きものや帯によく見られる丸い文様。今日は丸文と、絵皿文様の単衣を取り上げます。
1.丸文(円文)
①丸文とは
幾何学文様の一つで、円や丸の中に文様をおさめた意匠のことです。
②丸文の意味
丸や円は太陽を象徴する形であり、力の源とされます。
また、始点・終点がない円は、無限を意味するので縁起が良いとされます。幾何学文の基本なので、太古からの文様でもあります。
2.丸文の例
ここでは、完全な円だけでなく「丸く見える文様」も挙げてみます。
①丸文の帯
これは完全な円です。『きもの文様図鑑』では、<幾何学の文様>の「円」に分類されていました。金の立涌は織り、3つの丸文は刺繍とのことです。(『きもの文様図鑑』長崎巌監修、弓岡勝美編 平凡社2005年より)
月を思わせる意匠です。
②花丸文
ちりめんの生地に描いてもらったものです。(以下の記事参照)
「菊枝丸文」というタイトルが付けられた唐織の帯。
③水の玉
夏の絽の着物です。大小の水玉が涼しげに見えます。
取り合わせた帯の菊も丸文に見えます。
④丸に見える文様
葡萄唐草文の色留袖。唐花文(からはなもん)*のような丸い文様です。
*唐花文…中国から伝わる文様で唐風の花や蓮花、牡丹、理想の花などを合成してできた文様。(以下の記事参照)
更紗円文の単衣のきものです。
すべての円文が欠けていて、完全な丸になっていないところが面白味なのかもしれません。
⑤上代裂(じょうだいぎれ)写し
上代裂とは飛鳥・天平時代の裂(きれ)地で、法隆寺裂、正倉院裂などがその代表。円文や丸に見える文様が多くあり、それらの写しは現代でも親しまれています。
<帯>
円文の帯はきものに合わせやすく装いの格も上がるので、少しあらたまった場にも着用できる文様です。
<座布団>
他にもバッグやポーチなど、昭和時代はこのような上代裂写しの丸い文様が、身の回りにたくさん存在していたような気がします。
⑥能装束の丸文
能装束でも「丸尽し」、または「丸紋尽し」という文様があります。地色は黒や縹色(はなだいろ-薄い藍色)が多いようです。
気品と優しさを兼ね備えた文様で、能「葵上」などに使われます。
△葵上(シテ・野村四郎、『能を彩る文様の世界』野村四郎・北村哲郎共著 檜書店2013年より)
右側手前と奥の水色が「丸尽し文」。能装束をロープに掛けて虫干しが行われている様子です。
これらは東京都中野区にある武田修能館での「能装束虫干し見学」で撮影したものです。(以下の記事参照)
3.絵皿文のきもの
今まで丸文を見てきましたが、次に紹介するのは、同じ丸文でも絵皿のように見える文様です。
紬にいろいろな丸文が描かれています。単衣の付下げです。
胸元や袖…
裾に丸い文様が描かれています。
そのなかで、私が絵皿のように思えたのは以下の文様です。
このきものには全部で16の丸文が描かれていましたが、次回詳しくご紹介したいと思います。