昨年に続き(2017.1.14)、若い頃のきものをリメイクした例をご紹介します。
1.リメイクしやすい無地のきもの
ここで言うリメイクとは染め直しのことです。柄や刺繍のない色無地のきものは、色を抜き、違う色に染め直すことで生まれ変わります。
小紋など柄がある場合は上から一色かけて地味にすることは出来ますが、柄にも同じ色がかかってしまいます。これは「目引き染め」といいます。詳しくは2016.9.17の記事を御覧ください。
柄を活かして地色だけ染めるのは付下げや色留袖の場合です。柄をすべて糊でふせ、地色のみを刷毛で染めていきます。大変手間がかかる作業だそうです。私は経験がありません。
このように色無地は染め直しが容易なため、昔は3回くらい染め変えることを想定して、嫁入り支度などは上質の生地で誂えていたようです。
2.色無地から小紋へ
①ピンクの御召
若い頃着ていた御召(おめし)*の色無地です。紋はありません。着心地が良いだけでなく大抵の帯や羽織が合うので愛用していました。
*御召…は御召縮緬(おめしちりめん)ともいい、先染めの糸を用いた平織りの織物で縮緬の一種です。徳川十一代将軍の徳川家斉が好んだところから「御召」の名があるそうです。
(御召に関しては2017.2.26,3.5の記事でも取り上げています。)
シャリ感のある着心地が忘れられず、もう一度着てみたくなりました。そこで、色を変えて模様を描いてもらい、小紋のきものに仕立て直すことにしました。
②作業の順序
作業はこのような手順で行われました。
- きものを解く
- 表地と八掛(裏地の裾の方の部分)の色を抜く
- 染める
- 模様を描く
- 仕立てる
本来きものを誂える場合は白生地に下絵を描いて彩色してから伏せ糊で防染して地色を染めます。
今回は染めた生地の上に直接絵を描いてもらうのです。
前回、希望通りに絵を描いてくれた模様師さんに今回もお願いしました。
△前回描いてもらったもの(2017.1.14の記事参照)
3.好きな模様
悉皆屋さんに「どんな文様にしますか?」と言われ、初めはイメージが浮かばなかったのですが、
①下絵なしで描いてもらうので、単純でわかりやすい古典文様を
②前回は花(花丸文様)だったので今回は葉の文様を
と思い、二葉葵に決めました。
文様は『きもの文様図鑑』(長崎巌監修/弓岡勝美編 平凡社)の二葉葵を参考にしてもらいました。
「植物としての葵の自然の生態である、茎から同時に頭をもたげる二枚の若葉を意匠化したもの」と説明されています。
4.出来上がるまで
①色を決めてきものを預ける
元のきものを悉皆屋さんに預けました。
色見本帳を見せてもらい、色はブルー系かグリーン系にしたいと希望を伝え、それぞれ2種ずつ候補の色を決めました。
しかし、生地によって染まり方が変わるとのこと。今回は袖丈を短くして仕立て直すので、まず、切った余り布を染めてもらうことにしました。
②色見本を作ってもらう
袖を切った余り布で染めた色見本が出来ました。
色の濃さも見ることができます。
グリーン系でお願いすることにしました。
③染め上がる
染め上がりました。裾回しの色も気に入りました。
これに模様を描いてもらいます。
④柄付け確認
模様が描き終わりました。
柄のある部分だけ仮絵羽のように縫い合わせてあります。
⑤仕上げ
仮絵羽をほどき本仕立てをして出来上がり。
「急がないのでゆっくり作って下さい」とお願いしたこともあり、出来上がりまで4ヶ月かかりました。
5.着てみる
東京の桜が満開になった日、着てみました。
続きは次回に…