8月も終り、夏物ともしばしのお別れ。
今日はそんな日に身に付けた「作家もの」の帯と帯留めの紹介です。
「作家もの」とは、有名な職人や製作者の銘が入ったものを言い、素晴らしい物が多い反面、今では非常に高価で、私は欲しくても手が出せません。
今回は、亡くなった母が遺した、「作家もの」の帯と帯留めを身につけて出かけたときのコーディネートをご紹介します。
きものが若い方にも人気が出て、若手の作家が多く育ち、もう少し安くなってくれれば良いのですが……。
1.羅織の帯(喜多川平朗・作)
帯は喜多川平朗(きたがわへいろう)という染織家(1898-1988)の作品。
夏限定の羅織りの帯です。軽いのにとてもハリがあります。
キュッとしっかり締まりゆるんで来ないので締め心地抜群。
母がお気に入りだったこの帯は無地で合わせやすいので私もよく使っています。
そしてその度に、こんな締めやすい帯を生み出した喜多川氏に対して尊敬の念が湧きます。
2.白檀の帯留め(桜井裕一・作)
帯留めは桜井裕一という彫刻家(1914~1981)の作品。
白檀で良い香りがします。
国立劇場にある「鏡獅子」の彫刻で有名な平櫛田中の弟子だったそうで、
大きい彫刻作品も多いようです。
これを手にする度に「こんな小さな帯留めにどんな思いを込めたのかしら……」と想像を巡らしてしまいます。
昔の私には、この「裸の女性の不思議な帯留め」を、母がなぜそんなに気に入っているのかわかりませんでした。
今見ると、丸い形の中にふくよかで美しい女性と、命や豊かさを象徴する葡萄がバランスよくおさまり素敵な作品なのだな……と実感できます。
母も優しさや安心感を抱かせてくれるこの帯留めの魅力を、感じていたのでしょうね。
3.草紫堂、紫根染め絽の絞りの着物と
きものは紫根染め絽の絞り。
盛岡にある紫根染と茜染専門店「草紫堂」のずいぶん古いものです。
紫根(シコン)は生薬としても有名ですね。
そのせいか、又は肌触りの柔らかさ(経年の為?)のせいか、このきものを着た時はいつもしっとり落ち着いた気分になるのが不思議です。
雨上がりだった為、草履はコルク台のものにしました。
親しい友人と能を鑑賞でき、楽しい1日でした。