今日は旧岩崎邸の鑑賞ポイントのひとつである「復元された金唐革紙の壁紙」を中心に取り上げます。
1.旧岩崎邸の金唐革紙
①金唐革紙とは
もともとヨーロッパで壁の内装に用いられた金唐革の技法を日本の和紙で再現したものです。
金属箔を貼った手すき和紙に、文様を彫った版木棒を重ね凹凸をつけ、彩色した皮に見える豪華な壁紙です。
②金唐革紙の壁紙
2002年に「金唐紙*研究所」上田尚(たかし)代表のもと、後藤仁氏が中心となり製作されました。
*金唐紙(きんからかみ)…金唐革紙の別名で、研究所によって新しく考えられた商品名だそうです。研究所製品にのみ用いられます。
旧岩崎邸洋館2階客室の金唐革紙の壁です。
このように触ることができる金唐革紙も用意されています。
続いて別の部屋へ。背景が輝いていますね。
このような柄の金唐革紙です。
立体的で迫力があります。
③衝立(ついたて)
花唐草模様の衝立。これは鹿鳴館で使われていたものの復元だそうです。
シックな色合いで、きものや帯の柄のようにも見えます。
④展示作品
2階客室には金唐革紙の作品も展示されていました。
この3点は同じデザインですが、彩色によってずいぶん雰囲気が変わっています。
「狩人」というタイトルで、エンゼルの狩猟風景を描いた図柄だそうです。
⑤版木ロール
金唐革紙の製造に使われます。これに湿した和紙をのせ、刷毛で叩きつけることで、紙に凹凸の模様がつきます。
円筒型になっていることで、連続模様がつけられます。
⑥おみやげ
旧岩崎邸の復元工事で用いられた本物の「金唐革紙」のしおりが売店で売られていたので、購入しました。
裏側を見ると、和紙で出来ていることが分かります。
2.金唐革とは
では、金唐革紙の本家である、金唐革とはどのようなものでしょうか。
私は子供の頃、「キンカラカワ」という言葉をしばしば聞いた記憶がありますが、「派手な革の財布?」というイメージだけで、どんな字を書くのかすら知りませんでした。
誰かが使っていたのか、話題に出ただけなのか、それも忘れてしまいましたが、私にとってキンカラカワは今でも懐かい響きです。
①金唐革の発祥と伝来
15世紀のルネッサンス時代のイタリアで生まれた皮革工芸です。
革に金属箔を貼り、文様をプレスして、黄色のワニスを塗ります。そしてさらに彩色して仕上げ、壁掛けや部屋の壁全体に貼り込む革壁として使われていました。
日本には17世紀(江戸時代)にオランダとの貿易で伝わりました。革壁を使わない日本では、裁断された金唐革で煙草入れなどの小物や、刀の柄や鞘などが作られ流行しました。
金箔を張った外来の革「唐革」という意味で「金唐革」と名付けられたようです。
②日本の作家
昭和初期から平成にかけて、親子二代にわたり金唐革の製作を手掛けた作家がいます。福島義郎氏(1899~1977)と福島粂子氏(1927~)です。
二人は江戸の通人たちの憧れだった金唐革を精緻に再現したといわれています。
戦争中、革が軍事用に使われるため入手困難になり、職人が激減した中、父の義郎氏は娘の粂子さんに直接技術を伝えたのだそうです。
③作品紹介
以上は福島義郎・粂子作品集『金唐革』(株式会社求龍堂)より引用
△福島粂子・作 「葡萄柄ミニバッグ」(7~8年前の作品で、筆者所有)
3.唐草模様のきもの
旧岩崎邸見学にあたり、着てみたくなったのがこの着物です。母は「草木染・更紗のきもの」と言っていました。
唐草模様の型染めのあと、金で手差しをしたものと思われます。
この金色が唐草模様を引き立たせています。
帯も大きな唐草模様です。これは以前ご紹介しましたが、ヤフーオークションで購入したものです。(2014年9月27日の記事)
帯締めは南部茜絞りです。陶玉ビーズの帯飾りをしてみました。
娘と訪れた旧岩崎邸。次回は二人で きものを着て来たいと思いました。
4.お知らせ・汐留で金唐革紙が見られます
東京都港区東新橋・モメント汐留にて「金唐革紙展」開催中です。
10点以上の作品が展示され、間近に見ることができます。
2016年5月13日からは展示作品を入れ替えて7月30日まで開催されるそうです。
(入場無料)