯でしたが、袋帯ができてからはあまり使われなくなりました)
舞妓さんの帯は長くて重いため、自分では結べません。「男衆(おとこし)さん」という着付けをする男性が担当しています。
「祇園小唄」は、春夏秋冬の京都を歌にしたもので、1~4番それぞれの歌詞の終わりに「祇園恋しや だらりの帯よ」というフレーズがあり、帯を指して舞の型が決まります。
舞妓さんのだらりの帯は、前幅もたっぷりしています。
③衣裳としての帯
歌舞伎や舞踊の衣装の振り下げ帯は、二部式になっています。
結び目+振り下げの部分は、出来上がったものを背中に差し込んでいます。
着付けが素早くでき
横から見たときの見栄えが良く
動いても崩れない
というのが理由ではないかと考えます。
△舞踊の振り下げ帯(「鷺娘」より)
△「藤娘」の振り下げ帯(七世尾上梅幸)『NHK日本の伝統芸能』日本放送出版 2001年発行より
△「京鹿子娘道成寺」の振り下げ帯(中村福助)前掲書より
2.絽ざし刺繍のだらり帯
以前「いろいろな作り帯」として取り上げたことがある、子ども用だらり帯(舞踊用)を改めてご紹介します。
以前の記事↓
①絽ざし刺繍の蝶
知人(故人)から譲り受けた帯です。絽ざし刺繍*が趣味だった知人は、娘のために舞台用の帯を手作りしたようです。
黒繻子の生地に絽ざし刺繍の蝶がアップリケされています。
蝶は形や大きさ、色など様々で、着用すると見えない部分にまで、20匹縫い付けられていました。
*絽ざし(ろざし)…専用の三本絽の絹織地を絹糸で刺し埋めてゆく日本刺繍。
完成品をアップリケのように着物などに縫い付けます。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
②寸法など
だらり(羽)部分
幅27cm、長さ282cm
このように二つ折りにして下げます。
結び目を作る布 26×11cm
下げた羽の中央をこれでくるみ、紐で3箇所結びます。
胴に巻く部分(黒繻子が掛かっている部分)の長さ 162cm、前幅 19cm
通常の帯の前幅は15~17cmですので、子ども用にしては幅広く作られています。
胴の両端、黒繻子が掛かっていない部分は、それぞれ長さ50cmあります。
帯芯をくるんでいる黒い布の延長で、結ぶために使われます。
3.着用例
①だらり帯着用例
娘が10歳のときに着せました。
やはり、だらりの後ろ姿が可愛らしいです。
以前、この帯を紹介したときに、読者の方から、着用方法に関しての質問がありました。
だらりの作り帯の着用方法については、あらためて取り上げる予定です。
②文庫用帯枕
着用の際は、このような文庫結び用枕を使用しました。
これらの作り帯も、この枕を生地でくるんで文庫を作っています。
胴部分を体に巻き付けたら、枕の足を背中に差し込むだけなので簡単に着付けられます。
文庫用帯枕は、本来は一本の帯で文庫結びをするときに使います。
これは娘が12歳頃に着せたものです。(作り帯では無く1本の帯で結んでいます。)
まだ大人の身長ではない中途半端な時期は、ふくら雀などのお太鼓系よりもポイントが上に来る文庫結びの方がバランスが良いようです。
③だらりを短くして
娘が十代半ばになると、子ども用だらりの帯では合わなくなったので…
このように重ねて折りたたんで
↓
↓
↓
↓
羽を作り、
文庫結びにしました。
このときは帯の重なりが厚すぎて、帯枕は使用できませんでした。
大人の小紋の着物でも、刺繍の蝶が可愛いので少女らしい感じが残りました。
4.袋帯を加工して
全通*の袋帯を使い、短めの大人用ミニだらりの帯を作っているお店もあります。
(全通の帯……帯の端から端まで全体に柄があるもの)
問い合わせたところ、日本舞踊や成人式の振り袖用に作って欲しいとの要望に答え、一つ一つ手作りで仕立てているそうです。帯枕は、お店オリジナルのものを使用しているとのことでした。
写真を見たところ、大袈裟ではないだらり帯でした。
二部式になっていれば、振り袖の着付けもらくにできるかもしれません。
また、自分で振り袖を着ることも可能ですね。