先日、老松柄のきものを着ました。
久しぶりの着用で、長年ふつうの小紋だと思っていたものが絵羽模様であることに気付きました。
1.老松の柄
① 老松とは
その名の通り長い年月を経た樹齢の高いマツのことですが、その生命力から末永い繁栄を願う象徴となり、おめでたいものとして日本人に愛されてきました。
また、能や長唄、常磐津などの楽曲としても有名です。
② 古い写真から
<正月に>
「老松のきもの」と呼んでいたこのきものは、昭和40年代前半に母が着ていたものでした。
昭和45年の正月。40歳頃の母と私。鮮やかな緑のきものに白い帯という母の装いは美しかったという記憶があります。
<日舞で>
高校卒業後の初めての同窓会で私は日舞を頼まれたため、母のきものを借りて、長唄「老松」を踊りました。
6月の会のため、袷(あわせ)だった「老松のきもの」は単衣にして、袖丈も長めに直してもらいました。(19歳)
その当時母はこのきものを着なくなっていました。人目を引く緑色は、自分にはもう派手だと思ったのでしょう。ですから、踊りの衣裳として活用できたことに満足している様子でした。
それから時が経ち、老松のきものは出番を失い、しまわれたままになっていました。
2.きものをよく見る
ある日、虫干しをかねて老松のきものを出してみました。小紋だと思っていたのですが……。
絵羽模様になっていました。
いつもお願いしている呉服屋さんに見せたところ「これは訪問着ですよ!」と言いました。
けれども袖付けや衿など、よく見ると縫い目をまたいで模様がつながっていないところもあり、やや中途半端な感じです。
「絵羽付下げ」?それとも「絵羽付け小紋」なのでしょうか。
そのあたりの定義がよくわかりませんが、いずれにしても、松と青海波という吉祥文様であることも手伝って、小紋よりもあらたまった場面に着用できるきものなのだと思いました。
昭和時代のユニークなこのきもの、眺めているうちにまた着てみたくなりました。
3.着用
① 派手で気になる着物は歌舞伎鑑賞のときに
私は年齢的にちょっと気後れする派手なきものは歌舞伎鑑賞の時に着ています。
舞台も客席も華やかで、人々の心もはずんでいる空間には、どんなきものでも上手く溶け込むからです。また、自分も気分が高揚しているので、恥ずかしさも感じずに楽しく着用できます。
実際は写真で見るより色と柄の印象が強いです。
② 帯
白の絽綴れを締めました。
もとは芯の入った袋帯でしたが、重いので、締めた時に隠れる部分の芯をはずし、二部式の作り帯にしてあります。(2016年8月28日の記事「夏帯を軽くする」参照)
③ 統一感のある組み合わせ
いつもなら、小物の一つは色の系統を変えて目立たせることが多いのですが、今回はきものから色を拾った取り合わせにしました。
目立つ総柄の場合はこのような大人しい組み合わせにすると安心して着ていられる気がします。
バッグはアイボリーのホースヘアに。
草履もアイボリーにしました。
④ 国立劇場第91回歌舞伎鑑賞教室
この日(6月11日)は毎年楽しみにしている「歌舞伎鑑賞教室」でした。丁寧でわかりやすい解説「歌舞伎のみかた」が大好評。今回の『歌舞伎十八番の内 毛抜』の解説は中村隼人さんです。
特別に撮影OKタイムがもうけられました。「歌舞伎みたよ」とSNSでどんどん発信して下さい!とのことでした。
国立劇場で歌舞伎を見るようになって45年近くになりますが、少しの間とは言え写真が撮れる日が来ようとは……。友人と共に感激してしまいました♪
同級生三人で鑑賞しました。2時間という短い公演の後は毎回ランチとお喋りを楽しむことにしています。
4.麻の長襦袢の手入れ
当日は以前ネットで購入しご紹介した(2017年5月28日)、本麻長襦袢を着用しました。
寸法は直して着ましたが、涼しくて快適でした。
① 寄せられた質問
先日、ブログ読者の方から、「麻の長襦袢を愛用しているが、だんだん袖丈が縮まってきてしまった。」というコメントをいただきました。
そこで、Amazonでお店を開いている「きもの通販さくら」(私はここで購入しました)に電話で話を聞きました。
② 手洗いがベスト
「本麻はどうしても少しはちぢみます。ネットに入れて洗濯機で洗う、という人が多いと思いますが、本当は手洗いしていただきたのです。やさしく手洗いすればちぢみ方は違います。」
とのことでした。
確かにわたしも長年着ている麻の長襦袢がありますが、手洗いをしてきたせいか、寸法の変化はありません。ほんの少しだけつけ置きし、軽く押し洗いするだけです。
③ ぬれ干し
洗ったら、濡れた状態のまま干す「ぬれ干し」が一番良いようです。けれども難しい場合は脱水を極力短くすることです。私は洗濯機の高速回転が始まって10~15秒くらいで止めています。
あとは畳んで手でパンパンたたいてから干しています。
きもの通販さくらの方は、
「半乾きの状態でアイロンをかけて下さい。」
「糊を付けるとパリッとした風合いになりますよ。」
ともおっしゃっていました。
このように手入れをすれば、ちぢみ方も少しでおさまるようです。
④ 着用後は霧吹きを
私は夏にきものを着る場合、きものを汗で汚さないために以下のものを着用しています。
△ あしべおり肌着
△ スリップ式肌襦袢
△ ヘチマの補正パッド<ウエスト・フロント用>+<ヒップ用>
これらの上に長襦袢を着ています。(2015年8月8日,2017年1月29日の記事参照)
これだけでかなり汗対策になっており、「麻の襦袢まで汗でびっしょり」ということはなく、毎回長襦袢を洗うことはありません。
その代わり着用後は必ず霧吹きでまんべんなく水をかけて干しておきます。
着用後、シワになった麻の長襦袢
霧を吹きます
シワが取れてアイロンをあてなくても着られるようになりました。また、霧吹きをすることで、消臭効果もあるように感じています。
「霧吹きで水を掛けてやると麻は喜ぶのよ」と子供の頃に母がよく言っていたのを思い出します。