浴衣には可愛い柄、美しい柄、涼しげな柄など様々ありますが、今日はお祭りの粋な柄、「吉原つなぎ」の浴衣をご紹介します。
1.お祭り浴衣
①揃いの浴衣の柄
これは約30年前、町会であつらえたお揃いのお祭り用浴衣です。
紺地に江戸情緒あふれる大きな模様が染められています。
これらの文様は「吉原(よしわら)つなぎ」・「三重菱(みえびし)」・「束ね熨斗(たばねのし)」というものです。
②吉原つなぎとは
中央の鎖(くさり)を模した文様のことです。
もとは江戸の吉原遊郭に入るとなかなか抜けられないということに由来する模様と言われていますが、鎖の連なるさまが、人や想いをつなげる縁起の良い柄として流行し、江戸の代表的な模様となったようです。
現代でも、男性の浴衣やお祭りの半纏(はんてん)や法被(はっぴ)の柄でよく目にする模様です。
この浴衣のように鎖が二重になっているものは「子持ち吉原」と呼ばれています。絆が世代を越えてつながるという解釈もできます。
△歌舞伎「桜姫東文章(あずまぶんしょう)」の桜姫(坂東玉三郎)(『演劇界』昭和53年10月号より)
歌舞伎衣裳としても使われます。
③三重菱(みえびし)とは
菱形を三重に重ねた文様です。
菱文は縄文時代から土器に刻まれていて、自然発生的に生じた幾何学文様です。その形が菱の実に似ていることから名付けられたといわれます。
平安時代に装束の文様としてバリエーション豊かな菱文が展開され、現代でも人気の文様です。格調高い袋帯などでもよく見られます。
△能装束の菱文様(野村四郎、 北村哲郎(1997)『能を彩る文様の世界』観世流大成版、檜書店より)
紫地に「業平菱(なりひらびし)」文の装束を着ているのは、能「井筒」の後シテで、在原業平(ありわらのなりひら)の恋人だったと名乗る女性の亡霊です。
④束ね熨斗(のし)とは
のしを束ねた文様ですが、のし「熨斗」とは「のしあわび」、干した鮑のことです。
鮑の肉を薄く長くはいで、筋状に引き伸ばし乾したもの。儀式の酒肴に用い、のちに祝事の進物、飾りとし、熨斗鮑と呼ばれた。
現代でも祝儀袋や掛け紙で目にする熨斗ですが、着物の柄になるととても豪華になります。
△江戸時代の振り袖(18世紀)(『特別展 きもの』(2020年)より)
こんな華麗な文様が元はアワビ、というのが面白いですね。
2.着用してみる
①半衿なし
先日、久しぶりにお祭り浴衣に袖を通しました。
お祭りに出掛けるので半衿はナシ。本来の浴衣の着方です。
(私はあしべ織り汗取り肌着※の上にワンピースタイプの肌襦袢を着ています。)
※「あしべ織り汗取り肌着」についてはこちらで取り上げています。
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②貝の口に帯締め
博多織りの半幅帯をシンプルな貝の口に結びました。
貝の口は帯締めで押さえたほうが安定します。
この締め方だと人混みに揉まれても帯が当たって崩れることがないので安心です。
貝の口の結び方はこちらで取り上げています。
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③白足袋に下駄
私は素足が苦手なので、浴衣でも足袋を履きます。
- 下駄に足の跡が付かない(塗下駄でも白木下駄でも)
- 下駄の鼻緒擦れが起きにくい
- 蚊に刺されない
- 人に踏まれてもなんとか我慢できる
などの利点があります。
3.一歳の孫たちも一緒に
①吉原つなぎにヨットの柄
1歳10ヶ月の孫も「吉原つなぎ」の浴衣です。
「吉原つなぎ」になぜかヨットの柄です。
鎖の文様ということで、ヨットのアンカー(いかり)に付いている鎖に見立てているのかもしれません。
②ツーピース浴衣
1歳3ヶ月の孫(女の子)も「ツーピース浴衣」*を着てご機嫌です。
「ツーピース浴衣」はこちらで紹介しました。
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家族で4年ぶりの盆踊りと縁日を楽しむことができました。
この夏は毎週どこかでお祭りやイベントが開催されているようです。
昔ながらの文様の名前や意味に注目しながら浴衣を着てみるのも面白いのではないでしょうか?