今日は先週の続きです。染め直して新しくなったきものを早速着てみました。
1.多色使いの織帯で
①多色で深みを
きものは、ややパステルカラー(白が混ざった中間色)調の緑色。帯は深みや渋みのある色がいいかも…と考えてこれを合わせました。
個性的な帯ですが、柄の少ない小紋には意外に合うようです。
一見パッチワークのような織りです。
②関西巻きで
帯は前に緑色の織が多く出るように、ふだんとは逆の関西巻き(時計回りに帯を巻くこと)で締めました。
いつもは関東巻で締めるので赤が目立ち、よりカラフルです。
巻き方で前に出る柄の違う帯は利用範囲が広がり楽しめます。多くは<地味>と<派手>な柄になっていて、長く着用するための工夫のようです。
いつもとは反対の巻き方でも対応できるように練習しておくとよいですね。
2.黒地の帯で
この日は東京で桜が満開になりました。
家の近くでも満開です。
①元は引き抜き帯
降り注ぐ陽の光と桜の薄いピンク色の中、黒の塩瀬羽二重の帯を合わせてみました。
戦前の引き抜き帯を作り直したものです。(2015.4.19と2015.5.2の記事参照)
桜の刺繍が施されているので、毎年春になると締めたくなる大切な帯です。
新しく生まれ変わったきものと合わせると、昔の帯でもあまり古臭くなりません。この帯の持ち主だった明治生まれの女性(母のお稽古の先生)の顔も思い出し、一緒にお花見をしている気持ちになりました。
②ピンクの帯締
花の季節には、どこかにピンク色を取り入れたくなるものです。簡単なのは帯締ですね。
帯揚と根付紐は緑にしました。
3.桜の季節に合う色は?
①季節の先取り
桜は日本の象徴として一年中身につけることができる柄と言われていますが、実際に桜が咲いてしまうとその美しさに圧倒されて、きものの桜はかすんでしまいます。
だから「開花したら桜のきものは着ないわ」という人も多く、桜柄だけでなく、ピンク系のきものも着用するのをためらってしまいます。
桜の開花前、きものには桜を待つ心を託し、実際に咲いたらこちらは遠慮する、という季節先取りの美学は、奥ゆかしい日本ならではの考えなのでしょう。
ただし若い女性は例外だと思いませんか?
たとえこの季節に桜の振袖を着ていても、彼女たちは本物の桜よりも輝いていますから。まさに日本を身にまとっている感じですね。
△観世水*に桜
(『きもの文様図鑑』(長崎巌監修/弓岡勝美編 平凡社)より
*観世水…流水文の一種で渦を巻いた水の模様。能の観世大夫が定紋としたことに由来しています。
②緑色
外は満開の桜。
そんな日に着てみたくなったのが今回のグリーンのきものです。
数日後には目にすることになる葉桜の緑や、この先のまぶしい新緑を想像させます。
何よりも桜の下で落ち着く色でもあります。
③水色や藍色
他にはグレーや水色、藍色などをこの時期私は好んで用いています。
△ グレーに藍色の茶屋辻文様の小紋、黒地の帯、小物はピンクと水色で
藍染結城紬を着用しています。
(きものについては2016.4.9の記事で取り上げています)
4.葵文様について
①葵の文様
フタバアオイは春から夏にかけての植物ですが、葵の文様は吉祥文様なので季節はないようです。
「あおい」は「仰(あおぐ)日(ひ)」の意味で、葉が常に太陽を向く向日性があることから、おめでたい文様とされています。
また、二葉葵は京都賀茂神社の社紋、三葉葵は徳川家の紋所(もんどころ)として有名です。
△フタバアオイ(Wikipedia.orgより)
②小紋の二葉葵
地色の緑を生かしているので、輪郭や色も控えめに仕上がっています。
地色が私には少し華やかなので、くっきりした彩色ではないところが良かったと思います。
友人は「御召ちりめんの凹凸の上に描かれているので、ぼんやりというより立体的に感じるわ」と言ってくれました。
5.四月以降の桜柄
3月にソメイヨシノは満開になっても、まだまだ4月は桜の季節。きものは控えても小物は出番が続きます。
△ 左からフェイラーの桜柄タオルハンカチ、ちりめん小風呂敷、レース付きハンカチ
ハンカチは一年中、縮緬風呂敷は夏以外いつでも使えます。
桜模様の紙子(かみこ)バッグは質感が涼しげなので、夏にも重宝しています。通年使用できる桜模様です。