前回に続き、今日は「引き抜き帯の結び方」を実際の帯で説明します。
前結び用の帯板「くるっと帯芯」を使って好みのお太鼓柄を出し、完成したらくるっと後ろに回して出来上がりです。
1.トルソーに着付ける前に
①引き抜き帯の着用シーンを決める
明治生まれの女性の楽しみはおそらく芝居見物だと思います。
ですから、この引き抜き帯を締めてお芝居を観に行く、という設定にしました。
②着物はどんなものにするか
細かい柄のきもの+黒地の帯だと不祝儀の装いに見えがちなので、遠くからでも模樣が分かるような小紋を合わせることにしました。
グレーの地に大きめの茶屋辻(ちゃやつじ)模樣の小紋を選びました。
③帯の柄はどれを出すか
この引き抜き帯は、お太鼓の柄が3通りあります。
この中で一番華やかなa柄を選びました。
2.帯板をつけてから帯を巻く
①伊達締めはしっかりめに
最後に帯板を回すので、伊達締めは解けないように結んで、端は中に収めておきます。
②帯板を付ける
私は、以前購入した「くるっと帯芯」を使います。
こちらで紹介しています。
↓
くるっと帯芯をつけます。
トルソーではうまくいきませんが、実際に着用するときは帯板の下線はきっちりと締め、上はゆったりと止めます。
前結び用の帯板は他にもあります。
③手先の長さを決める
手先の長さを決めて、中心をクリップで止めます。(手先の長さはクリップ位置からだいたい60cm前後)
前に柄があるタイプの帯なので、初めて着用するときは柄が中心に出るように確認しながら手先の長さを決めます。
④手先を肩にかけ一巻きする
手先を肩にかけます。
この場合は右肩ですが、前の柄によっては左肩にかけて反対に巻く場合もあります。(前結びは左右どちらに巻く場合でも、やりにくいことはないので大丈夫です)
ひと巻きします。
手前に見える菊の柄が真後ろにくることになります。
⑤二巻きする
二巻きしたら、後ろの一巻き目の帯下を持って引き締めます。
後ろはこの様になっています。
前の柄は中央でも、真ん中より少し左右に寄っていてもよいです。
3.帯を結ぶ
①クリップの位置を変える
中心のクリップをはずして、引き締めた帯がゆるまないように右脇下に止めます。
これで手を離しても帯はゆるみません。
②手先の準備をする
上げていた手先をおろします。
手先を左に寄せます。
この時「わ」は外側です。
手先を「わ」が内側になるように裏返します。
手先を内側に向かって半分に折ります。
再び「わ」が外側になります。
この作業は、手先の幅を狭くして、長い帯を引き抜きやすく、また結びやすくするためです。
この部分については、「お着楽舎」さんの動画を参考にさせていただきました。
③タレを引き抜く
タレ(帯の長い方)を手先の上に重ねます。
くぐらせたら上に引き出します。
④一度引き締める
結び目になる部分を一度引き締めます。
4.お太鼓を作る
①帯を引き上げる
二枚重なっているタレのうち、自分側のほうを引き上げて行きます。
この時にタレの出したい方の面が表側になるようにします。
②タレを決める
お太鼓のタレの長さを決めます。
通常のお太鼓より、タレをやや長めにするとバランスがよいです。
③しっかり引き締める
もう一度キュッと帯を引き締めます。
締めた状態で手先を反対方向へ引きます。
手先を引っ張りながらクリップで胴部分に止めます。
これで結んだ状態がキープ出来ます。
④お太鼓の山を決める
タレをおろし、二枚の帯を整えます。
帯枕に帯揚げをセットしたものを用意します。
二枚の重なりを揃えながら、帯山を決めて帯枕を入れます。
⑤帯枕と帯揚げ
帯枕と帯揚げを当て、後ろで結びます。
⑥仮紐でお太鼓を作る
仮紐を使う場合は、お太鼓の内側に紐を当て、形を作ります。(慣れれば紐を使わなくても出来ます)
紐は後ろで結びます。(横でも良い)
⑦手先を入れる
手先を止めていたクリップをはずし、手先をお太鼓の中に入れます。
⑧帯締め
帯締めを通して後ろで結んでおきます。
5.仕上げ
①仮紐を取る
背中側上から 帯揚げ・帯枕の紐・帯締め・お太鼓の仮紐
となっています。
仮紐を取ります。
②お太鼓を回す
お太鼓を「くるっと帯芯」ごと時計回りに回します。
③帯枕の紐→帯締め→帯揚げ
帯枕の紐を結び直し
帯締めを結び直し
帯揚げを飾ります。
出来上がり!