今日はミシン仕立ての八寸名古屋帯と紅葉の着物をご紹介します。
1.ミシン仕立ての帯
①松葉仕立ての名古屋帯
先日、譲られた帯のなかで、はっきりミシン仕立てとわかるものを発見しました。
締め跡、折り跡がないので、未使用の帯です。
お太鼓の裏側、背中にあたるところ(タレを折り返して縫った部分)に、ミシン目があります。
締めれば見えない部分ですが、そのミシン目が帯の表側(お太鼓上部)に見えてしまっています。
お太鼓の両端のかがりもミシンによるものと思われます。
はじめ、見ただけではわからなかったのですが、両端を触ると固くごわつくので違和感があり、ミシンだとわかりました。
松葉仕立ての帯ですが、手先のかがりもミシンです。
②現代の帯仕立て
現代はミシンの機能性が向上し、20年ほど前からほとんどの帯はミシンで縫われているそうです。(有限会社「ふじぜん」の着物ケア診断士・吉原ひとしさん談)
直線縫いがほとんどで、縫い目は着用すれば分かりにくいため、ミシンによる安価な仕立てが急速に浸透していったのだと思います。
ただし、今回取り上げた「八寸名古屋帯」は違いが分かる気がします。
手縫いなら見えないはずのかがり糸がお太鼓の両側に存在するからです。実際締めたらどうなるのか、少し不安です。
③手縫いの帯との比較
同じ八寸名古屋帯で、手縫いのものと比べてみました。
お太鼓のを折り返した部分です。
千鳥がけで縫われています。
お太鼓の両端は……
ほとんど縫い目がわかりません。
このように手縫いの場合は、よほど近くに寄って見ないと糸がわからないくらい細かく縫われています。
2.紅葉の着物に合わせる
①紫根絞りの訪問着
南部紫根染の絞りの着物に締めてみました。
盛岡 草紫堂の初代藤田謙氏の手による、アンティークに近い年代のものです。
この着物については以下の記事で取り上げています。
経年で紫の色も落ち着き、派手さはないので、気楽に装えるきものになっています。
軽めの名古屋帯でも違和感はありません。
離れた状態だとミシン仕立てということは気になりませんが、
このくらい近付くと、ミシンのかがりがわかります。
帯そのものは、扇に御所車という古典的な柄なので、源氏香と紅葉(竜田川文様)の着物には相性が良いようです。
②磁器絵付けの展示会に
友人の絵付けの展示会に行きました。
明治時代の洋館を使ったホテルなので、古めかしい紫根染の色も合うのではないかと思い、この着物を選びました。
パーティなどのお呼ばれではないので、豪華な帯より控えめな名古屋帯が合っているようです。
しっとりした気分で、磁器絵付けの繊細な美しさを堪能しました。
③帯による違い
合わせる帯によって着物の雰囲気も変わります。
唐織で華やかに
唐織は厚みがあるので、胴回りがふっくら華やかになります。
きものの紫も明るく感じます。
無地の帯でひかえめに
ベージュ無地の綴れ帯を合わせた能鑑賞の日の装いです。
大曲の能ですが、老女がシテなので、訪問着の華やかさを帯で抑えたつもりです。
この日のことはこちらの記事で取り上げています。
https://kimono-kitai.info/9320.html
3.きもののミシン仕立ては注意が必要
①きものは手縫い中心
帯のミシン仕立ては一般的になったようですが、きものの場合は事情が少し違います。
まだ手縫いが主流で、ミシン仕立てにするかどうかは、注文する際に選べることが多いようです。
また、ミシンで縫うのは直線部分だけです。
②きもののミシン仕立て 良い点と問題点
良い点
- 仕立て代が安い
- しっかり縫えるので、麻の長襦袢のように家庭で頻繁に洗濯するものには向いている
問題点
- 手縫いの場合、直線部分も柔らかで生地に負担を掛けない縫い方だが、ミシンだと少しつれたような、硬い状態になる
- ほどきにくく、跡が残る場合があるので、仕立て直しや染め直しができないことがある
- 薄い絹物の背縫いをミシンで縫うと、糸が強すぎてお尻部分が破れることがある
ミシン仕立ては、手縫いのように生地の状態をみながら加減して縫うことが難しいようです。
ですから着物を購入する際は、仕立ての方法にも注意したほうが良いと思います。