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初秋のきものと鎌倉芳太郎の帯

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今日は8月末から9月初めに着用したきものと帯をご紹介します。

1.8月末の紗の着物

8月の下旬には薄物でも白っぽいものは避けたくなります。

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明るい藍色の紗の小紋に麻の染帯を合わせました。長襦袢は白い麻を着ています。

 

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帯の柄は秋草です。

 

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帯締めは、帯の柄やきものの色と同じ青色にしました。色使いが少ないほうがすっきり涼しげに見えます。

 

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浴衣の娘と並ぶと浴衣のようにも見えます。

 

2.同じきものを9月に……

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8月と同じ紗の着物を9月6日に着用しました。
(日中の最高気温27.5℃)

8月と変えたところ

①長襦袢を水色の絽にしました

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水色にすることで完全に透けなくなるわけではありませんが、若干透け感はおさえられます。

 

②帯まわりを変えた

帯は8月と同じ素材の麻ですが、グリーン系にし、帯締めと帯揚げは暖色系を選びました。

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帯揚げは黄色の絽ちりめん、帯締めは柿色です。

このように透け感をおさえ、帯まわりの色を変えることで夏の装いとは違う雰囲気を出しました。

 

3.鎌倉芳太郎の麻の帯

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この帯は型絵染(かたえぞめ)作家、鎌倉芳太郎(かまくらよしたろう)氏の手になるものです。

①鎌倉芳太郎(1898年~1983年)について

香川県出身。東京美術学校図画師範科を卒業後、沖縄で美術教師になります。沖縄で暮らし、沖縄文化に興味を持った鎌倉氏は、大正から昭和にかけて沖縄の伝統芸術品などの調査・資料収集をし、文化の保護に尽力しました。

そして戦後、保管していた資料をもとに紅型(びんがた)*の研究を続けました。

*紅型(びんがた)…沖縄を代表する伝統的な染色技法で、「紅」は色の総称、「型」は文様という意味だそうです。

その資料と研究は、戦争で全てをなくしてしまった沖縄の紅型職人にとって大きな希望となりました。紅型の存続危機を救ったのが鎌倉氏であると言われています。

研究を続けるかたわら、還暦を迎える頃に自らも染織家になった鎌倉氏ですが、亡くなる10年前の1973年に重要無形文化財保持者(人間国宝)と認定されました。けれども、「自分は職人ではなく学者だから人間国宝なんかじゃない」と言っていたそうです。

以前、ご紹介した型絵染作家の芹沢銈介(7月4日の記事)と同じ時代に生きた人です。

②朧型(おぼろがた)の技法で染められた帯

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この帯は紅型の技法の一つである「朧型(おぼろがた)」で染められたものと思われます。

紅型は、布地の上に型紙(かたがみ)を置き、その上からさらに糊を置いて色を挿して染めます。通常は1枚の型紙を使用して染めますが、おぼろ型では2枚、3枚の型紙を使い複数回染めを重ねます。そうすることで細かい地紋と文様を表現できるのです。手間がかかり技術的にも難しいものですが、複雑で奥行きのある染めが出来上がります。

 

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帯の裏です。このような麻生地におぼろ型染めが施されています。

 

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蜂の巣のような亀甲の地紋に小花が浮いているような立体的な感じがします。

私たちが知っている華やかな紅型に比べると地味な印象ですが、よく見ると多くの色を使っています。そして全体的には柔らかで涼やかな印象を与えます。

 

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私が注目したのは中央の緑の花の部分。ここは地紋になる線も緑になっています。そして……

 

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全体を見たときに、その部分が大きい花となって透けたように見え、涼感を演出しているように感じるのです。

③この帯を着用した感想

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以前、母が締めている頃は「何だか地味で不思議な帯」と思って見ていましたが、このようにゆっくり眺め自分で着用してみると、作者がこの帯に関わった長い時間や真摯な思いが伝わるようで、温かい心持ちになりました。

 

4.紅型と鎌倉芳太郎氏関連の本を紹介

ぜひご紹介したい本が2冊あります。

①『琉球紅型』(青幻舎)

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青幻舎(2005)『琉球紅型』青幻舎

これは紅型が好きな人にはオススメの本です。

コンパクトな文庫本ですが、少しの解説以外はすべてカラー写真。昔の紅型衣裳、紅型や藍型*の多彩な裂(きれ)地など約200点が紹介されています。

*藍型(あいがた)…藍1色または藍の濃淡で文様を染め出した型染めのこと。

裂地のほとんどは鎌倉芳太郎氏が戦前に収集していたものです。パラパラとただ眺めているだけで楽しい本です。この本の中に紹介されている紅型は……

 

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(沖縄県立芸術大学蔵)
左は「白地紅型大模様水邊菖蒲桜文」
右は「白地紅型大模様籬牡丹尾長鳥文」
という作品名でした。

 

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(沖縄県立芸術大学蔵)これらは前述の「おぼろ型」の紅型です。
左は「葡萄色地紅朧型細模様彩点文」
右は「花色地紅朧型細模様梅文」
という作品名でした。

 

②与那原恵『首里城への坂道:鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像』(筑摩書房)

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与那原恵(2013)『首里城への坂道:鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像』筑摩書房

琉球文化の調査と史料収集を沖縄で16年にわたってやり続けた鎌倉芳太郎氏、そして彼を琉球文化へいざなった人々の姿と沖縄文化復興のドラマを描いた本です。

著者の与那原恵さんは1958年東京生まれ。沖縄出身の両親を十代で相次いで亡くした与那原さん。
彼女にはお父さまとの大切な思い出がありました。それは14歳だった1972年、沖縄の本土復帰の年にサントリー美術館で開催された「50年前の沖縄」展をお父さまと一緒に見に行ったことでした。(お母様が亡くなった翌年だったそうです)

その時に見た写真が大正時代に鎌倉芳太郎氏が撮影した首里城をはじめとする沖縄の文化財や町並みの写真だったのです。鎌倉氏に関しては「すごい写真を撮った人」という記憶しか残っていなかった与那原さんですが、17歳でお父様が亡くなった後、沖縄へ足しげく通うようになりました。

そのなかで再び鎌倉氏の存在を知り、その後何かに突き動かされるように彼が生涯を掛けた仕事を調べ、その足跡をたどって行きました。

実は、現在の首里城があるのは鎌倉氏の功績によるものが大きいということです。その辺りのドラマチックな記録も大変面白く描かれていました。

少し厚めの本ですが、多くの人に読んでほしい一冊です。(2014年河合隼雄学芸賞受賞)
長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。



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