前回に続き、絵皿文様・単衣の付下げを取り上げます。
前回の記事はこちら↓
4.赤絵皿に見える丸文
①左胸の文様
柄の中では華やかで大きい枝椿の文様です。
②後ろの裾の文様
単純化された花ですが、周縁部がお皿のようです。
③後ろ袖の文様
右の後ろ袖にある大きな文様です。
5.絵皿と比べてみる
家にあった やきものの本を取り出し、きものの丸文と、題材やイメージが似ているものを探してみました。
①上前の文様
柄の中で一番大きいメインの文様で、色絵の大皿のようです。鳥は色絵皿には良く見られる意匠です。
デザインは違いますが、鳥が描かれた絵皿は……
△有田焼「色絵藤鳥文捻輪花皿」1650-60年代(『日本のやきもの 有田・伊万里』文・大橋康二 写真・松尾宏也 淡交社 2002年より)
17世紀の古い絵皿です。
②前袖の文様
竹に鳥の絵。写真ではわかりませんが、緑色の部分にも模様があります。
△九谷焼「色絵竹に叭叭鳥(ハッカチョウ)図平鉢」(『太陽やきものシリーズ 伊万里・九谷』平凡社1976年より)
ハッカチョウはムクドリ科の黒い鳥です。江戸時代、花鳥図などの題材としてよく扱われたようです。
③下前裾の文様
緑色が使われていると九谷焼の皿のイメージが強いです。
△九谷焼「青手白山波濤文山水図平鉢」17世紀(『日本のやきもの 九谷』文・寺尾健一 写真・加藤賀津三 淡交社2003年より)
△九谷焼「色絵泊船図大鉢」(『太陽やきものシリーズ 伊万里・九谷』平凡社1976年より)
④後ろ袖の文様
シンプルな兎の柄です。
やきものでも兎はよく見かけます……
△「吹墨兎図皿」(『太陽やきものシリーズ 伊万里・九谷』平凡社1976年より)
初期の伊万里焼では兎の意匠が人気だったそうです。
△「染付兎網目文皿」1630-40年代(『日本のやきもの 有田・伊万里』文・大橋康二 写真・松尾宏也 淡交社 2002年より)
⑤後ろの裾の文様
白に藍色の濃淡は有田焼染付を思わせます。
△有田焼染付大皿(1610-30年代)(『日本のやきもの 有田・伊万里』文・大橋康二 写真・松尾宏也 淡交社 2002年より)
初期の有田焼です。
その他には次のような柄が描かれていました。
全部で16皿(?)ありました。
6.着用例
①黒地の絽塩瀬、名古屋帯で
通常はこの黒地の絽塩瀬との組み合わせです。(6月に着用)
祖母の帯ですが、単衣のシーズンに登場しないことが無いくらい重宝しています。(帯については以下の記事などで、たびたび取り上げています)
私は昭和コーデから抜け出せないので、薄い色のきものにはどうしても濃い色の帯を選んでしまいます。(薄い色どうしの着物と帯の取り合わせは、私には難しくてなかなか試せません。上品で良いとは思うのですが……)
②櫛(くし)織りの袋帯で
紬のきものですが、付下げになっているので、しゃれ袋帯を合わせるとよそゆき感が出ます。
この帯との組み合わせは、色合いから秋の着用が多いのですが、きものの文様からは季節があまり感じられません。
この櫛織*の帯は袋帯でも大変軽く締めやすいです。
*櫛織…機織(はたお)りの際、櫛を使って織られたもの。
(以下の記事参照)
裾の椿や牡丹も、円の中に描かれていると季節は関係ないような気がします。
<古い写真>
母(向かって右)はこの組み合わせで6月に着ていました。左の私は二十代はじめ頃。(京都にて)
二回にわたって丸文を取り上げました。
丸文は穏やかで女性らしい柄、ポップな柄、格調高い柄など、幅広い魅力があります。皆さんも丸文を見直してみてください。
お付き合いいただきありがとうございました。